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転生者ってそういえば戸籍とかないじゃんか!

朝、子供達が外で楽しそうに遊んでいるなか、俺だけラグリエードさんの家のリビングで、書類に囲まれ唸りまくっていた。


クリスたちのはしゃぐ声が羨ましい…何で俺だけこんなに悩まないといけないんだ!


…というのも、ここに来て、ようやく転生してきた弊害が出てきたのだ。


そう、俺には戸籍というものがない。この世界には戸籍というシステムはないが、かわりにパスポートという制度がある。


塀の外から街にはいるには、厳重な検査を受けないといけなく、しかもこのパスポートと言うものが必要となる。


パスポートは耐性者じゃなかったら割りと簡単に取得できるらしく、軍人のラグリエードさんは顔パスで入れるし、先生はよく来るからかパスポートは持っていた。


子供たちも前に街にきたときに作っていたが…実は俺だけもってないんだ。


理由はただ一つ。俺の素性が全く分からないからだ!!


どこで生まれたのか、名前は本当のものなのか。それすらわからない。それどころか情報上では存在していない存在なのだ。


そりゃねーよ、この世界で生まれた訳じゃねーもん!


正式名称は国内指定区域侵入許可書...というが、素性のわからない俺にそんなものを軽く発行してくれるわけもない。


街にはいるためにはパスポートの他にも、自分の身分となる役職なんてのもある。


一番上は国王様。その次がプラウスの研究をしている科学者や博士。続いて国を守る軍人、兵士たち。


身分制度って言うから差別もかあるのかと思ったが、そういうことはないらしい。…表上は。


王様が偉いのはわかるが、次が博士なんて意外と科学的な世界なのかも知らない。


つまり何らかの重役に入っていれば、顔パスで街にはいることができる。


この世界の中心に位置するルーデルク王国や狂暴なプラウスのいる区画に入るためにも、この重役になっていないとならない。


まぁ、そんなものは俺にとっては無縁のもの。しかしパスポートが無いと街には入れない。


前はどうしたって?俺は門の前で待機してたぞ。街にはいったが、入った訳じゃない。


そもそも転生してきたら、戸籍みたく自分を証明できるものなんて無いわけだろ?


1の情報を10にすることくらいは嘘でごまかせるが、俺の場合は0から1を作ることとかわりない。


今回はきちんと街に入れるようラグリエードさんがパスポートを作るために街にきた、と兵士を説得してくれたが、パスポートがなければこの先困るのは俺だ。


ということで今日はそのパスポートを作ることと、食料調達が目的だ。


元々俺のパスポートが無いことを危惧していた先生は、パスポートに必要な書類やらを持ってきてくれていた。後はそれを書いて役所に提出すれば良い。


で、いまそのパスポートの申請書類を書いてるところだが、さっきもいったが俺にはこの世界で必要とされる情報が全く無い。書くのも大変なのだ。


「捗ってるか?...な、わけねーか。」


俺がちゃんと書類をかけてるか見ていた先生が、苦笑いをしてキッチンから戻ってきた。


手には湯気をたてたマグカップが二つ、それをテーブルの上において俺の前に座った。俺のはココア、先生のはコーヒーだ。


普通、こういう書類は大人が書くものという認識なのだが、この世界では自分でかいた書類しか認められないそうだ。


赤ちゃんは仕方がないが、ある程度知能がついたら自分で全部やらないといけない。子供用の書類はそれようにわかりやすく簡略されてはいるから、助かるけどさ…。


「何を書いたらいいかわかんないよ先生。」


俺はありのまま呟くとため息をついた。


必要最低限記載が必要な情報は、名前、性別、生年月日、生まれた場所、家族構成の5つ。


記憶喪失ということもあり、必要事項を減らしてくれたのだ。


名前はバイバルといったが、それは名前であって名字じゃない。


フルネームを全部考えないといけないのだ。これは適当だとあとで困るのでしっかり考える。


しっかり考えて、バイバル・ダルトと言うことにした。


なぜダルトか?ラグリエードさん家の壁にポスターが貼ってあったんだ。タルトの。


うまそうだったし覚えやすそうだったからそれにした。決して適当ではない、決して。


さて、次だ。生年月日は前世と同じ日付にし、歳は...クリスと同じ5つにしておこう。


年齢は本当の生年月日がわからないため、もう予想で書くしかない。


そして次からだ。

生まれた場所と家族構成。こればかりはどうしようもないぞ。


何せ生まれた場所と言うか、ここにきた場所なんてゾンビだらけの森の中だし、この世界には俺の母親も父親もいない。


というか、俺って一応孤児だよな?孤児でも赤ん坊の時に捨てられたら、わからないよな?そういうことにできないのだろうか。


俺はそう思い、ジーと先生を見た。先生は首をかしげている。


「ん?どうした?」


「...俺、孤児院に捨てられたってことでここ書かなくてもいいかなって、思って。」


そうして俺は、持っていたペンで家族構成やらの項目をつついて見せる。すると先生は身を乗り出して俺のかいた書類を見ると、驚いて俺と書類を交互にみつめた。あれ? そんなに変なことはいってないんだけどな。


「あぁ、悪い。お前は名前と生年月日だけかければいいんだ。」


……はぁ!?


必死で考えてたのに、書かなくていいのかよ!!


と呆気にとられていると、先生が苦笑いを浮かべた。


「そこは保護者が書けばいい項目なんだ。だから難しい字でかいてあったはずなんだが..バル、お前読めるんだな。」


そういわれて、俺は不味いことをしたと、今さらになって感じだ。


この世界ではアルファベットに似た文字が使われているが、スペルの並びで言語の難易度が上がるのだ。


簡単な並びだと、所謂ひらがなみたいに子供でも読めて、難しくなったり文字数が増えると、漢字のようにもう少し勉強してから読めるものになる。


が、俺の中の知識はほとんどこの世界のものに置き換わっている。つまり知識だけは成人のそれと変わらない。


5歳で漢字を普通に読んでいるのと同じことなのだ。そりゃ、驚かれるな。


驚かれたが、決してそれは恥ずかしいことじゃない。寧ろ勉強ができているということだからか、先生は凄いな、と頭を撫でてくれた。


先生に書類を渡すと、サラサラとなれた手つきで書いていく。


ちょっと覗くと、俺の家族構成のところには"プラネタル孤児院在住"とかかれていた。


間抜けなことに、自分が住んでいる孤児院の名前を今ここで初めて知った。ずいぶんしゃれた名前なのだな。


孤児院の代表ということで、先生がサインをすると書類を大きめの封筒にしまい、俺に渡してくれた。


「よし、役所に届けにいくぞ。バルは街で買い物をしたことがないだろ?帰りに何処か見に行くか。」


先生がニヤリと笑うと、俺は頷いて後についていく。


よっしゃぁああ!!


とても楽しみなのだ。外の世界はどんなものなのか、市場とかはあるのか、どんな街なのか。考え出したらきりがなく、好奇心が沸き上がる。


俺は意気揚々と外へと出た。この先、俺にまたも災難が降りかかるとは知らずに。

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