第7話SS シノビは森で監視する
私の名は「リク」。マルコ様に使える密偵だ。
この大陸の西側に位置する「飛鳥の国」の更に西側に位置する島国「大和」の出身だ。
私はその地で【シノビ】として育てられた。
そんな私にも若気の至りというものがあった。
ある時、大陸中央に存在する「ダイダルシア帝国」へと諜報のため侵入していた。
腕に自信があった私は、帝国の裏側を調査していたのだ。
調査中に任務に失敗し、敵方から追っ手を向けられてしまった。
私は西に逃れることができないと考え、進路を北に向けて逃走を開始した。
しばらくすると追っ手が来なくなり、私はそのままメデス王国へと逃れた。
少しでも遠くへと思い、最北端の地を目指して進んでいった。
だが、私は道半ばで力尽きてしまった。
私が気が付いたのは見知らぬ天井の建物だった。
ぼろ屋ではなく、貴族の建物といっても過言ではない部屋だった。
私が意識を取り戻したことに気が付いた男性はその場を別のものに任せ、どこかへ行ってしまった。
私は体を動かそうとしたが、何故か動かなかった。拘束されているわけではなさそうなので、体力が著しく低下していることがうかがえた。
しばらくして、初老の男性が姿を現した。
その方こそが領主のマルコ様だ。
マルコ様は元王国騎士団副団長で今はレガスティア騎士爵領で領主をされていた。
マルコ様は寄り親であるアルト・フォン・シャロン子爵の屋敷からの帰り道に私が倒れているのを発見し連れ帰ってくれたらしいのだ。
見ず知らずの私を助けるなど、貴族としてあるまじき行為であるにもかかわらずだ。
命を救われた私は、ここに至るまでの経緯を説明した。
マルコ様は「そうか、大変だったんだね。」とだけ言うと、執事と思しき男性に何かをささやき相談をしていた。
私の処遇についてであろう…。私はその時死を覚悟していた。【シノビ】として生きてきた私にとってそれは当たり前だからだ。
しかし、マルコ様よりいただいた言葉は違った。配下へとくわえてくださると…
私はあり得ないと思った。私は任務に失敗した落伍者だ。それ何に私を拾い上げる…ありえない…。
私には自室が与えられた。任務は簡単だ…密偵である。
私はわけがわからなかった。ずっと「なぜ?」という感情が渦巻いていた。
その後、私はマルコ様の密偵として王国各地を回った。ほかの密偵の仲間たちとともに情報を集めていた。仲間からも信頼されるようになると、ついには密偵頭となってしまった。
ある時マルコ様より呼び出しがあった。またどこかの領地を探るのだろうか?
しかし、言い渡されたのはご子息方の監視と護衛であった。どうやら、修行のために森へと行かれるとのこと。
任務を受諾した私はすぐに動いた。
指南役のガーランド殿との打ち合わせを行い、私たちは森へと移動した。
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報告書
一日目
ご子息方はガーランド殿の大方の予想通り行動。洞窟を発見し拠点とした。
その際、一点懸念事項が発生。
洞窟内にレッドグリズリーの存在を確認。
以後、監視対象へ追加。
二日目
ご子息方は順調に行動を開始。
本日は食料調達と水の確保に動く模様。
なお、懸念事項について。おそらくこちらの行動について感づかれている可能性がある。
以後の行動に細心の注意を払うこととした。
ご子息方は順調に行動を行っている。
フォレストボアの討伐に成功。
フォレストボアは魔獣化が進んでおらず、食料の確保に成功した模様。
その後ゴブリンを発見。こちらも問題なく対応できたが、少し無策に思える。
ゴブリン討伐後、フォレストウルフ3匹と遭遇。
うまく立ち回り健闘するも押し切れず。
のち、懸念事項のレッドグリズリーが乱入。
ご子息と何か話している様子はうかがえるが、何かを話していた模様。
レッドグリズリーの活躍によりフォレストウルフが退散。
ご子息方はそのまま洞窟へと引き返す。
なお、おそらく懸念事項のレッドグリズリーに気付かれた模様。
警戒を密とする。
三日目
ご子息方は食料・水分確保のため洞窟を後にする。
その後、懸念事項のレッドグリズリーよりコンタクトあり。
レッドグリズリーは魔獣ではあるが知性を持っていた。おそらくペルソナの可能性がある。
レッドグリズリーを今後「熊さん」と呼称。
「熊さん」により、森での安全を確保する提案を受ける。。
「熊さん」より、交換条件を提示される。
内容は『パートナー(雌熊)の探索』。
「熊さん」のケガはどうやら夫婦喧嘩だった模様。
私は思わず「熊さん」と意気投合してしまった。密偵としてあるまじき行為であることをここに記する。
「熊さん」と別れ、監視を再開。
フォレストウルフ2匹を討伐するも、魔獣化が完了しており食料調達はならなかった。
時間いっぱいまで探索するも収穫はなく、そのまま洞窟へ帰還。
四日目
ご子息方は前日と同じように探索を開始。洞窟を後にする。
またも、「熊さん」より念話。
情報交換ののち、再度監視を続ける。
グレーグリズリーと遭遇。これを問題なく討伐した模様。
本日は迂回しながら洞窟へ戻るとのこと。
道中、ゴブリン4匹と遭遇。これを相手にはせず回避する模様。
幾分冷静な判断力が残っていた模様。
迂回時に前方より煙を発見。私のほうでも煙を視認。
ゴブリンの集落形成が予測される。
監視を続行。
数刻後、ご子息方は行動開始。
どうやら、集落を強襲する模様。
すこしの時間差で戦闘開始。
私たちも散開し集落を取り囲む。
ご子息方の状況を確認し、問題ないと判断。このまま監視を継続。
問題発生、おそらく進化種と思われる個体を確認。
これにより介入を決断し、監視を終了とする。
「熊さん」より念話。
「熊さん」が戦闘へ介入するとのこと。
私たちは、集落周辺で待機。帰還するであろう残党の警戒に当たる。
「熊さん」の介入により戦闘は終了。
ガーランド殿の到着により、監視活動を終了とする。
集落より少し離れた場所に「熊さん」を確認。コンタクトをとる。
「熊さん」に我々の帰還を告げる。
「熊さん」は無事パートナーと合流できた模様。
これにて任務完了とする。
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報告書を受け取ったマルコ様は何故か苦笑いを浮かべていた。
私は報告書の提出を終えると執務室を後にした。
後日、森へ行くと「熊さん」の姿は確認できなかった。
おそらく森の奥に進んだのであろうと推測される。
私は「リク」。マルコ様の密偵である。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は第三者の視点で森での出来事を整理してみました。
本編では掻き切れなかったことなどサイドストーリーとして書いていきますので、よろしくお願いします。
感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。
では、次回をお楽しみください。
※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。




