第9話:これが聖女の初陣テスト
教会騎士を加えた、総勢600の軍勢が辺境に向けて進軍を開始した。
教皇が教会への批判をかわすため、直属の神殿騎士を100名も融通してきたのだ。
自分の席と保身がかかっている時の上層部というのは、実にあっぱれなほど素早く動くものだと感心してしまう。
ハンター協会の高ランクハンターたちについては、現地叩き上げの辺境ハンターより個々の戦闘力は劣るものの、普段から商隊の護衛任務などを組織的にこなしているメンバーだという。そのため集団行動や統率という面では非常に優れており、整然と隊列を組んで歩みを進めていた。
そんな規律正しい進軍の中で、唯一、最悪に悪目立ちしているのが俺の乗る馬車だった。
俺自身が一人で馬に乗れない上、この身体はまだ長距離移動に耐えられない子供だ。必然的に馬車移動になるのだが、教会が用意したそれなりに上等な仕様の馬車なため、周囲のハンターたちからの視線が痛い。「お姫様の御成りかよ」と思われているのだろう。
まあ、中身はおっさんだが、外見の見てくれだけは小柄な美少女だからな。最近、忙しすぎて自分でも忘れかけていた事実だが。
そんな道中だったが、俺にはどうしても一つ試しておきたい「検証作業」があった。
魔物への実戦対応だ。
辺境に近づくに連れて魔物の発見報告が増え、その都度ハンターたちが処理していくのだが、本格的な魔物の軍勢と激突する前に、俺自身の最大出力がどの程度なのか、テストを行って戦力を把握しておきたかったのだ。
軍を率いる副本部長のパウエルには、事前に伝えてある。「見晴らしが良く、それなりの規模と強さがあり、かつこちらが先制攻撃を仕掛けられる都合のいい状況があれば、すぐに知らせてくれ」と。
そして、まさに計画通りの御誂え向きな状況が巡ってきた。 俺は神殿騎士に抱えられ、高ランクハンターのパーティを護衛に据えて、周囲を一望できる小高い丘の上へとやってきた。
「聖女様、あちらです」
神殿騎士が指さした先、視界の開けた平原を、100匹ほどの魔物の集団が移動しているのが見えた。
「あれか……。ハンターの基準として、あの集団はどの程度の脅威度になる?」
俺の護衛兼、魔物の専門知識に関するアドバイザーとして同行している高ランクパーティのリーダー格の男が、苦い顔で答える。
「狼型の魔物の群れだ。機動力と統率力に優れている。まともにぶつかるなら、俺たちクラスのパーティが10組は欲しい。犠牲者なしでの勝利はまず無理な相手だ」
「よし、ちょうどいいな。あれは俺が貰おう」
ハンターの男が、あからさまに心配そうな、あるいは不審そうな視線を向けてくる。
「本当に大丈夫なんですかい……?」
まあ、彼の心配はもっともだ。戦場を自分の足で歩くことすらできず、大人の男に抱えられている小柄な少女の戦力など、当てにする方がどうかしている。不安しかなくて当然だ。
「まあ、やってみるさ。万が一失敗したら、即座に迎撃に移れるよう準備だけは頼む」
地面に足を降ろしてもらい、魔物の集団をじっと見据える。脳内で範囲を指定し、どのようなアプローチで消去するか、魔法の効果を具体的にイメージしていく。
「――消えろ」
言葉を発した瞬間。 狼の群れの真下から、膨大な聖魔力が文字通り吹き荒れた。炎が燃え盛るように一瞬で広がり、そして、音すら残さずに収束した。
光が消えた後には、文字通り「何も」残っていなかった。
一瞬の静寂の後、神殿騎士たちはその光景に狂喜乱舞した。
「おお、神の奇跡だ!」「畏れ多き聖なるお力!」と涙を流して感動している。
一方で、百戦錬磨のハンターたちは、完全に絶句した後にピュウ、と硬い口笛を軽く吹いた。
俺としても、非常に満足のいく戦闘テストの結果だった。 今の手応えからすれば、本番の防衛戦もさほど手間をかけずに定時退社できる可能性が高い。
俺は神殿騎士に進軍の再開を指示し、再び冷房のない馬車へと戻った。
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本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




