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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
幼少期編
63/103

第7話 賢者は森で修行する 事後処理④

 二人が目を覚ましてから二日後、二人は中庭に呼び出されていた。


「呼び出して悪い。二人とも、体の調子はどうだ?」


 ガーランドは二人の体を気遣っていた。

 二人もまた、ガーランド気遣いに頭を下げた。


「はい、僕は体力だけの消費ですみましたので、回復ポーションであらかた回復はできました。」

「僕は…魔力欠乏症をなめていました。いまだに本調子とは言えないですね。」


 ジョシュアは特に問題が内容で、少し体を動かして見せた。

 レイアスはいまだ回復しきれておらず、体のだるさを訴えた。


「そうね。レイアス君は身をもって体験できたって事かしら?」


 セシリーもまた魔力欠乏症を体験しており、そのつらさを理解していた。


「そうですね。二度と同じことはしません。というより…魔力欠乏症はかなり危険ですね。」

「よし、では二人にはまず今回の森での出来事を総括してもらう。」


 レイアスは宣言通り、本当に魔力欠乏症について後悔していた。そして、二度とそうならないよう心に誓ったのだった。


 二人の体の状況を確認し終えたガーランドは、今回の修行のついての聞き取りを開始した。


 二人は初日からのできごとを、順序だてて伝えていった。自分たちが何を思い、何を考え、どう行動していったのか。

 二人の話がゴブリンの集落へと差し掛かる。二人の表情は次第に曇っていった。二人とも十分に後悔をしたのであろうことが見て取れた。



 一通り話し終えた二人は、とても悔しそうな表情をしていた。自分たちの実力の無さをこの修行を通して、思い知らされる形となったからだ。

 レイアスは意を決したようにガーランド達を見据えた。


「師匠…僕を…僕をもっと強くしてください!!もう、これ以上後悔しないように!!」


 レイアスの叫びにジョシュアも意を決した。


「僕も…僕も強くなりたいです!!」


 二人の決意にガーランドは驚きを隠せなかった。正直心が折れてしまうのではないかと危惧していたのだ。

 セシリーもまた、ガーランド同様だった。それでもなお、こちらを真剣なまなざしで見つめる二人に思わず吹き出してしまった。


「ご、ごめんなさい。二人をばかにしたわけじゃないのよ。私があまりにも心配しすぎていたんだって思ってね…。二人とも、強くなったわね。」


 セシリーは感心すると同時に彼らを『8歳だから』と侮っていたことを理解した。


「強くなんてないです…。」

「はい。僕たちはまだまだ弱いです。だから強くなりたいんです。」


 二人はセリシーから強いと言われても納得できなかった。それほどまでにゴブリンの集落の件について後悔をしていたのである。


「違うわ。心が強くなったってこと。うん、これなら大丈夫そうね。ガーランド?」

「あぁ。問題ないだろう。」


 セシリーはガーランドにこの先を促した。

 ガーランドもまた、二人の心持を理解し肯定した。


「二人とも、今回の修行は…合格だ。」

「「え?」」


 ガーランドの言葉に二人は目を丸くした。てっきり不合格であると思っていたからだ。


「何を呆けている?合格だといったんだ。」

「「………。」」


 二人の顔には困惑の色が見て取れた。頭がついてこないのか先の言葉が出てこなかったのだ。

 二人は顔を見合わせながら考え続けた。「なぜ?」と


「確かに反省すべき点は多々ある。だがな、お前たちは私たちが用意した試練をきちんと達成してきているんだ。」

「試練?」


 ガーランドは今回の森での修行の趣旨の説明を始めた。

 二人はあっけにとられながらもその説明に耳を傾けた。


「そうだ。サバイバルが始まったとき〈不安〉に思わなかったか?」

「はい…」


 確かに開始直後、緊張と高揚によりテンションが上がっていった。しかし、次第にやっていけるのかと、内心すぐに救難信号を出そうかと思ってしまっていたのも事実だった。


「次にだんだんと、自分自身や周りに疑い、〈疑心暗鬼〉にならなかったか?」

「確かに…」


 これでいいのか?これが正解なのか?このまま進んでいいのか?戦っていいのか?行ける!!でも…

 いろいろな感情や思考が行動を阻害していった。


「それが今度は、この先について漠然と〈恐怖〉を感じたのではないか?」

「………。」


 獣や魔獣、魔物と戦闘するたびに、一つ行動するたびに心が折れそうになっていった。そして四日目の出来事…


「その状態で、あの集落を目撃してしまった。だからかなり焦ったはずだ。判断を間違うほどに。」

「その通りです。」


 本当は、救難信号の後、あの場で待機し師匠達とともに救助に向かうべきだった。それが正解だと、今は思える。


「だが、最後に自分たちだけで成し遂げた。だから合格なんだ。」

「僕たちだけではないです…」

「あそこに熊さんが来てくれなかったら、僕たちは負けていました…死んでいたんです…。」


 ガーランドの言葉を二人は否定した。自分たちだけでは乗り越えられなかったと。


「そうだな、その熊さんとやらについては報告書を読んだ。魔獣なのに理性がある。即に言うペルソナと呼ばれる個体だ。その熊さんに助けられたとは言え、ゴブリンの集落で討伐数30とはありえない数字なんだよ。特にホブゴブリンと思われる進化種もいたからな。初級冒険者パーティーの寄せ集めでは無謀。中級冒険者パーティー二組で適正。上級冒険者でやっと単独だ。」


 ガーランドは二人の功績を称えた。それはあり得ないことなのだと説明をしてくれたのだ。


「つまりはね、あなた達二人で討伐するのはあり得ない状況だったってことよ。だから誇りなさい。自分たちが何を成し遂げたのか。何を守ったのか。」

「はい…。」


 セシリーの言葉にやっと心がついてきた…


「よく頑張ったわね。師匠としてうれしいわ。」

「「はい…。」」


 セシリーの労いに安堵があふれた…

 二人の目には涙が浮かんでいた…

 二人はずっと後悔していたのだ…自分たちの無謀な行動について…


「それでだ、二人に話すことがある。」

「そこからは私の番だ。」


 ガーランドは何か告げようとしたとき、マルコが近づいてきた。


「二人とも、合格おめでとう。」

「はいっ!!」


 マルコは二人にねぎらいの言葉をかけた。

 二人は父からの労いに心が温かくなるのを感じた。


「そんな二人にご褒美だ。」

「これは?」


 マルコはそういうと二人に、それぞれ二冊の本を渡してきた。

 二人はその本を受け取り中身を確認していった。


「それはね、王立学院初等部の入学願書とパンフレットだ。」

「「え?」」


 マルコの言葉は二人にとって驚きだった。本人たちは寄り親であるロイス・フォン・ガリウス辺境伯領の学園への入学を考えていたからである。

 マルコから渡されたのは王立学院…それは王都にある名門校なのである。


「そこは私の出身校でもあってね。半年後の来年から通ってもらうからそのつもりでいること。いいね?」


 マルコの話を二人はまだ理解しきれていないのか、固まってしまっていた。


「そうゆうわけだ。今回の件でお前たち二人は実技では問題ないだろう。だから、明日からは座学中心となる。午前と午後で座学。夕方に実技という形をとる。」

「よろしくね二人とも。体を休めると思ってあと半年頑張りましょう。」


 師匠達はこのことを知らされていたため、二人に今後の予定を告げたのだった。


「はい!!」


 やっと事態を飲み込んだレイアスは元気よく返事をしたのだった。ジョシュアはというと、パンフレットを見ながら目を輝かせていた。

 レイアスは、マルコに今一番気になっていることを確認した。


「そうだ父上。あの女性たちはどうなったんでしょうか?」

「彼女たちは無事家に帰ったよ。彼女たちの中には冒険者もいたんだけど、ほとんどが引退をするそうだ。数名、一緒に活動する人たちもいるようだが、男は信用できないと息巻いていたよ。」


 マルコは女性たちの現状をかいつまんで説明した。


「そうですか…ちゃんと助けられたんですね…よかった…」

「レイアス…」


 レイアスは、それを聞いて目に涙を浮かべた。

 ジョシュアもまた、それを見て目に涙を浮かべたのだった。


「二人とも、明日から忙しくなる。師匠からきちんと学ぶように。いいね?」

「はい!!」


 こうして、二人は入学の準備を始めることとなった。

 この先、二人にはいろいろな出会いと別れが訪れるであろう。

 二人の成長を静かに見守ろうと心に誓ったマルコなのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


久しぶりに長くなってしまいました。

ですが、二人の成長や、今後について書かねばならないので、ここまで伸びてしまいました。


感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。


では、次回をお楽しみください。


※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。

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