第十六章 長い年月の果てに
木下のアイデアで進むかに見えますが、まだまだ簡単には。
半年後、光変換薄膜コーティングで、覆ったクロロフィルが完成した。それを用いたマウスで効果確認を行った。緑は消えた。黒でもない。わずかにグレーだ。しかし光が当たると見事に色が消える。これなら何とか許容範囲だろう。糖に変換する能力は緑色の時と変化はない。きっちり吸収したエネルギーの余剰分を光に変換している。
しかし、翌日に測定しようとしたら、マウスの肌にはグレーの痕跡はなかった。もちろん光合成はできない。クロロフィルは体外排出されてしまったようだ。
これには、ミユキは頭を抱えてしまった。
「あと一歩のとこまで来たのに・・・」
木下は、ニヤリと笑いながら。
「大丈夫だぜ、今度はこういうこともあるだろうと予測はしていたんだ。生物学的に不活性という件が少し引っかかっていた。やはり、生体として認識されないみたいだな。これについては東都大学の山崎教授にすでに依頼してある。教授の研究したナノ構造体カプセルに入れれば、おそらく行けるのではないかと思ってる。」
ミユキは少し安どの表情を浮かべたが、本田が疑問を呈した。
「ナノ構造体の穴の大きさでは生産した糖が排出されなくなりませんか?」
「それは大丈夫だ。一部に糖が通過するだけの穴をあければいいだけだぜ。心配するな。」
木下は得意げに言った。
「さすが、木下さん。」
真田が木下の背中をたたいて言った。
ナノ構造体カプセルの製作までには半年以上かかったが、結果はうまくいった。色は暗所でライトグレー、明所ではほぼ透明でほとんど目立たない。従来の定着補助酵素、活性化剤、不活化剤はそのまま利用できた。
最終的にミニブタで確認したが、エサがなくても生存できる。ミドと同じ効果だ。しかし知らない人には普通の豚と見分けはつかない。効果の継続も確認した。減衰しない。
機能的には完成したといっていい。あとは、外部に依頼した生体に対する影響確認だけが残った。対象動物事態に対する影響,そしてその肉を食べた動物に対する影響、子に対する影響、これらがすべて大丈夫でないと世には出せない。
ミユキのところに一通の封書が届いた。依頼した生体影響確認結果だ。
ミユキはみんなを集めて、封を切る。書類を取り出して内容を読む。木下の喉がごくりと音を立てる。静まり返る。
「すべて合格です。」
ミユキの声に、四人はその場に座り込んでしまった。
本田がつぶやく。
「終わったんですね。」
木下は小刻みに震えるだけだった。堀江と真田は抱き合って泣いている。
そこに、偶然末永が入ってきた。相変わらずタイミングのいい女である。その場の雰囲気に何かあったと察してミユキに聞いた。ミユキは検査結果を見せながら、
「最後の調査結果は合格でした。完成です。」
そう言った。
「そう、おめでとう。23年か、長かったわね。本当に良かった。」
末永も自分のことのように喜んだ。
ようやく完成です。長い道のりでした。
木下は同じ失敗は繰り返さないですね。




