久しぶりの感情
クラウド様には安定した強さがあった。
ペアでの実習は私に現実を教えてくれた。
私は恐らくクラウド様よりも遥かに魔力が高い。能力もある。
でも、それだけだ。
打ち合いや、放出、操作なら負けないが、交戦となると話が変わる。
机上での学習、無機物相手の訓練・実習が主体の私は予測不可能な事態に弱かった。
そんな私はまた実技の対戦実習で尻餅をついた状態で両手を挙げて彼を見上げていた。
「クラウディアは不器用だね。技術も能力もあるのにとてももったいない。」
「後ろに仕掛けをされてるなんて分かりません。ビックリしました。」
クラウド様の私の呼び方は早い段階で「嬢」がなくなっていた。
「まぁ、命の取り合いで最初から戦うってなったら間違いなく俺が負けるだろうけどね。あくまで一対一で、よーいスタートが決まってる状態ならだけど。」
「そうじゃなければ全力の私にも勝てますか?」
純粋に知りたくて聞いてみた。
恐れの対象でしかない自分を心の奥底で私自身も恐れている。
人を傷つけないように、自分が傷つかないように感情を抑制しながら生きてきた。
「勝てると思うよ?頑丈で刃が突き刺さらない鱗もなければ背後の動きを察知出来る目があるわけでもない。不意打ちに弱いしね。君は強いけど無敵じゃない。」
何故だろう。
誉められてるわけではないのに、酷く優しい目をして私に伝えてくれる。
この碧色の瞳が私は嫌いじゃない。
―この人は私を『人』として見てくれている。
「そうですか。」
それが嬉しくて、久しぶりに、少し、
―笑うことが出来た。




