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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
幼少期編
51/103

第7話 賢者は森で修行する 四日目③

 まずは先制攻撃のため、レイアスが【詠唱】を開始した。


≪我望むは水の力。矢を成して彼の者を射抜け≫


 【詠唱】が進むにつて魔法が形成されていく。ジョシュアはいつ見ても不思議な光景だと思った。


「【ウォーターアロー】!!」


 レイアスが魔法を発動させると、水の矢は勢いよくグレーグリズリー向かって飛んでいった。

 グレーグリズリーはまだ気づいておらず、のんびりとしていた。


「ぎゃう?!ぎゃお~~~!!」


 グレーグリズリーは何が起きたかわからなかった。突然痛みに襲われて、自身の体に傷がついていたのである。

 周囲を見回しレイアス達に気付いたグレーグリズリーは、威嚇とともに咆哮を上げるのだった。


「ぐぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~!!ごがぁ~~~~~~~~~!!」


 この咆哮を皮切りに戦闘が開始された。

 レイアスは打ち合わせ通り、ジョシュアにバフを付与した。


「兄さん、行くよ!!」


≪我望むは速さなり。≫


「【スピードアップ】!!」


 魔法が放たれるとジョシュアに変化が訪れた。


「よし!!【ミラージュステップ】!!」


 ジョシュアの一歩が、今までになく鋭いものへと変化していたのである。ジョシュアのスキルとの併用により、グレーグリズリーはジョシュアをとらえきれず、振るわれた爪は空を切るばかりであった。


「次だ兄さん!!」


≪我望むは切り裂く力なり。≫


「【カットアップ】!!」


 魔法が付与されたジョシュアは、躊躇なくグレーグリズリーの懐へ飛び込んでいった。その一歩は凄まじいもので、速度についていけていないグレーグリズリーは、驚きのあまり一瞬硬直してしまったのである。


「まずは一当て!!」      

「【スラッシュ】!!」


 気合とともに放たれた一閃は、今までの剣撃よりも鋭い一撃となった。

 一撃を当てたジョシュアは、念のため距離をとった。

 案の定、怒り狂ったグレーグリズリーは、その場で暴れ始めた。それは、狙いすました一撃ではなく、ただただ怒りのまま暴れまわっているだけだった。


「おっと?!まだまだ元気だね!!」


 グレーグリズリーの攻撃を油断なく見据えたジョシュアは、華麗な足さばきで躱していった。

 グレーグリズリーは、自身の攻撃が当たらないことにイラつきだしたようで、さらに攻撃は大振りとなっていく。


「こっちだうすのろ!!」

「【ファントムスロー】!!」


 大目に距離ととったジョシュアは、グレーグリズリーの目に狙いを定めて、持っていたナイフを投げつけた。

 【ファントムスロー】は縦一直線に2本のナイフを投げるスキルで、一本目を払い落としてグレーグリズリーの左目に、後から飛んできたナイフがきれいに深く刺さったのである。


「ぐぎゃ~~~~!!」


 あまりの痛みにもだえ苦しむグレーグリズリー。その姿を見ても油断なく構える二人だったが、少し攻めあぐねていた。ナイフが目に刺さった以外で目立ったダメージをまだ与えられていなかったのである。


「グルルルルるるぅぅぅ~~~~!!」


 目にナイフが刺さったままのグレーグリズリーは、二人をにらみ威嚇を続けていた。おそらくだが、グレーグリズリーのプライドに傷をつけてしまったらしい。

 グレーグリズリーの体毛が徐々に赤みを帯びてきたのである。おそらくは怒りのために魔獣化が加速していったのである。


 ジョシュアの攻撃は、ことごとく堅い毛皮に阻まれてしまっていた。あまりの堅さにジョシュアはいら立ちを感じ始めていた。


「だめだ、レイアス。あいつの毛皮がなぜか堅い!!たぶん魔獣化が進んでいるかも!!」

「どうせ毛皮捨てちゃうし、いっそ燃やそう!!」

「レイアスに任せる!!」


 レイアス達は、肉以外いらないと割り切り攻撃方法を変えていくこととした。


≪我望むは火炎の力。矢を成して彼の者を射抜け≫


「【ファイアアロー】!!」


 レイアスが魔法を放つと、直撃したグレーグリズリーの体は炎を上げて燃え始めた。その炎は消えることなく燃え続けていた。


「ごあ?!がああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 直撃を許したグレーグリズリーは、地面を転げまわり自身についた炎を消しにかかっていた。

 その隙を逃さないためにもレイアス達は行動を再開した。


「よし、いまだ!!」


 レイアスは、ジョシュアに向けて付与魔法を開始した。


≪我望むは力なり。≫


「【アタックアップ】!!」


「これで最後だ!!!!」

「【スピア】!!」


 ジョシュアは、付与魔法で攻撃力が増した渾身の一撃を、グレーグリズリーに解き放った。

 その一撃は、ジョシュアの中でも会心の出来といっていいほどの見事な一撃であった。


「倒せたね兄さん。」

「何とか…ね。」


 二人は、強敵を倒せたことにとてもうれしく思っていた。

 グレーグリズリーとの戦闘を終えた二人は肩の力を抜いた。

 しかし、この修行が始まってからの事を考えると余韻に浸っている場合ではないと考えていた。

 その為、周辺警戒はいまだ怠ってはいない。


「待って兄さん!!」

「どうしたのレイアス?」


 ジョシュアは、自身のショートソードがグレーグリズリーの脳天に刺さっていたため、抜こうとした。前回の失敗を忘れてしまっているかの如く。それほどまでに精神的に消耗を始めていたのである。

 レイアスは慌ててジョシュアの腕を抑え、抜けないようにしたのだった。


「抜いちゃだめだ…」

「あ…危なかった…」


 レイアスの行動で、自分がまた失敗するところだったことに気が付いたジョシュアは、背中に冷や汗を流したのであった。


「とりあえず、そばの地面に穴開けるから首から血を抜こう。」


 レイアスはグレーグリズリーの首元に大きめな穴をかけ血抜きの準備を始めた。

 しばらくして、それなりの穴ができたので、血抜きを始めた。


「これで大丈夫なはず…抜いてみて兄さん。」

「大丈夫だったね。危うく血まみれになるところだったよ。」


 ある程度血抜きが終わった段階で、ジョシュアはショートソードを抜き取った。血抜きをしたおかげた、血を浴びることは無かった。


「でも…解体で血みどろだけどね。」


 レイアスは結果血みどろになるんだ思い一人ごちるのだった。


「今回も肉以外は廃棄かな?」

「そうだね、持って帰れないから仕方ないかな?」

「じゃあ、さっさとやっちゃおっか。」


 二人は急いで解体用の台を作成し、グレーグリズリーを吊り上げた。グレーグリズリーは体長3mを超えるサイズであったため、吊り上げるのにだいぶ時間を使ってしまった。

 解体は難なく進み、体内の魔石以外の内臓、骨、皮は穴に埋め燃やしたのであった。


「解体完了かな?」

「結構な肉の量になったね。こりゃ一回戻らないとだめだね。」


 二人は解体で出た肉がそれなりの量になっていることに驚き、どうしたものかと考えていた。


「北側探索はこれで終了かな?」

「そうだね、少し遠回りしながら洞窟へ戻ろう。」


 レイアスの提案にジョシュアは頷いて、今回の探索は終了となったのである。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


今回はグレーグリズリーとの戦闘だったために珍しく長くなりました。

半分に分割を考えましたが、流れをとる場所が見つからず一本にしました。

戦いを伝える技量不足に真面目に涙しました。


誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです。


では、次回をお楽しみください。

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