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セフィロトの書〜賢者は賢者と知らない  作者: 華音 楓
幼少期編
32/103

第6話 賢者は修行を開始する④

「また脱線しちゃったわね。次は二人にやってもらいます。発動時に魔力が自分の中をどう動くかも感じ取りながらやってみて。まずはジョシュア君から。」


 セシリーは何かを振り払うように頭を二・三回横に頭を振った。気持ちを切り替えたのか、ジョシュアに魔法を使ってみるように促した。

 ジョシュアは、少しためらったが覚悟を決めたのか、杖を持った右手を前に掲げ、【詠唱】を始めた。


≪我願う。わが前に清き水の雫を浮かべたまえ。≫


 ジョシュアは一字一句間違えないように【詠唱】した。しかしその場に現れたのは、こぶし大の水の塊だった。形もいびつで球体を維持できていない。


「あれ?先生より出てきた量が全然少ないです。あと、【詠唱】中なんだか不思議な感覚でした。おなかの辺りから何かぼわ~っとしたのが出てきたと思ったら右手に移動して、そのまま外に出ていきました。その後少し体がだるく感じました。」

「よくできました。それが魔力の流れと魔力の消費よ。今は、簡単な魔法だからだるいで済んだことを理解してね?」


 魔力について感知できたことにセシリーは満足げにうなずいた。


「はい!!」

「兄さん…顔がにやけているよ?人の事言えないじゃないか…」

「し、仕方ないだろ?!うれしいんだから。」


 セシリーからの誉め言葉に頬を緩めるジョシュア。それを見たレイアスはニヤニヤしながらジョシュアの脇腹をつついていた。ジョシュアはにやけた顔をマッサージしながら、レイアスに反論していた。


「じゃあ、次はレイアス君ね。同じようにやってみて。」

「よ~し、やるぞ~~~~!!」


 セシリーはパンッ!!と一度手をたたくと、レイアスに魔法を発動するよう伝えた。

 レイアスは待ってましたと言わんばかりに、速攻で行動を起こした。両手で杖を持ち、その杖を目の前に掲げた。すると、レイアスの【詠唱】開始からすぐに変化が現れた。杖から光の帯が現れだした。


≪≪≪我願う。わが前に清き水の雫を浮かべたまえ。≫≫≫


 レイアスが【詠唱】すると何故か複数人の声が聞こえてきたのだ。

 レイアスの前にはセシリーよりも大きい水の塊が出現した。


「え?なにこれ?一人で【多重詠唱】が発動してる?!ありえないわ?!」


 セシリーはその現象を【多重詠唱】と呼び、慌てていた。

 その間にもどんどん水の塊は巨大化していき、ついにはぶよぶよと暴れ始めた。


「せ、先生!!これ止まんない!!どうしよう!!」

「今止めるわ。少し痛いけど我慢してね?!」


 すでに自身で制御ができない状態の水塊の前にパニック状態のレイアス。

 セシリーは自身の杖を右手に構え、【短縮詠唱】を発動させた。


「ファイアエンチャント!!たぁ~~~~~っ!!」


 セシリーの【短縮詠唱】の炎付与魔法により、杖に強い熱気を帯びた炎がまとわりついた。

 セシリーは炎付与の杖を上段から思いっきり振り下ろし、レイアスの水塊にぶつけた。


 ジュウ~~~~~~!!

 バシャ~~~~~ン!!


 水が蒸発する音が鳴り響いた後、大きな爆発音とともに水塊は砕け散った。


「と、止まった~。」

「な、なにが起こったのレイアス?」


 水塊の消滅とともにレイアスは安心したのか、その場にへたり込んだ。慌てたジョシュアはレイアスのもとに駆け寄ると、その体を抱きかかえた。レイアスの体は、小刻みに震えていた。


「わ、わかんない…兄さんと同じように【詠唱】したはずなんだけど…」


 レイアスはジョシュアに抱えられながら、今起こったことを説明しようとしたがうまく説明できなかった。


「どうした!?大丈夫か?!」


 爆発音を聞いて慌てて、ガーランドが駆け寄ってきた。


「大丈夫よ、問題ないわ。レイアス君の魔法特性が予想よりも高かったのよ。」

「そ、そうか…。二人ともけがはないか?」


 セシリーも少し疲れた顔をしながらガーランドに応えた。ガーランドもセシリーの消耗度合いみてそれほどまでの威力だったことに驚きを隠せずにいた。


「はい、ケガ自体はないんですが…」

「レイアス大丈夫か?」

「はい、ちょっとびっくりしちゃいました…」


 ジョシュアはケガがないことを報告するもその表情にはレイアスを心配する色がうかがい知れた。

 ガーランドもレイアスの状態が普通ではないことを見て取った。

 レイアスは大丈夫だというものの、その手はいまだに震えていた。


「ガーランド、今日は魔法練習を終了しようと思うわ。」

「そのほうがいいだろう。二人とも、昼食をはさんで武術鍛錬に移る。それまでに気持ちを切り替えてくるようにな。」

「はい…」


 セシリーの言葉を聞いたガーランドは一つ頷き、二人に午前の部の終了を告げた。

 二人の返事には覇気はなかった。


ーーーーーーーーーー


「ガーランド…ちょっといいかしら?」

「どうした改まって。」


 二人が領主館へ戻っていくのを見届けたセシリーは、ガーランドを呼び止めた。


「レイアス君なんだけど…本人は何もしていないって言ってたけど【多重詠唱】が発動していたわ。あれは覚えたての子が使える技術ではないはずよ。私だって何年も修行してやっと覚えたんだもの。」


 セシリーはレイアスの異常性についてガーランドに報告をした。それは5歳児が到底到達できるものではないからである。


「そうか…。このことについては俺からマルコ様へ報告しておこう。セシリーは二人と昼食をとってくるといい。」

「そうさせてもらうわ。さすがに疲れちゃったわ。」


 ガーランドはセシリーの報告を聞き、自身でマルコへ報告する旨を伝えた。

 セシリーの声にもやはり覇気は見られなかった。


「おいおい、初日からそんなんで大丈夫か?」

「何とかね。」


 そんなセシリーを心配し、ガーランドが問いかけるも、セシリーの顔色は優れなかった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


誤字脱字等ございましたら教えていただけると幸いです。


余談ですが、作者の「ちょい読みシリーズ 僕はいつでも殺される」が毎日17時にアップされます。


お暇時間にお目汚し程度にお付き合いください。


では、次回をお楽しみください。

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