第10話 賢者は入学式に出る⑤
「は~いみんな、そろったようね。この食堂を任されているマリエールよ。ここのご飯はおいしいって評判なんだから、残したら…わかってるわね?」
マリエールから、濃厚な殺気が放たれた。先輩たちは理由を知っているだけに何ともなかったが、新入生たちはいきなりの殺気に委縮してしまった。
「はははっ、マリエールさんのいつもの洗礼だね。それじゃあ、みんな紹介するね。こちらが寮母のマリエールさん。元上級冒険者でレイドパーティーの食事担当をしていた人だよ。そして、けがを理由に引退して此処の寮母をしてくださってるんだ。ご飯は本当にうまいけど量が量だけに覚悟しておいてね。」
寮長のジャックが改めてマリエールを紹介すると殺気は一瞬にして霧散し、平穏が訪れた。
食事はセルフスタイルで、厨房前のカウンターに食券を持っていくと、交換してくれるようだ。後片付けは、食器置きの棚に置くと回収してくれるので楽といえば楽だ。
ここでもカールが騒ぎ出した。子爵子息たる自分がなぜ配膳でしなくてはいけないのかと。職員が運んで来いとずっと言い張っていた。
そこでさらにマリエールさんの登場。殺気に指向性をもたせカールピンポイントで放ったのだ。
殺気に当てられたカールはその場で失神し、倒れてしまった。
職員がカールを部屋に運ぶと、食事は再開された。
レイアス達は日替わり定食を注文し食事を開始した。ジャックの言う通り、すごくおいしく、実家で食べた味によく似ていた。二人は少し疑問に感じたが、それどころではないのだ。量が…ものすごく多かった。9歳が食べる量ではないのだ。二人はそれでも頑張って食べた。ガーランド達から、食べれるときにはきちんと食べるよう教育を受けていた二人はほぼほぼ意地で間食したのだ。
「ごじぞうざまでじだ。」
おなかをさすりながらお盆を片付けていると、マリエールが近づいてきて二人に話しかけた。
「これは驚いたね。初日から残さない生徒は珍しいんだけどね。関心関心。」
二人のお盆に残飯がないことを確認すると、感心したようにうなづいていた。
「実家の料理の味にとてもよく似ていたもので、すごく食べやすかったです。ごちそうさまでした。」
ジョシュアはマリエールに礼を述べると、自室へ帰ろうとした。
マリエールはジョシュアの答えにふと思いだしたように声をかけた。
「似た味ね…。もしかして、マリア姉さんの料理かい?」
ジョシュアはマリエールから出た名前にびっくりしてしてしまった。
レイアスもまた、マリアの名前に懐かしさを覚えた。
「どうやら当たりのようだね。マリア姉さんは元気にしてる?」
「はい、マリアにはとてもよくしてもらいました。」
ジョシュアとマリエールはマリアについて話していた。
レイアスも懐かしい名前にどこか郷愁の念を覚えていた。その表情にはどことなく喜色がうかがえるのだった。
二人はマリエールと二言三言会話をしてから自室へとむかった。
「兄さん、まさかここでマリアの名前を聞くとは思わなかったね。」
「そうだね。レイアス、ちょっとホームシックにでもなったんじゃないかい?少し寂しいそうだよ?」
レイアスはマリアを思い出し、少し寂しそうな表情を浮かべていた。
ジョシュアはそれを少しからかいながらも自身の感情についても人のことが言えないのではないかと思っていた。
それから二人は今日のあった出来事について話をしていた。
めんどくさいカールに目を付けられた可能性が高いからだ。
最悪シャロン子爵の力を借りる必要も出てくるかもと話になったが、極力頼りたくないのも実つであった。
とりあえず二人は、今後カールからの干渉については問題のない範囲で対応することに決めたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
まさかこんなところでメイド長マリアの素性が明らかに!!
って感じですが、実はマリアさん…冒険者です。
本編で明かすかどうか迷いましたが、ここで明かしちゃいましたww
本編でもそのうち出てくると思いますので、それまで頭の片隅の送らへんで熟成させておいてください。
誤字・脱字等ございましたらご報告いただけると幸いです。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




