猫歴100年その4にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。断固、神様ではない。
猫の国百年祭の最後に失言したせいで、わしは神様扱い。町を歩いても子供たちが「猫神様~!」とか言うので「王様と呼べ」と訂正する毎日。
たまに白猫教とかいうカルト集団が近付いて来るので、「破門! 破門! 破門!」とかめちゃくちゃ言って追い返している。ちょっとでも減らないかな~?
百年祭で使った施設は、11月末まではこのまま。わしと猫クランメンバーのポケットマネーで世界中の子供を招待しているからだ。
子供に掛かる費用は、なんと全て無料。ただ、1人では来れないだろうから引率の先生やら親御さんも来ることになる。
その人には移動費と宿泊費は出してあげるけど、飲食費や施設使用料は別だ。こうでもしないと関係ない人までいっぱい来るもん。
ケチとか言ってる人は、そこに正座しろ。国の規模によっても異なるが、各国最低、千人もの子供を招いているのにその言い方はないわ~。ちょっとでも出してから言え。
ベティでも5万ネコ出してくれたんだからな……少なっ!? あ、個人的に先にやっていたからスッカラカンだったんですか。それなら無理して出さなくてよかったよ?
もちろん子供たちの反応は感激の嵐。発狂している子供もいるからそのまま死なないか心配だな。
遊戯場は一般客もいるが、今年いっぱいまでは予約制で人数制限するから子供たちもゆとりを持って遊べる。ちなみに11月末とか12月いっぱいとか言ってるのは、東の国に配慮して。「女王誕生祭が霞む~」って泣くんだもん。
子供たちを招待している理由は、未来を加速させるため。技術系のパビリオンは必ず行かないと「怖い人がお金を取り返しに行くぞ~?」と脅しているから従っていると思われる。
ちょっと内容が難しいパビリオンもあるが、1人でも興味を持ってくれたら万々歳。勉強を頑張って猫大に来てくれるはずだ。したがって、新しい技術も生まれるのだ。
まぁ空飛ぶドローンやお掃除ロボット、ローラーコースターや3D映画といった新技術も体験しているから、他の子供たちにも期待できるけどね。
あ、カジノは子供は入れないよ? わしたちの出したお金を増やして持ち帰ったり、ギャンブル中毒になったら嫌だもん。
猫クラン活動とお昼寝の合間に、招待した子供たちのことをちょくちょく見ていたら、東の国周辺国の君主たちから「久し振りにみんなで飲まな~い?」と手紙が届いた。
相変わらず白猫教が現れるし王妃様方からも働けと怒られるので、猫の国にいないほうがマシかと思ってノコノコ出向いたのは失敗だったかも。
「核融合発電所を作る土地も水もないにゃと~~~??」
理由はそういうこと。日ノ本やアメリヤ王国なら海が近くにあるからすぐにでも作る決断はできるのだが、東の国周辺国は陸の孤島。やれそうな国は最南端に位置する海にちょびっとだけ面するビーダールだけ。
各国は上流から流れる川の水に生活用水も頼っているのだから、水が汚れそうな施設には敏感になっているから大喧嘩になったんだって。
そこでどこの国が言い出したかわからないけど、「言い出しっぺならなんとかできんじゃね?」との結論に至った。本当にどこでそうなったんだか……
こいつらの計画とは穴だらけ。猫の国に発電所をもう数個作らせて、それを東の国に送って割り振る。さらにビーダール以外の南の地を開拓して、海まで道を繋ぐ。そこの土地を各国の共有地にしたいそうだ。
こんなこと言われてわしが首を縦に振ると思っているのか? これ、わしの負担がめちゃくちゃデカイ、世界的事業じゃぞ~~~!!
結局この日は喧嘩別れして、後日、裏から手を回されて核融合発電所建設は許可された。わしが許可したんじゃない。大金に目が眩んだ王妃様方だ。
「違うよ? シラタマちゃんが全然働かないから、リータたちが受けたのよ」
ミテナ曰く、そういうことらしい。百年祭が終わってから、猫クラン活動と遊園地に行く以外はほとんど寝てたもん。
「てか、裏から手を回したの、みっちゃんだよにゃ?」
「なんで私が?」
「東の国のためにゃ。リディちゃんと連絡取り合ってるの知ってるんにゃ……」
「なんで知ってるの!?」
「あっ、当たってたんにゃ」
「カマ掛けたたわね!? この猫~~~!!」
「猫にゃけど??」
実のところ、これはブラフではない。王妃様方に弱いって情報は外には出ていないのに、そこを突かれたから不思議に思って調べたのだ。
やり方は、君主のスマホに盗聴とハッキング。まだ猫の国がこんなことをしてるなんて知られていないから、セキュリティーガバガバで取り放題だ。
そこで情報を精査してる時に、猫の国に東の国のスパイがいると聞いて名前を見たら、ミテナ。一瞬で理由もわかったから、この情報は全て破棄しました。
わしたちが君主の盗聴とハッキングという世界中から犯罪国家というレッテルを貼られそうなことをやっていることもそうだが、猫クランの一員のミテナが国家反逆罪をやってるんだもの。発表できるか~~~!!
この件は王妃様方にも報告してミテナの罰は決まったけど、わしの仕事は覆らない。これも世界のためなんだってさ。そんなに急がなくてもいいのに……
というワケで、わしは海の近くで核融合発電所の建設。ミテナは罰で、必要物資の発注や関係者との打ち合わせ。猫クランは森を切り開く仕事を請け負ったのであった……
「ねえ、シラタマちゃん……なんで私、こんなことしてるんだろ?」
「みっちゃんがいらんことしたからにゃろ~~~」
「えぇ~……私もハンターらしい仕事したい~」
「だからわしに言うにゃ。わしは被害者なんにゃ~~~」
こうしてわしとミテナはグチグチ言いながら、自分の仕事をこなすのであったとさ。
猫歴100年はせっかくめでたい年だったのに、わしは建物建築とインフラ整備ばかりしているので、めでたい気持ちはすぐに忘れた。
わしの力をフルに使えば、今年中には全ての国に核融合発電所で作られた電気は届られ、いまより豊かな生活ができるはずだ。
わしの財布もめっちゃ豊になってしまったけど……子供たちで使ったお金が倍返しだ! 減らね~~~!!
猫の国にも核融合発電所を5個併設したから、その売上はかなりの額になると思う。首相の笑いが止まらない。その前に赤字国債を見ろ。タダで作れるワケなかろう。
核融合発電所が1基だけでも国債を発行することになったのに、それを一国で5基も作ったのだから国が30度は傾く額だ。首相も泡吹いて倒れました。全部、他国から返って来るお金なのにね。
他国に作った場所は、ビーダールの海から東に何百キロも離れた場所。できるだけ浅瀬が遠くまである場所を選んだが、白い巨大魚とかは馬鹿だから突撃して来る可能性はゼロではない。
なので五重も分厚い外壁を作ったが、どうなることやら。わしの土魔法だから津波は大丈夫だろうけど、白い巨大魚はかなり強い。タコやイカなら簡単に乗り越えられるからな~。
核融合発電所の数は、10基。猫の国のと合わせれば、太陽光発電と魔力発電もあるからブラックアウトにならないはず。
まぁ人間の欲望は果てしないから、また作れとか言われるんじゃろうな~……土地は用意しておいたから、自分たちでやれ。
この場所は、東の国周辺国の共有地。各国で共同管理すると聞いているけど、超深い森を猫クランが切り開いたのだから、猫の国の所有物じゃないのだろうか……
なんで一員なんじゃ……猫の国は管理しなくていいって当たり前じゃろうが……キャット発電所って名前はやったって……それが一番いらないわ!
どうやら核融合発電所を作るに当たって、王妃様方がこんな契約をしていたらしい。余計なことを……
このキャット発電所から電気を送る方法は、地面を掘って長い長いケーブルを埋めるだけ。これもわしの仕事って、酷くない? 何万キロになるんじゃ……
いちおう国境線辺りまでケーブルを引けばあとは代わってくれるらしいけど、国はひとつじゃないんじゃ。周辺国全てに歩いて行けと? 奴隷でももっと扱いはいいぞ??
毎日どこかの君主に電話で愚痴を言っていたら、やっとこさ全ての国を歩き切ったわしは超偉い。
これであとは各国の土建屋さんと電気会社の仕事に移ったので、全ての国の君主を呼び出して愚痴だ。
「キャ、キャット圏……にゃにそれ~~~!?」
キャット発電所から送られる電気を使う地域をキャット圏って言うんだって。所謂、ヨーロッパ諸国だとか貨幣をユーロに統一したユーロ圏とかと一緒だ。
どうやら王妃様方が狙っていたのは、この呼び名。侵略戦争ナシで全ての国を猫の国にしたような物だから、わしに鞭を打って作らせていたのだ。
「これもみっちゃんの入れ知恵にゃろ!?」
「ち、ちがっ! 私は歴代最高の女王の名前にあやかって、サンドリーヌ圏にしようと提案したもん!!」
「にゃに自分の功績足そうとしてるにゃ!?」
「これぐらいはいいでしょ! また猫の国に持ってかれた~~~!!」
「みっちゃんがいらんこと言うからにゃろ~~~!!」
キャット圏なんて嫌に決まっている。しかし犯人もしてやられていたので、2人で「にゃ~にゃ~」大喧嘩。
だがしかし、喧嘩をしていても名前は変わらないので、ここは手を組んだほうがいい。サンドリーヌ圏でも許す。キャット圏なんて猫の縄張りみたいだもん!!
とりあえずわしとミテナは「キャット圏なんて変ですよねよ~?」とロビー活動に明け暮れたけど、各国の君主は変だと思っているのに何故か首を縦に振ってくれなかった。
「まさかみっちゃん……わしのこと裏切ったにゃ?」
「なんで私を疑うのよ~」
「前科あるからにゃ」
「そのことはちゃんと体で払ったでしょ。たぶんどけど、リータたちが何かしてるのかも? 聞いてみたら??」
「わしが聞いたら、絶対に教えてくれないにゃ~」
王妃様方が犯人の可能性は高いので、ミテナ案を試してみたら撫でられただけ。ミテナも聞き出そうとしてくれたけど、ウサ耳と尻尾をモフられてシクシク泣いてた。ちょっとは気持ちがわかったか?
こんなことは家族にしたくなかったが、フユに頼んで王妃様方のスマホをハッキングしてもらったら悲鳴をあげた。モフモフだらけなだけじゃろうが……
写真のファイルは見ても意味がない。メールを調べればすぐに理由はわかった。
「わしの調べたところ、わしに支払われるべき報酬が3割引きになってたにゃ」
「どこから情報を得たかは気になるけど……つまり各国の君主は安く手に入れるために口を噤んでいるワケか……」
「そうにゃんだけどにゃ~……こんにゃ手、リータたちがやると思うにゃ?」
「そういえばそうね。いくらキャット圏にしたいからって、あの3人がお金にまで手を突っ込むとは思えないわ」
「これは黒幕がいるにゃ……」
「ええ……」
謎はここで終わりではない。わしたちはキャット圏構想を潰すために、黒幕に立ち向かうのであった。
「フッフッフッ……よく気付いたんだよシラタマ君、ミテナ君。アドバイスしたのはノルンちゃんだよ~~~!!」
「「だろうにゃ」」
「もっと驚くんだよ~~~!!」
王妃様方じゃなかったら、政治通のノルンしかいない。すぐに答えをくれたので、わしたちはさっさとその場を立ち去るのであったとさ。




