第11話 賢者は授業に落胆する⑤
その場にいたすべての人間が顎が外れんばかりに驚いていた。普通、魔法・魔術が飛んできたとき躱すか、防ぐかの二択になるのである。それが、突然霧散したのだから意味が分からなくて当然だった。
「さすが兄さん。でもちょっとやりすぎだよね…。」
レイアスはジョシュアが何をしたか知っているだけに誇らしかったが、やりすぎ感が否めず苦笑いしていた。
「危なかった~。カール様、さすがに魔道具の魔術行使はやりすぎですよ?」
残心を解いたジョシュアは、カールに向かって木剣の切っ先を向ける。さすがに怒り心頭だったようだ。
「な、な、なんでなんだな?!水属性中位魔法【ウォータージャベリン】のはずなんだな?!無傷とか意味わかんないんだな!!」
「え?だって魔法は魔力で斬ってしまえば問題ないですからね?」
勝利を確信していたカールは現実を受け入れられずにいた。魔法・魔術を切るなんて普通の学院生ではありえないのだ。それに武術の上位者だって、切り裂くまでできるのはそれほど多くはない。それをやってのけたのだから、驚くのも無理はなかった。
ジョシュアとしてはレイアスとの模擬戦で、これが出いないと一切攻撃ができないから、できて当たり前の技術と思っていた。師匠が師匠だけに常識がずれていたようだ。
「カール。まだやるか?魔術行使までして…。」
「み、み、認めないんだな!!こんなのありえなんだな!!絶対ずるをしてるんだな!!おい、マイクといったな!!今すぐあいつを取り押さえて調べるんだな!!」
武術訓練のはずが魔道具まで持ち出したカールに対し、マイクは怒気をはらんだ声で問いかけた。
カールはすでに正気を失いかけており、またしてもおかしな要求を繰り返してきた。
「………。」
「早くするんだな!!はやくしな…ぐほっ!!」
マイクはこれ以上無駄だと判断し、カールを物理的におとなしくさせた。いわゆる腹パンだ。
ぐったりと地面に倒れていったカールを受け止めて肩に担いだマイクは、生徒たちに謝罪とともに今後の指示を与えた。
「すまんお前たち、今日の訓練はこれで終わりだ。各自使用した武具の手入れをして解散とする。」
「先生。とりあえず今回の件どうしますか?」
ジョシュアは、一応自分がやったことなんで少し反省をしていた。もっと手加減をしておいた方がよかったのだろうかと。
「あぁ。一応理事会に報告する案件になりそうだな。迷惑をかけたなジョシュア。」
おそらく、ジョシュアの考えが顔に出ていたのか、マイクはジョシュアに頭を下げた。
「いえ、師匠の修行に比べたらまだまだましです。」
「ほう、それはいい師匠に巡り合えたものだな。」
「はい、ガーランドさんには感謝の念が堪えません。」
「なんだって!!ガーランドさんかよ…。そりゃつえぇわな。」
「先生はご存じなんですか?」
「あぁ、俺の師匠だ。つまりお前は俺の弟弟子ってことだな。」
「そうみたいですね。」
ジョシュアが自分の師匠がカーランドであることを告げると、マイクは目を見開いて驚いた。型をこなしていた時の既視感はこれが原因だったのかと納得していた。そして、ジョシュアが自分の弟弟子であることを知ると嬉しくなってしまった。これからがまた楽しそうだと一人喜んでいた。
「じゃあ、俺はこいつを医務室まで運ぶから、片付けと手入れの仕方を教えてやってくれ。」
「わかりました。レイアスにも手伝わせます。」
「兄さん、いきなり振らないでよ。」
「僕だけにやらせる気なのレイアス?」
「………わかったよ…。」
マイクはジョシュアとレイアスにその場を任せ、カールを医務室まで運んでいった。その運び方たるや面倒な荷物を運んでいるかのようだった。
このされたジョシュアとレイアスはクラスメートにマイクからの指示を伝え、片付け作業を行った。
生徒の中には武具を扱ったことがない者もおり、基本的な整備の仕方をジョシュアとレイアス、あと数名わかっている人に手伝ってもらって教えていった。
少し時間がかかったが、あらかた片付けも終わり教室へと戻っていった。
その列にはジョシュアの親衛隊的存在が見え隠れしていたのは気のせいではないかもしれない…
ここまでお読みいただきありがとうございます。
レイアスが常識外の存在なだけに、ジョシュアもまた常識外へ成長してしまったんですね。
あの師匠二人が絶対楽しんだに違いありません。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
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では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




