表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/53

第17話 ナイト登場

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

「片桐くん!」


 ぶわりとスミレの目に涙が浮かぶ。

 そんなスミレをちらりと見下ろした片桐は、厳しい顔を侵入者に向ける。


「おお、怖い怖い。ナイトの登場ですか。片桐燿くん、でしたか」


 やはり相手は、こちらの情報は調べ済みらしい。

 片桐は油断なく、スミレを抱えたまま、ソファを避け、部屋の奥の隅に下がる。

 少女はスマホで存分に記録を取ったのか、今度は木の実を回収しているらしい。こちらのやり取りには無関心だ。

「片桐くん、スミレさんを渡してください。何、危害を加える事はしません。ただここより静かなところで、じっくり話がしたいだけです」

「断る!」

「困りましたね。貴方には用はないのですよ。大人しく彼女を渡さないと貴方が怪我をしますよ」

「断ると言っている!」

「しょうがないですね。トール、いつまで寝ているんです。出番ですよ」

「イテテ。いきなりけりを入れがったぜ。あいつ」


 男の声に答えて、少年がむっくりと起き上がった。

 背中をしきりに気にしている。


「全く。油断してるからですよ」

「へいへい。んで、どうするって?」

「2人を引き離してください」

「はいよ。じゃあ、兄ちゃん。そのお姫さんをしっかり守りなよっ!」


 その掛け声とともに、少年は大きく手を振り上げた。

 と、同時に、二人に衝撃が来た。


「きゃあ!!」

「っ!」


 片桐とスミレの身体が、壁に叩きつけられる

 その反動で、片桐の腕からスミレがこぼれ出る。

 片桐が咄嗟にかばってくれたおかげで、スミレにはほとんど被害はない。


「おら! もう一丁!」


 離れた片桐に2度目の衝撃が襲う。それはかなりなものであったようで、片桐の身体が床に崩れ落ちた。


「ぐぅ!」

「片桐くん!」


 駆け寄ろうとしたスミレの腕を男が掴む。


「離して!」


 片桐も立ち上がろうとするが、その背中を少年が踏みつける。


「おっと。そのまま動くなよ。これ以上すると。骨が折れるぜ」


 軽く足をのせているだけのようなのに、片桐は動けないようだ。


「トール。ばか」

「て!」

「もう少しで研究材料が吹き飛ぶところだった。状況を考えて動け」


 いつの間に動いたのか、キロと呼ばれた少女は不機嫌そうに、ぽかりと少年の頭を叩いた。

 それから男に向き直り、報告する。


「終わりました」

「ああ、ご苦労だったね。さ、では行きますか。思った以上によい収穫がありましたし。わざわざ出向いた甲斐がありましたね。トール、リミットをつけて、彼を拘束しておいてね」

「わっかりました! じゃあ、片桐くん! 悪いがお姫さんを連れてくよ! 帰って来れるかは、姫さん次第ってね!」

 

 少年が足を離しても、片桐はぴくりとも動かない。いや、動けないのだろう。

身体に力が入っているのがわかるのだから。


(いったい彼は何をしたの?!)


 スミレの頭に疑問ばかりが、浮かぶ。


 ぎしりと片桐が若い男を睨む。


「おおこわ」


 少年は茶化すように両手を上げると、男の後を追う。


「では片桐くん、御機嫌よう。スミレさんとは当分会えないかもしれないけど、悪いようにはしないからね」

「片桐くん!」


 スミレは身体をひねり、すがるように動けぬ片桐を見つめる。

 勝手な願いと知りつつも、願う。

 助けて、助けて片桐くん!

 片桐とスミレ。二人の瞳が互いを求める。

 

「スミレ!」

「ざんねーん! あんたのナイトは役立たずさ。もう捨てちゃいなよ。俺が守ってやってもいいぜ」

「ふざけないでちょうだい! 貴方なんかいらないわ! 私は彼に傍にいて欲しいのよ!」


 そうスミレが叫んだ瞬間。

 弾けるような軽い音が響いた。

 それとともに。ゆらりと起き上がる片桐。


「放せ」


 暗い炎を滲ませた瞳で、スミレを掴んだ男を見つめる。


「放せ!」


 片桐は片手を床に、強く押し付けた。

 刹那。強風が巻き起こる。部屋のもの、すべて巻き上がる。それは立っていられないほど。

 そんな中、スミレの身体だけ優しい風に包まれて。片桐の腕に収まった。

 それは一瞬の出来事で、風に飛ばされた三人は壁に背中を打ち付け、床に膝をついていた。

 いち早く立ち直ったのは、リーダーの男。


「ブラボー! 面白い! スミレくんを取られまいとして、力が覚醒したのか! すばらしい! ならば、君も我らとともに来る資格があるよ! さあ、彼女とともに来るがいいよ。少し時間を掛けすぎた。これが、最後通告だよ。もし来ないなら、このビルの人間がどうなるか? わかるかい?」


 スミレは片桐の腕の中から、男の愉悦に満ちた顔を見た。

 目的のためなら、何でもやりそうな顔。


「それに今は油断したからやられてしまったけど、2度目はないよ。今の片桐くんでは、トールには勝てない」


 スミレを抱きしめる片桐の腕に力が入る。


(今の状況だと、男に従うしかない)


 香蓮たちを人質に取られてしまったら、どうしようもない。

 スミレは勇気をもらおうと片桐を仰ぎ見た。

 いつもの彼からは想像つかないほど、苛烈な瞳。

 恐ろしさより頼もしさを感じる。

 スミレは覚悟を決めた。


「いいわ。行きましょう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ