第7話 賢者は森で修行する 二日目⑤
戦闘の余韻に浸りながら小川を目指して歩いていると、ジョシュアが急に叫んだ!!それはとてつもなく緊迫した叫びだった!!
「待って!!レイアス下がって!!」
「えっ!?」
ジョシュアの声に一瞬硬直してしまったレイアスを庇うようにレイアスを抱え後方へと飛んだ。
「くそ!!反応が遅れた!!」
反応が遅れてしまったレイアスは後悔しながらその相手をにらみつけた。
「レイアス大丈夫?!」
「大丈夫だよ兄さん!!」
レイアスを心配しているジョシュアだが、その左腕には3本の爪のような跡が残され、血が流れていた。
「周囲に敵影3!!フォレストウルフだ!!」
周囲の確認を行ったジョシュアはレイアスに現状報告をした。
それを聞いたレイアスは即座に魔法で反応した。
「とりあえず壁を作って安全を確保するね!!」
≪我望むは水の力。我を囲みし城壁を成せ。≫
レイアスの【詠唱】開始とともに周囲には水が沸き上がってきた。
「【アクアウォール】!!」
レイアスの掛け声とともに水の壁が出来上がり、フォレストウルフたちはその周辺をうろうろと様子をうかがっていた。
「いったん仕切り直しだね。」
「でもどうする?さすがに3匹は難しいよ、兄さん。」
水の壁の中で安全確保をしたレイアス達はこの後の行動について相談していた。
「とりあえず、僕がここから魔法で2匹に牽制掛けるからその間に1匹倒せる?」
「それなら行けると思う。危険を感じたらここに戻るよ。」
「じゃあ、やろっか!!」
相談を完了した二人は即座に動き始めた。
レイアスは魔法の【詠唱】を開始。ジョシュアは自身のスキルを発動させた。
「【二重発動】」
≪我望むは水の力。矢を成して彼の者を射抜け≫
レイアスがスキル発動後【詠唱】を開始すると、いつもとは違う現象が起こった。レイアスの前には二本の水の矢が形成されていた。
「【ウォーターアロー】!!」
レイアスの掛け声とともに水の矢は水の壁を超えて2匹のフォレストウルフへと向かっていった。狙われたフォレストウルフは視界の外から迫ってきた水の矢に驚き距離をとって素早く後退し、警戒を始めた。
「さすがレイアス!!こっちも行くよ!!」
「【ステップ】!!」
フォレストウルフの行動を確認したジョシュアは勢いよく水の壁から飛び出し、近くにいたフォレストウルフへ襲い掛かった。
「からの~~~~!!【ラッシュ】!!」
ジョシュアは、フォレストウルフの周りを縦横無尽に移動し、剣戟を放って行った。次第にフォレストウルフの動きは遅くなり、その生命活動を停止した。
「さすが兄さん!!一匹討伐だ!!」
ジョシュアはいったん水の壁の中へ引いて、体力回復に努めた。
レイアスもまた、水の壁を維持するのに魔力を消費しておりあとがなくなってきていた。
「どうする、さすがにそろそろ魔力量がきびしくなってきた。」
「こっちも体力的にかなりやばめだね。」
「一気に全力で攻撃かな?」
「それしかないね…。」
二人は相談しあい、行動を開始した。
「アクアウォール】の中から一匹釣るからあと一匹お願い!!」
レイアスが【詠唱】を開始し始めたその時だった。
森の中から見慣れた姿と聞きなれた声が聞こえてきたのだ。
「『何かと思ってきてみれば、苦戦しているようだな?』」
「「熊さん!?」」
熊の登場に驚いたレイアスは魔法の発動を止めてしまった。ジョシュアもまた、驚いてその動きを止めてしまった。戦場であるこの場でその行動は命取りとなる行為である。
しかし、今回ばかりはそうはならなかったのである。
「『どれ、私が蹴散らしてやろう。』」
「うぅぅぅぅ~~~~~~!!」
熊の動きに警戒度を引き上げた二匹のフォレストウルフはうなり声をあげ威嚇を始める。
「『犬っころ風情が私に逆らうでない!!』」
「きゃいん!!きゃいきゃいん!!」
熊は一気に間合いを詰めてフォレストウルフに襲い掛かった、その圧力に屈したのかフォレストウルフは森の中へ脱兎のごとく逃げ出していったのであった。
「『これで問題なかろう。大丈夫か二人とも。』」
「「ありがとう熊さん!!」」
フォレストウルフが逃げるのを確認した熊は二人のほうを振り返り無事の確認をした。
二人は安堵したためか、熊に勢いよく飛びついたのだった。
「『なに、問題ない。たまたま水場に来たらおぬし達の姿が見えたものでな。物のついでだ。』」
熊は少し照れたのか顔背けながら、ついでだと告げた。
「それでも助かったよ、熊さん。」
「そうだね、ありがとう熊さん。」
二人はそんな熊の人間臭さを見て少し笑いながら、改めて礼を言うのだった。
「『では気を付けてもどるんだ。私は水場に向かうとする。』」
そう言うと、熊はまたのっしのっしと森へと入っていった。
しかし、その方角には水場がないことは確認済みの二人は、顔を見合わせながらまた笑い始めたのだった。
森には再び静寂が戻ったのである。
「もどろっか。」
「だね。」
ひとしきり笑った二人は岐路についてのであった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は熊さん漢前回でした。ピンチにさっそうと現れて助けるヒーロー的な感じです。
熊さんの人間臭さを描きたいんですが、うまく表現できない作者の技量不足に作者自身殴り倒したい衝動に駆られています。
誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです
では、次回をお楽しみください。




