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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
幼少期編
53/103

第7話 賢者は森で修行する 四日目⑤

 ジョシュアの指摘にレイアスは少しだけ踏みとどまった。しかし、レイアスの助けたいという気持ちは、それでもなお強くなっていった。


「でも僕は…!!」

「………。しかたないね。それがレイアスだもの。」


 レイアスの感情はジョシュアも痛いほどわかった。なぜならばジョシュアもまた同じ気持ちだからだ。


「兄さん…。」


 ジョシュアの意外な答えに拍子抜けしてしまったレイアスは、一瞬ではあるが怒りから解放されたのであった。

 普段であれば、これほどまでに怒りを感じることは無かったであろう。しかし、この修行のせいか、精神がかなりすり減り、冷静な判断ができなくなってきていたのである。


「まずは救難信号をだそう。そして…これを外そう…。たぶん師匠に怒られるけどね。」

「うん!!」


 ジョシュアは救難信号を出すと、自身の左腕にはめられた腕輪をなでる。

 その言葉の意味に気が付いたレイアスは力いっぱい頷いたのである。


 二人がつけている腕輪は『制御の腕輪』と呼ばれるものであり、幼くして力を持ってしまった子供が制御不可になることを抑制するための魔道具である。これを装着すると、すべての能力が5割ほど低下し、本来の力が出せなくなるのである。

 ちなみに、二人とも問題なく力の制御ができるため、装着する必要はないのである。しかし、修行の一環としてわざとつけたままにさせられていたのである。


「軽いね…」

「そうだね、いつもおもりを付けてる感じだったからね。」


 腕輪を外した二人は、その場で体の間隔を確かめた。体の動きのズレについて修正を始めた。


「大体5割減だっけ?師匠達も意外と鬼畜だよね。」

「僕は何も言ってないよ?あとで師匠達に伝えとくね?」

「兄さんずるいよそれ!!」


 ジョシュアは、レイアスが皮肉を言っているのを聞いて、冗談で答えた。それほどまでにレイアスからは気負いが感じられていたのである。

 ジョシュアの冗談により、レイアスから感じられていた無駄な気負いも無くなった。

 二人はこの後の行動について相談を始めた。


「行く前に魔法スキルの【遅延発動】を使っておくよ。」


 魔法スキル【遅延発動】は【詠唱】を完了させた魔法を発動待機状態にして自身の周囲にストックすることができるものである。上位の魔法使いであれば100以上の魔法を待機状態にでき、即時発動も可能である。


「今は何個魔法をストックできるの?」

「今なら10ってことかな。あとは発動時に【拡散発動】をかけて、全体に当てるようにするよ。」


 魔法スキル【拡散発動】は、魔法使いが魔法発動の際、認識した相手に分割して充てるスキルである。分割する数によって威力は当分されていくため、使いどころが難しい技術でもある。


「でも【拡散発動】は威力下がるでしょ?」

「そうだね、そのために少し無理をしようと思う。ストックをするときに一緒に【多重詠唱】をかけて威力を上げておくよ。」


 魔法スキル【多重詠唱】は、一人で数人分の【詠唱】を魔力によって行うスキルである。これによって威力は数倍まで引き上げることができるが、これを習得することは長い年月が必要とされる。それだけレイアスの才能は抜きんでていることがうかがえる。


「魔力持たないんじゃない?」

「そこは魔法ポーションの出番だよ。」

「じゃあ、準備に取り掛かろう。僕は周辺警戒をしておくよ。」


 ジョシュアが警戒態勢に入ったのを確認したレイアスは、魔法の準備を始めた。


「【多重詠唱】、【遅延発動】」


≪我望むは火炎の力。矢を成して彼の者を射抜け≫


「【ファイアアロー】!!」


 魔法は発動されず、魔力を帯びた炎の塊がレイアスの周りをふよふよと浮いていた。


「よしうまくいった。」


 うまくいったことにガッツポーズをして喜ぶレイアスに対し、ジョシュアは不思議そうに火の塊を見ていた。


「いつ見ても不思議な光景だよね?火の塊がふよふよ浮いてるんだから。」


 レイアスは気合を入れて【詠唱】を再開したのである。


「あと、9回!!」


 しばし時間がたったことレイアスが準備完了であることを告げる。


「準備完了!!行こう兄さん!!」

「わかった行こう!!」


ここまでお読みいただきありがとうございます。


戦闘準備~~~~~~~はじめ!!

ってな感じで、ついに決意したふたり。

スキル説明が多くなり流れが渋滞した感が否めない回になってしまいました。

後日、スキル、魔法、武技に関するまとめを作ろうかと画策しております。


誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです。


では、次回をお楽しみください。


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