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エピローグ5 おかえり灯夜!

 ……【大怪蟹】との戦いに勝利し、見事池袋を救った灯夜たち。長い苦難の一日は終わり、一行は無事学園へと帰還したのだった。


 そしてこれは、その翌日から始まる後日談である――――。

 ――――結局、ぼくが検査から解放されたのは翌日の夕方近くだった。


 学園の病院に着いた時点ですでに夜だったこともあり、その日は問診とすり傷の手当てくらいで本格的な検査は明日にまわされる事になったのだ。


 病室で寝るのは初めてではないけれど、やっぱりどうにも落ち着かない気持ちになる……精密に検査すれば何が出てくるか分からないとはいえ、五体満足の身でベッドを占領するのは何か申し訳ない。


「月代さーん、もう朝ですよ。起きてー」


 そう思いつつも、なんだかんだで熟睡したぼくが起こされたのは病院の朝食の時間だった。食堂で全体的に味の薄いご飯をいただいた後、採血やら心電図やらMRIやらといった検査を続けて受けることになったのだ。


「じゃ、オレたちは先に戻ってるぜ。お大事になトーヤ!」


「ごめんなさい月代君。本当はずっとついててあげたいけど先生が帰れって……」


「とりあえず即座に命に関わることは無いでしょうけど、まあ自業自得と思って反省することね」


 ぼくと入院が確定したミイナ先輩を残して、みんなはお昼過ぎには車折くるまざき先生の車で寮に帰っていった。樹希ちゃんあたりはぼくよりもずっとダメージを負っていたはずだけど、大きな外傷もないのと本人が強く望んだとかで無理矢理退院が決まったという。


「あなたとわたしとでは鍛え方が違うのよ。悔しかったらもっと体を鍛えなさい」


 ぼくとしては、ちゃんと休んで回復させたほうがいいと思うんだけど……


 ――――そして、午後には気になる検査の結果が出た。


「全部正常、問題なし!」


 安心すると同時に、何とも言えない徒労感に全身がぐったりした。お医者さんの話では医学的にはまったくの健康体。けれどさすがに霊障のたぐいは専門外なので、そっちは後で専門家に診てもらうように……とのこと。


「そんな事だろうとは思ってたけどね……まあとりあえずは良かったわ。とりあえず知り合いの専門家にはアポ取っておいたから、そっちはその時にって事で」


 蒼衣お姉ちゃんも安心してくれたようだ。実際昨日の戦いでぼくは怪我らしい怪我をしていないのだから、当然と言えば当然だけど。


 消耗したのはもっぱら霊力のほうだ。さらに加えて、前例のない二体目の妖との契約……それもあの伝説の【竜種】とである。

 今は何ともないけれど、いずれは何らかの影響が出てくるのかもしれない。というか、何もなければ無いで逆に不安かも?


「ただ、あっちも忙しい身だからねぇ……こっちに戻って来れるのは来月以降になるみたい。それまで、何も無きゃいいんだけど」


 ……というわけで、ぼくは丸一日以上ぶりにたちばな寮に帰ってきた。


「オカエリとーや! ブジでなによりなにより~!」


「ただいましるふ。みんなも無事で何よりだよっ」


 先に戻っていた愛音ちゃんたちに加え、都内の病院に運ばれていた恋寿れんじゅちゃんと及川さんも居る。彼女たちも無事に帰って来れたようだ。


「あれ、恋寿ちゃんは四方院のお屋敷に帰るんじゃないの?」


「これからみんなで昨日のお疲れパーティなので、恋寿もお邪魔してるのですよ! 灯夜様がお帰りになられたので早速、乾杯といくのです!」


 帰って即始まった突然のパーティで、その日夜遅くまで寮の食堂は賑わうことになった。事情を知ってか、寮母の君鳥きみどりさんもとがめるどころか差し入れのおにぎりを持って輪の中に加わってくれた。


「み~んな無事で、とっても嬉しいのですよ~」



◇◇◇



 ――――なんだかんだで夜は更けて、騒ぎ疲れたみんなは各々の部屋に……一部寝落ちした子は同室の子に引きずられて帰っていった。


 部屋に戻ってしるふを寝床に押し込んだ後、ぼくはパーティの間中気になっていた事を樹希ちゃんに尋ねてみた。


暁煌あかつきは、今どこに居るの?」


 そう、暁煌……ぼくと契約した【竜種】の女の子。彼女とは病院の入り口で別れてからずっと会っていない。念話も試してみたけど、どういうわけだか繋がらないのだ。


 蒼衣お姉ちゃんはとりあえず上と話し合ってから処遇を決めると言っていたけど、詳しい事はなんとなくぼかして話していたのが気になって仕方がなかった。

 彼女の身に何か起きたのではないかと考えていたせいで、ぼくはパーティの最中もずっと上の空だったのだ。


「そうね、今更隠しても仕方がないから教えておくわ。あの子は今、一総ノ宮(かずさのみや)の預かりになっているの。前例のない強大な妖だというのもあるけれど、何せ伝説の【竜種】とあっては他の人間の……そう、術者の目に触れさせる事さえ危険が伴うのだから」


 樹希ちゃんが言うには、【竜種】である彼女をかくまう事は天御神楽学園の存続を揺るがす程の大問題であるという。学園に戻るヘリの中で聞いた通り、【竜種】復活の噂が広まれば学園は彼女を手に入れようとたくらむ勢力の脅威にさらされる事になるからだ。


「それを考慮してもなお、彼女を保護する事には意味がある。【竜種】の力を良からぬ目的の為に使おうとする連中に渡すよりは、リスクを承知で手元に置いておく方がマシ……それが学園のトップである一総ノ宮家の意向なのよ」


 当面の間、暁煌は一総ノ宮家が直接管理する施設で暮らす事になるという。外出はもちろん面会も許されない。彼女に接触できるのは世話役のごく少数の者に限られるという話だ。


「そんな、それじゃあ暁煌がかわいそうだよ! あの子は悪い妖なんかじゃないのに、こんな監禁みたいな扱いを受けるなんて……」


「あくまで当面の間よ。彼女が自分の立場を理解し、迂闊うかつな行動を取らないという確証が得られたなら……少なくとも、学園の中での自由は約束してもらえるでしょう。それまでの辛抱よ」


 色々と難しい事情があるのはぼくにも分かる。そもそもぼく自身だって暁煌と契約した身……彼女のように監禁されなかっただけでもマシと言えるのだろう。


「でも……」


「でもも何も無いわ。あなた一人が騒いでどうにかなる問題じゃないのは分かるでしょう? それに、この件に関しては打つ手がないから絶望というわけでもないのだから……そう、きっと時間が解決してくれるわよ」


 そう言うと、樹希ちゃんはベッドにもぐり込んだ。この話はここまでという事なのだろう。


「暁煌、さびしい思いをしてなければいいけど……」


 暁煌は伝説とまで言われた妖だ。ちょっと監禁されたくらいでへこたれるとは思わないけれど、一度は死にかけるほどに消耗していた彼女が心配でないと言えば噓になる。


「会いたいな、暁煌……」


 ……紆余曲折うよきょくせつはあったけど、こうしてぼくは再び学園の日常に帰ってきた。ゴールデンウィークも終わり、また一年S組での賑やかな学園生活が始まる。



 ――――その事件が起きたのは、そんな日々に戻ってすぐの事だったんだ。

 お久しぶりです灯夜君!

 不穏成分も薄い……薄い?(;^_^A

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