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「始めて見る顔だな。坊主、もしかしてサンタ狩りは初めてか?」
集合場所の広場に居ると、背後から初老の男性に声をかけられた。
その口ぶりといい、風格といい、まず間違いなくサンタ狩りベテラン格の人間に違いない。
「確かにそうですけど、あなたは?」
「あなたなんて言い方はよしてくれ、じいさん呼ばわりでいい。儂はただの死にぞこないさ」
じいさんは襟首をグイと引き下げると、襟で隠れていた首元から、大きな傷痕が覗かせる。
「その傷は……」
俺がじいさんに傷のことを聞くと、じいさんは適当に腰を下せる場所を見つけてそこに腰を降ろしてゆっくりと語り始めた。
「もう随分前の事になる。その頃の儂はまだまだ新米で、サンタ狩りの右も左も分からない奴だった。
その年は儂と同期になる新人が、このサンタ狩りに大勢参加していてな。皆、お前のように覚悟を持った連中揃いだったよ。
だがな……その年のクリスマスイヴを生き残れたのは、全体の1パーセントにも満たんほんの一握りだけだった。
それにな、あの頃とは随分と面子が変わってしまった。今年の参加者で三年前からいたものもほとんどおらんよ」
じいいさんの口からサンタ狩りにおけるその過酷さを語られた俺は、戦慄する。
それほどまでに、サンタ狩りとは過酷な戦場なのか!
俺の進行形で寄れ動く気持ちとは関係なく、じいさんの語りは続く。
「ちょいと儂の近くに寄って、その瞳を見せておくれ」
「これでいいか?」
特に断る理由もないので、俺はしゃがんで座っているじいさんと同じ高さに目線を合わせてやった。
「すばらしい。クリスマスへの怨みと嫉みの宿ったいい瞳だ。
儂はもう幾人も、お前さんの様に嫉妬でクリスマス中止に追い込もうとする若者達を見てきた。しかし誰もが例外なく散って行ったよ。
毎年そんな同じ光景を見てきているのに何故だろうな、『今年こそは』『こいつなら変えられる』とお前さんのような新人に期待してしまうんだ」
「俺が、じいさんのそんな期待に添えられることができるかどうか分からないけど、精々頑張ることにするよ」
「ありがとうな。それにしてもいやはや、歳をとると長く話してしまっていかん。年寄りはそろそろ退散することにするよ」
そう言い残して、じいさんは去って行った。じいさんは終始どこか虚さを漂わせている人だった。
あの人の為だけでもいいから、サンタを狩りつくして、今年のクリスマスは中止に追い込まないといけないな。
負けられない戦いになったと決意を新たにしていると、じいさんとは別の人がまた俺に近づいてきて声をかけられた。
「君がイワシさんだね。僕は今回のサンタ狩りのリーダーを務めるイサキです。本日はよろしくおねがいします。一緒にクリスマスを駆逐しましょうね」
「あなたがイサキさんですか、こちらこそ今日は互いに頑張っていきましょう」
イワシは、この場合魚のほうではなく俺の使っているハンドルネーム。名前を呼びあうのに本名ではなく偽名を使うのは、コードネームのようで好きだ。
今日のサンタ狩りに集まったメンバーは、全員がネットで集った有志の人達ばかり。その中心となってその有志の人を集めていたのが、目の前にいるイサキさんだ。
「ここだけの話なんですがね……」
柔和な笑みを崩してイサキさんは、周囲を一通り確認して辺りを窺うと、こっそり俺へと耳打ちをした。
「実は、もうすでにこの街にサンタが潜伏している情報を秘密裏に入手して、二、三日前から先遣隊を送っていたんですが。当日がきても一切連絡が来ないんです。
気を付けてください。私たちはまだでも、奴らの狩りはもう始まっているのかもしれません」
それは、まだ昼がまだ遠い午前中のことだった。




