第11話 賢者は授業に落胆する⑥
コンコンコン
「失礼します。ゴーマンおよびシーラ並びにマイクが到着いたしました。」
「入ってもらえ。」
学院長の秘書が三人の到着を告げると、扉の奥から若い男性の声が聞こえた。
「失礼します。」
「待っていたよ三人とも。まずは座ってくれたまえ。」
三人は男性に頭を下げソファーへと腰を下ろした。
三人の前に座っているのが、王立学院学院長のマクシミリアン・フォン・ホーン侯爵である。エルフ族でありながら王国貴族に名を連ねる人物であり、かつエルフ族代表補佐を兼任していた。見た目は若いが、長寿の為か年齢は不明だったりする。当の本人も数えるのをやめたと酒の席の笑い話にしているくらいだ。
「学院長、今日の呼び出しはいかがいたしましたでしょうか。」
「あぁ、初等部1年Aクラスのカール・フォン・フュッテラー君についてで呼んだんですよ。」
ゴーマンが額に汗たらしながら、青ざめた顔でマクシミリアンに話を聞いた。カールの件と聞いてさらにゴーマンの顔が青くなっていった。初めて受け持つクラスの大失態だからだ。
「何か問題でもございましたでしょうか?」
「ゴーマン君、そんなにかしこまらなくてもいいですよ?フュッテラー子爵から抗議が入りましてね。その聞き取りです。」
「は、はぁ。」
上ずったような声でゴーマンはマクシミリアンに尋ねるも、ゴーマンの予想通りの内容にすでに放心状態であった。はたから見たら生きているのが不思議なくらいな状態に見える。
「ああ、あのあほ生徒か。学院長、さすがにあれを入学させるとかありえませんよ?」
「確かにな、ありゃだめだ。いるだけで害悪にしかなんねぇ。」
そんなゴーマンを余所に二人はカールについて評価していった。すでに二人の中ではいらない存在にまで評価が落ちていた。改善する努力をするならば、手を差し伸べようとも思ったが最後までこれではそれすら面倒だと感じてしまったのだ。
「そこまでですか…。ゴーマン君はどう思いますか?」
「は、はあ。担任といたしましてはまだ始まったばかりですので…。こ、これからのことを考えて、まだ見守ってはいかがでしょうか?」
マクシミリアンからの問いかけに、ゴーマンは必死で考えた。いかに貴族からの叱責を食らわないように立ち回るか…頭をフル回転させて言い訳的に評価を始めた。
「ゴーマン君、今現在の評価を聞いているのですよ?」
「え、えぇと…その…あの…。………。」
「どうしました?」
マクシミリアンは『今後』ではなく『今』についてだと念を押した。
ゴーマンは答えに困窮し、シーラとマイクを見るもすでに二人は興味を失いお茶を飲んでいた。
答えに詰まっているゴーマンを見て、マクシミリアンはさらに質問を投げかけた。
するとうつむいて震えていたゴーマンが突然立ち上がり叫んだのだ。
「あぁ~~~~~~~~もぉ~~~~~~~~~!!なんだってあんな生徒Aクラスなんかにしたんですか!!全く持って講義が進まないって各教科担当から文句は出るわ、クラスメートからは抗議は来るわ。僕にどうしろっていうんですか?僕は一平民出身ですよ?貴族子息に注意できるわけないでしょう?!一歩間違ったら不敬罪で首が飛ぶんですよ!?物理的に!!無理ですからね?!あんなのDクラスだって怪しいですからね!!学院長はわかってて入れたんですか!?どうなんですか!?もうすでに今日だけで剥げそうですよ!?ただでさえ、妻に『最近薄くなってない?』って言われてるんですよ?これ労災扱いでいいですかね?これ以上薄くなったら申請しますからね!!」
ゴーマンの怒涛のセリフに部屋にいた全員があっけにとられてしまった。
それを見たゴーマンはまたやってしまったと小さくなって座りこんだ。
「す、すいません!!」
マクシミリアンを見たゴーマンはテーブルに頭をぶつける勢いで頭を下げた。
それを見たマクシミリアンは、それほどまでに悪評が付いていることに驚きを隠せなかったのだ。
「君の評価もよくわかりました。カール君はこの学院には不適切な存在であることは十分把握できました。この件については理事会の承認を経て、国名義で子爵家へ抗議を行います。」
「今日一日だけでもう数日分働いた気がするよ。」
「あぁ、ほんとそれだな。」
マクシミリアンの言葉に納得したシーラとマイクは肩をもみながらマクシミリアンと談笑を続けた。
ゴーマンはというと終始小さくなって「すみません」を繰り返していた。その足元に頭をかいた際の髪の毛が落ちていたことを誰も指摘しないで上げていた…。やさしさの表れであろうか…
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ゴーマン先生ぶちぎれるの回でした。
あまりの怒り具合に学院長たじたじ(;^ω^)
この国は実力主義ですので、だめな貴族は淘汰されていくのですね。
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では、次回をお楽しみください。
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