第18話 辺境の地
短いです。
「着いたよ」
スミレと片桐は東条院ビル7をでると、すぐ黒い大型ワゴンに乗せられた。そして速やかにアイマスクをされた。
その為、状況が掴めない。
一度車から降ろされ、かなり揺れる乗り物に乗せれたのはわかった。
その揺れ方から、船だと予測する。
船の揺れ。目隠し。時間感覚が狂う。
どのくらい乗ったのか。数分なのか、数十分か、あるいは何時間か。
「到着~」
男の気の抜けた声に、自然肩が下がる。
予想外の船旅は、スミレの心を自覚する以上に、緊張させていたらしい。
アイマスクが外され、スミレたちが降り立ったのは、小さな島だった。
「ここからまた少し車で移動だよ。もう少し頑張ってね」
スミレたちに、労いの言葉をかけたリーダーの男は、先だって歩いて行く。
スミレと片桐もトールとキロと呼ばれた2人に促され、男の後に続く。
船着き場にある船は、スミレたちが乗って来た一隻のみだ。見渡す限り人もまるでいない。
助けを求めるのは無理なようだ。
またも大きな黒いワゴン車に乗せられる。
「残念だったね。ふふ。逃げられないよ」
助手席に座るリーダーの男は楽し気に、スミレたちが座る最後部の座席を振り返った。
「大丈夫。君たちに価値があれば、これからの話し合いは双方にとって、とても意義のあるものになる筈さ」
(誘拐しておいて、よく言えるわね)
スミレは男を睨みつけると、隣の片桐の手を強く握った。
大きく息を吸って、気持ちを整える。
動転していては、ましてや怒りに目が眩んでいたら、事態は好転しない。
まずは落ち着くのが第一だ。
すると、片桐も賛成するかのように強く握り返してくれた。
そうしている間にも、二人を乗せた車は軽快に走る。
車を運転しているのは見たところ、強面でもなく普通の人であった。運転も丁寧で、介護関係の仕事をしていると紹介されてもよいような人だ。彼は私たちが連れて来られた理由を知っているのだろうか。知っていて加担しているなら、人は見かけによらないという諺を地で体現している人だろう。
(それにしても民家が一軒もない。商店も何もないわ)
スモークガラスではないので、窓から様子が伺える。
あるのは、今、車を走らせている左側に、延々と続く、煉瓦造りの高い塀。
この塀の向こうにいったい何があるのか。
どのくらい走ったのか。
突然塀が切れ、車が一台通れる位の鉄門扉が現れた。
車が近づくと、門は開けられ、咎められることなく中へと入った。
白い石畳の道。周りは鬱蒼とした木々で囲まれている。凹凸はないももの、あまり手を入れていないように見える。それから道なりに少し行ったところで、車は右に曲がった。それからまもなくしてまた門が見えて来る。第二の門をくぐると、人の手の入っているとわかる庭が見えて来た。中央にある噴水。春を謳歌している花壇の花。庭を取り囲むように大きな建物がスミレたちを出迎えた。
車は噴水を周り、スムーズに建物の正面入り口に着く。
リーダーの男は助手席から降りて、後部座席のドアを開けると。二人を降りるよう促した。
「ようこそ、我ら“辺境の地”へ」




