第7話 賢者は森で修行する 三日目③
フォレストウルフとの戦闘の後、二人は森の探索を続けた。
野草は見つかるものの、肝心のイノシシが見つからなかったのである。
途中ゴブリンを見つけたが、日が傾いてきており、食料調達を優先するため迂回して戦闘を回避した。
「くそ…今日はイノシシがいない…。」
「昨日の残りの肉は、今日の夜で食べ終わるから…さすがにまずいね…」
レイアスは、徐々にイラつき始め、悪態をつくのだった。
ジョシュアも普段なら諫めるところを、それすらできないほどに焦りがうかがえた。
二人は知らず知らずに、この試練の罠にはまり始めていた。
「でも、日が落ち始めたし、これ以上は無理だよね。」
「レイアス、帰ろう。夜ご飯を半分にして明日の朝に回そう。明日は魔物は無視して食糧確保に動こう。」
「そうだね。戻ろう。」
二人は、何とか焦りを抑え岐路についた。もしこのまま探索を続けた場合、洞窟へ戻るころには周辺が闇に包まれ、魔獣・魔物からの襲撃による危険度が増していた。二人は辛うじて冷静さを残していたことがいい方向へと転がったのであった。
何とか明るいうちに洞窟へ戻った二人だった。
そこに熊が出迎えをしてくれたのである。
「あ、熊さん!!」
熊を見つけた二人は、思わず熊に駆け寄っていた。
熊は二人を見て、咥えていた物を二人に渡した。
「『二人とも戻ったようだな。二人に馳走だ。』」
「え?ウサギ?」
渡されたものを見て、二人は驚いた。まだ温かさの残るウサギだったのだ。
「『うむ、とりすぎてしまったのでな。二人にやろうと思ってな。』」
「ありがとう熊さん!!」
「レイアス?!」
熊は少し照れながら、二人にウサギを渡した経緯を説明した。
そんな熊の行動に、食糧を諦めていたレイアスは、思わず抱き着いてしまったのだ。レイアスを見たジョシュアは、驚きながらも自身の抱き着きたい衝動を必死に我慢したのだった。
「『なに、気にするでない。私はまた奥にいるのでな。』」
そう言うと熊は、洞窟の奥へと入っていった。
レイアスはついでとばかりに熊を呼び止め質問をした。
「そうだ、熊さん。この近くに岩塩とかない?」
「『ガンエン?とはなんだ?』」
熊は、ガンエンついて知識を持ち合わせていなかったようだ。どのような物か、レイアスに尋ねた。
「う~んと、しょっぱい石みたいなの?で合ってるかなかな、兄さん?」
「うん、それでたぶんあってると思うよ?」
レイアスは自信なさげに答え、ジョシュアにフォローを求めた。
ジョシュアも説明的に問題はないかなと思い肯定した。
その答えを聞いた熊は、少し記憶をたどった後、思い出したかのように答えた。
「『それならば、この洞窟の奥に転がっておるぞ?』」
「「ほんと!!!!」」
二人はまさかこの洞窟内にあるとは思わず、驚きを現したのだった。
「『ついてくるがいい。』」
そう言うと熊は、のっしのっしと洞窟内に入っていく。
洞窟内は暗く、レイアスは魔法で光源を作りだした。
≪我願う。我が前に光の導きを。≫
「【光源】」
レイアスの少し上空に光の玉が淡く光り輝いていた。
しばらく奥に進むと、そこは行き止まりとなっていた。
行き止まりを調べると、壁がキラキラと輝いていることに気が付いたレイアスは、それを指にとってひとなめしてみた。
「しょっぱい…塩だ…塩だよ兄さん!!」
徐々に喜びを表したレイアスを見て、ジョシュアの顔にも喜色が見えてきた。
「本当にあった…」
「これでやっとまともに食べられる…」
二人は、これまでの食事を思い出し心で涙を流していた。
「『この場所にはその辺に塊が落ちている。好きに持っていくがいい。』」
「ありがとう熊さん!!」
レイアスはまたも感激のあまり熊に抱き着いてしまった。それを見たジョシュアは少しうらやましそうにしていた。
しばらくして熊はまた自分の寝床へと移動していった。
二人は熊の寝床が若干気になったが、食事を優先することにした。
拠点場所へ戻った二人は、さっそく調理を開始した。岩塩をナイフで削り、フォレストボアとウサギの肉に味付けをして焼いてみた。
それはきちんとした旨味あふれる味わいだった。
「兄さん…おいしいね…」
「うん…おいしい…。塩って偉大だね…」
二人は感涙を流し、肉にむしゃぶりついた。
食事を終えた二人は、また火の番を決め、その日の活動を終えるのだった。
こうして二人の三日目の夜は更けていくのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
岩塩ゲットだぜ!!
ってジョシュアにやらせてみたい衝動にかられながらも何とか耐えました。
銀髪美少年が岩塩を片手に掲げて言うっての…なんかほほえましくありませんか?
そして、熊さん…あんた漢やで…
誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです
では、次回をお楽しみください。




