第十一章 停滞
資料は手に入ったが、簡単に研究は進まない。その苦悩が続きます。
末永は意気揚々とファイルを持って帰ってきた。木下はそれをむさぼるように見て仕分ける。
「これとこれは使えそうだ。この束はドラフトのようだな。最後どう決めたのかわかんねえ。日付がある。2月28日?」
「事故の一週間前!」
ミユキが叫んだ。
「ということは、帰ってからまとめるつもりだったのか。三村氏は頭の中に入れたまま持って行ってしまったか。」
「そこは大事なところなの?」
末永は心配して尋ねた。
「大事も大事、ほかのところはだいたい推定できてたんだが、ここは全く抜けてたところだ。この先の方向性の核心なんだよ。」
「何ともならないの?」
末永には、最後のピースがはまったと確信していたが、実はそのピースは違うものだったというもどかしさを感じた。
「まだ、振り出しから動けていない・・・」
木下は、それを振り切るように言った。
「まだ、終わりじゃねえよ。こんだけのドラフトがある。これを一から検証すれば、三村氏と同じ結論に到達する可能性もある。今は同じレベルの思考力はあるはずだ。でも、それをやるには、今の予算は足りねえし、人だってほしい。二人ではどれだけかかるかわからねえ。」
木下は机をこぶしでたたきながら吐き捨てるように言った。
ミユキは、今はこれくらいしか言えなかった。
「予算については教授に相談してみます。人は学生の手伝いを頼めないか相談してみます。」
そのやり取りを聞いていた末永は携帯電話を取り出して電話をかけた。
「もしもし、私、末永です。おじさま今よかったかしら?ちょっとご相談したいことがありまして、明日にでも伺いたいです。はい、10時ですね。了解しました。ありがとうございます。」
それを聞いていた木下は末永に聞いた。
「どうする気だ?」
「あなたのボスに話してみるわ。」
そう言い残して末永は帰っていった。
一週間後に末永は一人の男性を連れて教授の部屋に入っていった。しばらく話をした後、教授と三人でミユキの研究室に入ってきた。
「中園先生、いい話が入ってきましたよ。こちらはのぞみプロジェクト財団の大河内理事長だ。彼の財団が君の研究を支援してくれるそうだ。資金提供と人材提供をしてくれる。よかったな。これで研究が一気に進むといいな。」
山崎教授はニコニコしながら話した。ミユキは大河内理事長に挨拶し、謝辞を伝えた。末永と木下がその後ろで微笑んでいる。
翌週、二人の女性研究員がミユキの研究室に来た。堀江由香と真田美樹だ。二人とも27歳で優秀な研究員だ。
二人は執務室にいるミユキに挨拶すると、研究室に戻った。
「ねえ、左手の薬指見た?やっぱり中園先生は結婚されているんだ。」
「旦那さんが事故で若いころに亡くなったというのは本当なんだね。」
そんなうわさ話が好きな女性が加わって、研究室もにぎやかになった。しかし、研究は思ったように進まない。史郎の最終資料はドラフトのままである。おそらくそこに記載されている手段のほとんどがボツであろう。しかしどれがそうなのか全くわからない。4人で手分けしてすべてを確認していくしかない。
それと並行して、木下は財団の人脈を使って緑色を消す技術を探していた。ただ色を消すことはできる。色が消えると機能も消える。それでは意味がない。そうこうしている間に2年の時間が過ぎてしまった。
末永のおかげで支援が増え、仲間が増え、どんどん環境は整っていきます。
しかし、成果は...




