第8話:泥船国家からの出奔
今回は、あまりにも組織のトップとして呆れ果てた対応をされたので、逆にキレる気にもならずに済んだ。 しっかし、世襲制も長く続くと、統治能力ってここまで腐るものなのか。現代社会の行政システムって、ちゃんと進化していたのだねぇ、とのんびり考えていた。
この身体の持ち主は元々この王国の民だったのだろうが、神の使徒である聖女になった時点で、身分の話をするなら国王よりも尊くなるんじゃないのか。
ましてや、俺の精神は日本人としての意識しか無い。 仮に日本で同じような災害や危難が起きていたとして、政府も自治体も自衛隊も動かない中で、一人の国民に向かって「お前が戦地に赴け」なんて命令されることは絶対にない。常識的にあり得んだろう。
まあ、その辺のこの世界の常識ルールは、後でカランベルンに聞いておくことにしよう。 俺は、この件に関してはこれ以上関わり合いを持たないようにしようと思っていた。
思っていたのだが……。
まず、王都では「聖女が魔物討伐を拒否した」「偽聖女だ」などという都合のいい流言が飛び交い始めた。批判の矛先が教会へと向いたため、保身に走った教皇が慌てて俺に討伐に向かうよう、何度も頭を下げてくるようになった。
はぁ、と深いため息が出る。
もう、この国に用はないな。居るだけで不利益しか降り注がない。
「カランベルン。この国を出て、帝国に向かう準備をしてくれ。治療ビジネスの予算はまだ残っている。計画に参加しているスタッフを引き連れていくくらいの余裕はあるだろ?」
書類を整理していたカランベルンは、作業の手を止めてこちらを見た。
「そうですか……残念ですね。ですが、予算に関しては十分な余裕があります。流石に帝国の首都で全員分の生活拠点を構えるとなると厳しいですが、主要メンバー以外を都市部から少し離れた場所に配置すれば、財政的にも全く問題ありません」
「すまんね。君たちの故郷から離れる形になっちまって」
「いえ。我らは神の敬虔なる信者であり、計画の同伴者です。聖女たるあなたのご指示に従います」
そうして、厄介事しか生み出さないこの国を離れ、次のステップへ進もうと動き始めたのだが、別方面から予想外の厄介事がやってきた。
「聖女様、魔物ハンター協会からの緊急の救援要請が届いています」
「ハンター協会から? もしかして、辺境の話か」
「そうです。辺境伯の領地に所属するハンターだけでは対応しきれず、魔の森の監視と防衛を担っていた砦が陥落。いくつかの村が飲み込まれたとのことです。現在、生存者は辺境伯の城塞都市で籠城に入ったと……」
「完全にジリ貧状態だな」
「協会は王国にも重ねて救援を求めたそうですが、国側は『聖女が動かないのが悪い』と、それを口実に実質的な救援を拒否したそうです。そのため、我々に直接要請が来ました」
「頭がおかしいのか、あの無能どもは。……クソが。しかし、ここで協会と揉めるのはまずいな」
「はい、協会の使者が外で待機しております」
「会おう」
そうして、俺は協会の使者と面会することになった。
「王国ハンター協会・王都支部、副本部長のパウエルと申します」
「ああ、挨拶はいい。時間が惜しい、現状の正確な数字を説明してくれ」
「助かります。現在、辺境伯領の正規軍はほぼ壊滅状態。城塞都市に生き残った兵や民を避難させ、籠城戦を行っている状況です。ハンター側も大きな被害を受けましたが、現地のハンターは実力者も多く、まだ戦闘継続が可能です。本部からの指示で非常事態宣言を出し、王都周辺の高ランクハンターを招集しました。3日後に彼ら率いて進軍します。総勢500の予定です。……王国軍からの援軍は見込めません」
「魔物の勢力に関しては?」
「正確なところは掴めていませんが、伝令によると数千単位。群れの中には、竜種などの強力な個体の姿も確認されています」
「ハンター協会単独で、勝てる見込みは?」
「……難しいでしょう。生存者の脱出支援が現実的な作戦になると思われます」
ふぅ、と息を吐いて椅子の背もたれにもたれかかった。
恐らく、俺の魔力の出力を考えると、数千程度の群れなら押し潰せると思える。だが、この世界での初めての魔物との実戦がいきなり数千単位の軍団となると、流石に少し身構えてしまう。
しかし、ここで協会を見捨てるとなれば、俺たちが進めていたこれからの計画はすべて水泡に帰す。
パウエルという副本部長の報告は、あの王国の使者とは比べ物にならないほど精度が高く、合理的だ。今後の展開を考えても、ハンター協会との連携なしはあり得ない。
「数千の魔物の群れだ。俺が戦場に出るとなれば、範囲攻撃で一網打尽にするため、魔物素材の回収は不可能になるが、それでも協会は援軍を求めるか?」
「はい。この期に及んで、目先の欲を出す状況ではありません。人の命が最優先です」
カランベルンを見ると、彼は静かに頷いてみせた。交渉の余地あり、というサインだ。
「副本部長は、俺たちが進めている計画について聞いているか」
「はい、存じております。住み分けの件も含めて」
「ならば条件だ。今回の援軍要請の報酬は、これからの計画に対するハンター協会の全面的な協力。それを見返りとしたい」
「……はい、望むところです。要請を受託いただき、心から感謝いたします」
こうして、国を動かす無能たちのツケを払うため、俺は魔物の蠢く王国の辺境領へと赴くことになった。
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本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




