第7話 賢者は森で修行する 四日目④
野草採取のため少しだけ回り道をしていた二人の前に、ゴブリンが姿を現した。
二人としては倒せなくはないが、熊肉を持っているために戦闘を回避するか迷っていたのであった。
「レイアス…ゴブリンだ…」
「ほんとだ、4匹?かな?」
「そうだね…迂回していこうっか?」
「それがよさそうだね…」
ゴブリンに気付かれないように風下を回って迂回していること、レイアスは前方に何かあることに気が付いた。
「あれ?兄さん向こう…ゴブリンたちが向かう方向に煙が見えない?」
それは、のろしのような煙が立ち上っていたのである。
「え?この辺に村とか開拓地なかったはずだよ?」
「じゃあ、まさか…集落…?」
ジョシュアは領地内の村や町の位置関係を記憶から引っ張り出した。しかし、今いる森にそのようなものがあった記憶がない。
レイアスもまた、嫌な予感がしてきた。考えたくはない事態だった。
「可能性が高いね…でも、冒険者とかでこの辺もつぶしてるはずだったんだけど…」
「つまり、この辺を担当してる冒険者がさぼってたっとことかな?」
「たぶんね。」
二人の意見は一致した。おそらくゴブリンの集落が出来上がっているのであろうと。これは見過ごせない事態であった。
ゴブリンはとてつもなく繁殖力が強く、一匹見たら五匹はいると思えと言われるほどである。そのゴブリンが集落を形成する。すなわち、統率する上位種が現れたに他ならないのである。
そうならないために冒険者ギルドでは、ゴブリンおよびオークの討伐は常設依頼として取り扱っているのである。しかも、討伐実績が少なくなると、ギルド職員が出向き間引きを行う徹底ぶりである。
つまり、今回の集落形成は冒険者ギルドの怠慢が原因なのである。
「様子だけ見て、離れた場所から救難信号で師匠達に知らせよう。」
「それが一番だね。今回の修行は不合格かな。」
「仕方ないよ。これで暴走されたらそれどころじゃないし。」
「まずは偵察を開始しよう。」
二人は、これ以上被害が広がらないためにも修行の継続を諦めて、偵察後救難信号を出すことにしたのであった。
集落が見下ろせる高台まで慎重に進んだ二人は、その集落の規模に驚いてしまった。予想では10匹程度だと考えていたからである。
「兄さん…結構大きい集落だよ。」
「そうだね、僕が感じる限り大体30匹前後だ。」
二人の手には汗が噴き出していた。あまりの規模に臆してしまったのである。
「やばいね…数日中に100匹超える大集落になるかもしれないね。」
「すぐ離脱して、救難信号を出そう。」
二人はその場を一時離脱し、救難信号を出そうと移動し始めた…
その時だった、レイアスは集落出入口にいるゴブリンに違和感を感じたのである。
「わかった…え?」
レイアスはその違和感を理解してしまった。そしてその表情には怒りがにじみ出ていた。
「どうしたのレイアス?!」
レイアスの異変に気が付いたジョシュアは慌てて駆け寄った。
「兄さん見て…人だ…」
「本当だ…引きずってたのは人だったんだ…」
ジョシュアもまた何かを引きづっているのには気が付いていた。しかしそれが人であることまでは気が付かなかったのである。
「女性だ…」
レイアスの手は震えていた。握りこんだ手からは血がにじみ出ていた。
「急いで救難信号を出そう!!」
「そう…だね…」
ジョシュアは離脱するより救難信号を出すことを優先した。
「師匠達ここまでどのくらいで来るかな?」
「スタート地点から半日くらいは離れてるから…早くても6時間…師匠達なら3時間ってことかな。」
レイアスの問いにジョシュアはハッとしながら答えた。ジョシュアもまたその答えに至ったのである。
「兄さん…その間あの人は…どうなるの?」
「わからない…」
レイアスの問いは続いていく。その声は怒りを抑えるのに必死だった。少しでも気を抜くとすぐにでも駆け出してしまいそうになる…
レイアスの問いにジョシュアは答えられなかった。いや、答えを否定したくてもできなかったのだ。
「兄さん…僕は…僕は!!」
「抑えてレイアス。僕らだけだと戦えない。」
ジョシュアは今にでも飛び出しそうなレイアスを抑え込み、冷静になるよう促した。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに本話の山場がやってまいりました。
作者の技量不足で伝わらない戦闘シーンについては皆様の脳内で頑張って保管してください( ;∀;)
他力本願…
誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです。
では、次回をお楽しみください。




