第十四章 緑の謎
何か動きがありそうな気配です。期待してください。
それからしばらくたったある日のこと、いつものようにテレビでニュースを見ながら執務室のテーブルでスタッフと昼食をとっていた時だった。
テレビでは、モンゴルのことを紹介するコーナーになり、モンゴルの大平原が画面に映った。それを見たミユキは、誰とはなしに聞いた。
「なぜ、植物ってみんな緑色なのかな?」
「それは、660nmあたりと450nm当たりの光を使っているから残りの緑の光を反射しているからで・・・・」
「そういう事じゃなくて、」
ミユキは木下の技術的な説明を遮った。
「そんなことは言われなくてもわかっています。そうじゃなくてなぜ緑の色を使わなかったのかなって。」
ミユキは続けた。
「植物が緑色を使わない理由はあるのかな?そんなこと考えてみなかったなと思って。」
「確かにそうだ。今までそこは当たり前と思ってた。葉緑素だから緑色に決まってる。」
「史郎さんも、そこは変えられないと言っていたような気がする。」
「おれたちは、葉緑素は緑だということに囚われすぎてたぜ。」
木下は頭を掻きながら言った。
「前提からやり直しかな。」
ミユキがそういったところで、堀江が口をはさんだ。
「全領域で光を吸収したら、黒になってしまいませんか?」
「確かにそうだぜ、考えが甘かったか・・・こんな簡単に解決はできねえな。」
しばらく沈黙が続いたが、ミユキが叫んだ。
「黒でもいいじゃないですか、まずはそれを作ってみましょう。」
ミユキの突然の決断にみんな驚いた。しばらくの間があってから木下が叫んだ。
「駄目だぜ、黒はまずい。アメリカでは絶対に受け入れられねえ。」
頭を抱えるミユキ。すでに昼ご飯の時間は終わり、日が傾きかけてきていた。そこに本田が入ってきた。
「さっきの件を調べてきましたが、緑色が特に劣っているというわけでもないです。
エネルギー変換効率的にはかえって青よりも良いという文献もあります。」
「エネルギー変換効率か・・・、おい本田、光合成自体のエネルギー変換効率はどれくらいなんだ?」
「太陽光の照射量に対し、糖になるのは10%もないです。」
「なに、そんなに少ねえのか。使われないエネルギーはどこに行くんんだ?」
「おそらく、ほとんどは熱になって拡散されると思われます。」
その時ミユキの頭の中で一つの道筋が浮かんできた。
「そのエネルギーを利用できないかしら?効率が上がれば、単位面積当たりの糖の生産量が増えます。そうすれば、今の定着材を改良して分散定着させれば、相対的に色を薄くできるでしょう。定着材はエマルジョンにすれば分散定着はできると思う。」
一同に笑みが浮かんだ。
「それならやってみる可能性はあるぜ。」
ミユキは続けた。
「まずは、ゲノム解析からね。吸収する波長を決める遺伝子を特定させましょう。そこを変えれば吸収する周波数を増やせるでしょう。そうなると今使っている松葉では使い勝手が悪いから、成長の早い植物じゃないと使えないわね。」
本田が間髪を入れずに続ける。
「成長が早いといえば竹が一番です。クマザサなら葉も大きいです。しかし、タネで増えないので遺伝子操作を加えるには扱いが難しいです。しかし、例えば、葉物野菜、小松菜とかほうれん草とかなら、タネから発芽までならすぐです。多量にまけば収穫も多くなります。」
「そうね、ほうれん草でやってみましょう。ゲノム解析はわたしから財団に依頼しておきます。ちょっと時間がかかるかもしれません。その間にロードマップの修正をしましょう。皆さんのご協力をお願いします。」
ミユキのくすぶっていた心の炎がまた燃え出してきたようだ。
「ようやく、光が差してきたようだぜ。」
「今度こそうまくいくといいですね。」
「うまくいくにきまっているよ。」
既にすっかり暗くなってしまったが、充実した半日だったと皆が思った。
少し前に進みそうです。当たり前という考えは、時には障害になってします。




