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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
幼少期編
58/103

第7話 賢者は森で修行する 四日目 戦いを終えて

 ガーランド達の気配を感じた熊は座った状態から、体を起こし入り口の方角を見つめた。


「『ふむ、誰かがこちらへ向かってきているな。』」

「たぶん、師匠達です。」


 レイアスもまた、ガーランド達の気配に気が付き、熊に答えた。


「『師匠とな。おぬしたちを鍛えた者どもか…』」

「そうですね。見えました。」


 ほどなくして、レイアスの目にはガーランド達の姿が捕らえられたのであった。



「師匠、すいません。修行を完遂できませんでした。」


 いまだ、魔力欠乏症によって体を起こせないレイアスは、ガーランド達に就業中断についてわびた。


「とりあえず何があったか教えてくれないか?それにジョシュアの姿も見えない。どこにいるんだ?」


 ジョシュアの所在を確かめたガーランドに対し、洞窟の入り口を指し示してレイアスは答えた。


「はい、ジョシュアはあそこの洞窟の中です。人の気配がしたので救出に向かったはずです。」

「おいだれか。数人で洞窟を確認してくれ。要救助者もいるはずだ。」

「「「はっ!!」」」


 ガーランドは周辺警戒に当たっていた騎士数名に、洞窟内への侵入を指示し、救出作業を命令した。

 レイアスは、まだ女性が隠れていることを告げ、保護してほしいと願い出た。


「それと、そこの家にも一名隠れてもらってます。」

「セシリー、見て来てもらえるか?」

「わかったは…」


 セシリーはレイアスが示したほうに有る建物に向かって歩き始める。おそらく状況を理解してしまったであろうセシリーの表情はとても暗いものだった。


「残りは周辺警戒を頼む!!」

「「「はっ!!」」」


 ガーランドは残党が戻ってくることを警戒し残りの騎士に周辺警戒の指示を出した。


「とりあえず無事でよかった…。それにしてもボロボロじゃないか…。」

「はい…。ゴブリンの集落を発見したんです。」


 ガーランドは横になっているレイアスのそばに腰を下ろし、レイアスの状態を確認した。

 レイアスは、この事態のいきさつを話し始めた。

 ガーランドは一度話を止め、レイアスに魔力ポーションを手渡した。


「話はあとだ、まずはこれを飲め。」

「はい。」


 レイアスは、渡された魔力ポーションを飲み干した。


「ごほっ!!」

「無理に話さなくてもいい。ゆっくり話せ。」


 慌てて飲んだためかレイアスはせき込んでしまった。

 そんな姿のレイアスを見たガーランドの顔には後悔がうかがい知れた。

 レイアスは少し回復したようで、ぽつりぽつりと話し始めた


「はい…。師匠達に救難信号を…出した後に…」


「女性が引きずられていくのを発見して…」


「そのままに…できなかったんです…」


 レイアスの目には涙が浮かんでいた。それは悔し涙なのか、無理をした後悔なのか…自分自身にもわからなかった。


「この大バカ者!!!!!!」


 ガーランドは心の底から叫んだ。レイアスの今まで聞いたことのない怒声だった。周辺警戒していた騎士たちも一瞬硬直してしまうほどの剣幕であった。


「お前たちが死んでは元も子もないことなんだぞ!!どうして俺たちを待てなかった!!」

「す、すいません…」


 ガーランドの怒声は二人を心から心配してのものだった。しかし、少しやりすぎたと反省したガーランドは一度咳払いし、レイアスを諭し始めた。


「前に教えたはずだ、きちんと敵戦力を確認し、勝てる準備をして、勝つべくして勝つ。それが戦争だと。偶発的遭遇戦の場合は違うが、今回の場合はきちんと準備をして戦うべき状況だったはずだ…。」

「はい…すいません…」


 ガーランドの言っていることは正しい。レイアスもまた、本来はそうするべきであると、今なら理解できる。でも…それでもレイアスは戦いを選んでしまった。


「だが…お前たちの気持ちもわからないでもない…。そこにいて、力があって、助けられそうだ…。だったら動くよな…男だから…。」

「師匠…。」


 ガーランドからの独白にレイアスは目を見開いて驚いた。ガーランドもまた、同じだったからだ。


「なんいせよ、お前たちが無事でよかった…」


 ガーランドは、心の底からほっとしたのか、若干目に涙を浮かべていた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


二人が無事生き残った安堵感と、師匠二人の安堵感を描けていたらうれしいです。


感想・評価・ブクマいただけると作者は頑張れます。


では、次回をお楽しみください。


※ほかにもちょい読みシリーズ他作品掲載中です。頑張って毎日掲載しています。

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