第4話 賢者は5歳の誕生日を迎える②
レイアスの部屋から食堂に降りた二人に声を掛けたのが、領主であり父のマルコ・フォン・レガスティアである。
「おはようレイアス。また夜更かしかい?ほどほどにしないと禁止しなくちゃならなくなるぞ?」
マルコは心配そうにレイアスに声をかけ、椅子に座るように促した。
「そうよレイアス。あなたはまだ小さいんだから無理はしちゃだめよ?わかった?」
次に声をかけてきたのは母であるティリアだ。二人とも見た目は若く20歳代くらいに見える。
「はい父上。今後は気を付けます。母上もわかったよ。」
レイアスは二人の指摘に素直に反省し謝罪の言葉を伝え、椅子に座った。二人はレイアスの返答に納得したのか、にこやかに笑いかけてくれたのだった。
「ジョシュアもありがとう。レイアスを起こしてきてくれて。」
マルコはジョシュアの気苦労を労い、礼を述べた。
「あはは、レイアスはいつものことですから。」
ジョシュアはいつもの日課であるため大して苦労しているとは思っていなかったようだ。
「じゃあ、全員揃ったから朝食にしよう。いただきます。」
「「「いただきます。」」」
マルコの号令により朝食が始まった。レイアスは前世の記憶から貴族の食事は相当豪華だろうと思っていた。しかし、実際にはさほど豪華とは言えず、質素とまではいかないが、素朴な料理が並んでいた。焼き立てのパンと、優しい味のスープ。さわやかなドレッシングのかかったサラダ。メインはベーコンエッグだった。
朝食を食べながらマルコは何かを思い出したように二人の子供に話しかけた。
「そうだ二人とも。お前たちも今日で5歳だ。そろそろ剣術と魔術の稽古を始めようと思う。来週から剣術・魔術それぞれの家庭教師が来るから、きちんということを聞いて、学びなさい。」
マルコは二人に注意を促しながら、今後の予定を伝えようとした。
「あなた、まだはやいのではなくて?この子たちはまだ子供よ?」
しかし、それを遮ったのは母のティリアだった。
「ティリア。前も言ったはずだよ?この子たちは、この領地を継いでいかなくてはならないんだ。その為には、今からきちんと学んでいかなくてはならないんだよ。僕たちはそれで苦労してきたじゃないか。」
「それはそうですが…」
ティリアの言葉を受け、再三話し合った内容である旨を伝えティリアをなだめた。ティリアは覆らないと知るとしぶしぶ引き下がった。
「母上、ご心配いただきありがとうございます。僕もレイアスも実は稽古が始まるの楽しみにしてたんです。レイアスなんか魔術の絵本をずっと読んでるんですよ?」
ジョシュアはそんなティリアの思いを感じ、少しうれしくなった。その為少し口が緩くなってしまったらしい。つい、レイアスの秘密を暴露してしまったのである。
「兄さんなんで知ってるの?!」
見られていたとは知らなかったレイアスは本気で驚き目を丸くしてしまった。
「隠れて読んでるつもりだったの?目をキラキラさせて読んでたくせに。」
それを見たジョシュアはさらにレイアスをからかいながら笑っていた。
「そんなこと…ない…はず…」
レイアスはジョシュアの言葉を否定できず、言葉がしりすぼみになっていった。
「というわけだ。ティリア、理解してくれるね?」
マルコはそんな二人のやり取りを受けて、ティリアに理解を求めた。
「わかりました!!もう、すぐそうやって私だけ仲間外れにして。いいですよ、マリア。私たちは買い物にでも行きましょう。」
少し不貞腐れたそぶりを見せるティリアはマリアに話を振った。その表情は少しニヤニヤしていたのは内緒だ。
「かしこまりました、奥様。いいお菓子とお茶を出してくれるお店を予約しておきます。」
マリアもすかさずティリアに便乗し、高級店の目星をつけ始めた。
「さすがマリア。頼りになるわね。」
ティリアも又、決定事項で覆らないことは重々承知のようだった。メイドのマリアを引き連れて街へ繰り出す計画を立て始めるのだった。ただでは転ばないところが貴族なのかもしれない。そして二人はティリアの部屋へ移動したのだった。
二人の行動にあっけにとられたマルコたちは顔を見合わせ、思わず噴き出した笑ってしまった。なんだかんだといっても仲の良い家族なのであった。
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朝食後食堂をあとにした二人はレイアスの部屋へ移動していた。
「ねぇ、兄さん。今度来る家庭教師の人いい人だといいね。」
「そうだね。僕も早く稽古したくてうずうずしてるんだ。」
「兄さんだって人のこと言えないじゃないか。」
「だね。」
二人はレイアスの部屋でくつろぎ、今後の訓練に思いを馳せていくのだった。
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