第13話 賢者は中等部へ進学する④
今日の講義が終わりダニエルとともに寮へと移動した。
寮につくとちょうど入寮式が始まるところだった。
「いらっしゃい新入生のみんな。寮長のガブリエラだ。中等部3年のAクラスの所属だ。特に寮のルールは初等部の時と変わらないが、一つだけ言っておく。絶対に寮内で魔法・魔術・武技等を使うな。これは代々受け継がれてきたことなので必ず守ること。理由は簡単だ…。壊したら自分たちで直さなければならないからだ。これは地位などは関係ない。過去に子爵子息が平民の生徒と一緒に悪ふざけをして壁に穴をあけたらしい。その罰として二人で壁の修復作業を行わされたとのことだ。しかも、周りの人間は一切の手出し無用。つまりはそういうことだ。もう一度言う。ここでは地位など何の役にも立たない。もしそれを振りかざしたいのであれば別の学園へ転校することを薦める。以上!!各自部屋を確認し、荷物を整理すること。食堂への集合は今より1時間後とする!!」
寮長の話の内容に聞き覚えのある二人は顔を引きつらせていた。それはティリアから聞いた父の昔話そっくりだったのだ。
その二人の表情を見た、ダニエルは何となく理解できてしまった。どうやらこの話の主人公は二人の父マルコなのだと。
三人は部屋割りを確認すると、ダニエルとレイアスは同室であった。ジョシュアはまた別の男子生徒と一緒だったため部屋の前で別れた。
ダニエルとレイアスは部屋に入ると、一息ついていた。
「レイアスと一緒の部屋になるとはね。これも奇遇だよね。」
「ダニエル殿下、そろそろお戯れはよしていただけますか?」
レイアスの一言に驚きを隠せないダニエルは、少し動揺してしまったようだ。
「いつから気が付いていたんだい?」
「父がここ最近で稽古をしたのは自分たちのほかは電化だけですから。その話は父よりうかがっています。なのでジョシュアも気が付いているはずです。」
ダニエルは締まったという顔を浮かべて入るが、大して焦りはしていないようだった。
レイアスもまた、自分の置かれている立場をおそらく理解しているであろうダニエルに忌避感は抱いてはいなかった。
「この部屋割りもあえてそうされたんですよね?」
「さすがにばれてるかな。そうだね、君の功績は聞き及んでいるよ。でもそれよりも、君たちに…ちがうな君に興味がわいたんだ。特に魔術に関する知識力。それを使いこなす知恵。何よりもこの世界では考えられない感覚。それを合わせると…。『君はどこから来たんだい?』」
レイアスはさすがに動揺を隠せずにいた。誰にも気づかれたことのない『転生』について。ジョシュアにですら話していない事柄なのだから。警戒度を上げる必要があると判断したのは致し方ないことでもあった。
「おっと、警戒させてしまったのなら謝るよ。私は王家に連なるものだからね、文献には日ごろから触れることができる。その中でも、『異世界』からやってきた人間についての文献には、とても興味があるんだ。その人間たちがこの世界にもたらした影響は大きい。ならば、私の世代でもそれがなされれば、さらなる飛躍につながるのではないかとね。そしてたまたま君の話を耳にしたとき、直感的に理解したんだよ。君がこの世界の人間ではないということを。これに気が付いているものは、おそらく数人しかいないはずだ。君の父君ですら気が付いてはいないだろうからね。だから改めて言おう『君はどこから来たんだい?』」
レイアスはとぼけることも考えた。しかしいつまでも隠し通せるものでもないことは理解していた。むしろ自分がこれからやろうとしていることはこの世界では異端すぎるのだ。ならば、後ろ盾としてはちょうどいいのかもしれないと考えるに至ったのである。
「わかりました、殿下。すべてお話いたします。私の名は天澤零〈あまざわれい〉。こことは違う世界『地球』と呼ばれる場所より異世界転生を果たした転生者です。私が持ちうる知識のほとんどは異世界の物と思っていただいて結構です。少し前に王宮にお伝えした魔術技術も『地球』の科学技術を応用したものです。」
「なるほど、これで合点がいった。君の座学特に算術の成績が優秀すぎるのはそれが原因だね。昔『地球』から来た人間も異常なほど算術に秀でていたと記録に残っている。君がいた世界はとても優れた文化だったんだね。うらやましいよ。」
レイアスはダニエルを巻き込むことに決めた。そして自分の目的に向かって進み始めるのだった。
ダニエルもまた別な思惑を持っていた。自身を支える優秀な人材の確保ができたのだから。
二人は二人の思惑を胸に手を取り合うこととした。
「それはそうと殿下。一つお願いがあります。これから僕はある意味この世界の常識をぶち壊すであろう物を作ろうと考えています。それを作るのにはどうしても後ろ盾が必要となります。どうかお願いできませんか?」
「これはまた怖い発言が飛び出たね。それは君が作り出した技術に関係するのかい?」
ダニエルは、レイアスの話に興味を示しながらもそのスケールの大きさに、いまいち判断しきれないでいた。
レイアスはダニエルを見据え、さらに言葉を続けた。
「はい、その技術は僕がなすことの第一段階にしかすぎません。そして、それを成した暁には…世界の戦争が変わります…。」
「………。よし、その話のった!!」
ダニエルはレイアスを取り込むことに決めた。おそらくこの話は厄介ごとのタネだ。しかし、このままでもレイアスはそれを成してしまうだろう。だからこそ、自分が手を貸すことによって自分の利になると考えたのだ。
ダニエルとレイアスは互いの手を取り強く結んだ。
この出会いにより世界は大きく動き出してしまった。
レイアスは己の趣味の為に。
ダニエルは己の野望の為に。
そして二人はお互い敬語をやめることにした。それは真の友として並び立つ覚悟を決めた瞬間であった。
レイアスは自身が考える物が何なのか、ダニエルに説明をした。
ダニエルはそれを聞いた瞬間、一瞬後悔してしまった。しかしその物を手にしたとき、この世界が大きく変わっていくことも感じ取ったのだ。
これは今誰かに知られてはいけない。レイアスの為にもダニエルの為にも。
翌日、二人を見たジョシュアは急に仲良くなっていることに驚き、何があったのか聞いてきた。
二人はジョシュアに当たり障りのないことを伝えて濁していたのだった。
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レイアスとダニエルが密談をしているころ、ジョシュアもまた新たな出会いが待っていた。
同室には同じくAクラスの男子生徒がすでにくつろいでいた。
「失礼します。」
ジョシュアはノックの後入室すると、そこにいた生徒に驚いてしまった。そう、誰であろうパトリックだったのだ。
部屋番号は確認していたジョシュアだったが、ルームメイトまでは確認していなかったのだ。
パトリックはというとすでに確認済みで、すこぶる機嫌が悪かった。
ジョシュアが頑張って話しかけても、「あぁ。」「そうか。」「………。」しか返ってこなかったのだ。
さすがに気が滅入りそうになったジョシュアは、共通の話題になりそうな領地運営について話を振った。
それについて興味を示したパトリックは、ジョシュアと夜中まで話し合ったのだった。
パトリックもなんだかんだ言って、領主になる覚悟でこの学院へ挑んでいた。互いの主義主張は違えど、どう領地を運営するのか。どうすれば領地が発展するのか。など、話は尽きなかったのだ。
そして意外なことに、ジョシュアとパトリックは意気投合してしまった。ジョシュアが貴族主義になったわけではない。またパトリックも貴族主義をやめたわけではない。お互いがお互いの主張をきちんと述べただけである。
そして、その結果お互いを認め合い、お互いを名前で呼び合うほどのリスペクトぶりであった。
翌朝、二人を見たレイアスとダニエルは、意外な取り合わせに驚きを隠せなかった。
そして、ジョシュアの行動によりある変化が訪れたのだ。
ダニエルとパトリックの和解である。
互いの主義主張は違えど、国を良くしたいということには変わりはなかったのである。
ダニエルとしては、今後国を支えるであろうパトリックとの和解はとても重要なことだったのだ。
4人はこの後、Aクラスを代表するメンバーとなるのだがそれはまた別のお話である。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに動き始めたレイアス。彼はあくまで趣味人です。つまり暴走機関車です。
今後学生生活などでやらかしますが、毎度巻き込まれるジョシュアたち3名は気の毒でしかありませんね。
ダニエルを巻き込むことにしたレイアスはいったいどこへ向かうのでしょうか。
それはまだ先のお話です。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
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では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




