家族2
「まだ、起きてる?」
扉を開ける前に勝手に扉が開き、ひょこりと顔を出したのはルリだった。
枕をもって扉から頭だけ出して、こちらに声をかけてくる。
起きているので手をふると、後ろにシェーナがいるらしく、手を繋いで二人して入ってきた。
...が、驚くことにシェーナの目が真っ赤に晴れていた。鼻を啜る様子から、どうやら泣いていたようだ。
いったい何があったんだ!?
「どうしたんだシェーナっ!?」
俺もさっき泣いたところだが、その時とは比べ物になら無いくらいクリスが動揺していた。
まぁ、実の家族なら当然だろう。俺も何で泣いているのか気になったので、聞き耳はたてながら二人が座れるようにベッドの端に移動する。
二人を座るように促し、俺とクリスの間に座らせた。
シェーナは落ち着いているが、まだ時折鼻を啜ってしゃくりあげている。持っていた枕をぎゅっと抱き締め、うつむいている姿は、いつもの元気な彼女とは全く違う。
普段の彼女と違いすぎて、不安が込み上げてきた。
「シェーナ、怖い夢を見たって。眠れないの。」
シェーナが何時までたっても口を開かないため、ルリがかわりに説明してくれた。
道中にゾンビとデスレースをしたのだ、無理もないだろう。
クリスがシェーナの頭を撫でてなだめるが、そう簡単には心の傷は消えない。
こう言うときは先生を頼った方がいいのかもしれないが、先生は今お取り込み中だ。邪魔はできない。
どうすればシェ~なが元気になるか。全く見当がつかず思い沈黙が流れていた。
「....何だ、皆まだ起きてたんだ。」
また扉の方から声がして振り向くと、そこにはラルクがいた。ルリ達と同じように枕をもってたっている。
俺とクリスは紙笛で遊んでいたが、こんな時間まで起きているなんて皆やっぱり、眠れないのだろう。
現在夜12時。前世なら何時くらいなのだろうな。一周回って朝の六時か。とりあえず、遅い時間だ。
「やっぱり、皆眠れないよな。いっそのこと、皆で寝るか!」
お泊まり会見たいにすれば、すこしは気が紛れるんじゃないか?
ベッドのマットレスは取り外し可能だし、並べればなんとかなるだろう。
俺の提案に迷うことなくのってくれた子供たちは、マットレスを持ち上げて床に引き直した。
子供五人で一つずつ運んだが、やはり結構重い。少し時間をかけて敷いたマットレスに、皆円を描くように寝転がる。
この世界に布団の文化はないだろうから、床にマットレスを敷くのはあまりよろしくないんだろうな…まぁ、土足文化じゃないし床も汚れていないからいいだろう。
皆まとまっていれば、少しは恐怖はましになるはずだ!
安心したのか、暗かったシェーナの表情も少しだけ明るい。
「なぁ! 俺さ、紙笛吹けるようになったんだぜ! 聞いてくれよ!」
態となのか、素なのか。先程まで練習していた紙笛を披露したく、クリスは明るい声を上げた。暗く緊張していた空気が少しだけ緩むのを感じる。
「クリス、ほんとに吹けたの?」
まだ少し元気はないものの、シェーナもいつもの調子を真似て軽い口を出す。クリスは待ってましたとばかりに紙笛を取り出してにやりと笑う。
「みてろよぉ!」
論より証拠、百聞は一見にしかりとは言うが、見せた方が確かに早い。クリスは自信満々に、紙笛に息を吹き掛けた。
"ブビッ..."
が、音は途中でとまる。勢いはよかったものの、力みすぎてしまったようだ。
あんなに大口を叩いた割り、吹けなかったわけではないが完璧に吹いたわけでもないという、中途半端な結果に思わず皆笑いだしてしまう。
「くっそぉ!さっきはうまくいったんだぞ!なぁバル!」
助けを求めるように俺を見てくるが、俺は何のことやら、と肩をすくめるだけにしておいた。
吹けてはいたが完璧じゃないし、クリスの成功率は40%位と、これまた中途半端なのだ。ちゃんと吹けてるとは断言できないな、許せクリス。
紙笛は失敗に終わったが、皆の表情は緊張から解けていた。複数人でいることの方が安心感と伝わりやすい。
皆で寝る、というお泊まり会みたいなことができて、実は俺もちょっと嬉しいのだ。
それからは皆でいろんな話をした。街に出るというお化けの話や、先生がやらかした失敗、クリスの悪戯でラルクが本気で怒ったことなど、沢山の話を聞くことができた。
俺の話も、少し。思い出したという程で小さい頃の思い出を話した。違う世界からきたなんて、子供相手でも言えないが、それでも興味津々で聞いてくれたのは嬉しかった。
話して、笑って。時間が経てば経つほど口数が減っていき、気がつけば皆眠りについていた。
その寝顔には恐怖に怯えたものはなく、穏やかで楽しげな笑みを浮かべていた...。




