第6話:部下を傷つけるやつは万死に値する
聖女が国に必要だと思うなら、くだらない婚姻関係を企む前に、こちらの魔物殲滅プロジェクトに参加してからほざけ。
実際、カランベルンと立ち上げた計画は、それなりの成果を出しつつあった。 世界には『魔物の森』と呼ばれる、人類未踏の深い原生林が3箇所ほど存在している。その森に面する数十カ国が魔物の脅威に晒され、生存競争を繰り広げているのだ。基本的な魔物はその森で発生し、外に出ているものは、まれに集団を作るが基本は「はぐれ」に過ぎない。
つまり、この3箇所の魔の森とその周辺をピンポイントで浄化すれば良い。 だが、問題はその広さだ。地球の規模で言えば、シベリアの半分が鬱蒼とした森になっているようなものだ。 適切に区分けを行い、効率的な進め方をしないと、あの悪夢のような馬車移動を何十日も続ける羽目になる。あんな苦行、二度と御免だ。
「……なんで、俺がこんな地球規模の環境改善みたいなことを考えなきゃならんのだ。自分の世界の危機くらい、自分たちで何とかしろよ」
地図を睨みつけながら、先ほど押し掛けてきた貴族たちの無能面を思い出し、再び深い溜息を吐き出した。
◇
事件が起きたのは、それから数週間後のことだった。
高位貴族が強引な面会を求め、俺の私室へとやってきた。日和見の教皇が、裏で勝手に許可を出したらしい。
幸い、今回はカランベルンが在席していたので、基本的な対応でのあしらいを任せたのだが……どうにも部屋の外が騒がしい。
『聖女様は我が公爵家の養女となり、第二王子の婚約者となることが決定しているのだ! 教会の司教風情が、我らの行く手を阻むな!』
激しい怒鳴り声。直後、ドカッという鈍い衝撃音と肉体が崩れ落ちる音が響き、シスターの悲鳴が上がった。 『カランベルン様っ……!!』
――おいおい。マジかよ。 マジでクソだな、コイツら。まさか、俺の部下であるカランベルンに手を出しやがったのか?
すっと立ち上がり、部屋の扉を乱暴に開け放つ。 そこには、肩から血を流して床に倒れ伏しているカランベルンと、泣きながら彼を介抱するシスターの姿があった。
その先には、抜いたばかりの剣を構える騎士。そして、ギョロついた目を不快に細め、アンコウのような醜悪な面でニヤニヤと笑みを浮かべている男が立っていた。
俺は無言で手をかざし、カランベルンに治癒魔術を行使した。一瞬で傷口が塞がり、元の状態に回復させていく。
それから、ゆっくりと首を傾げてアンコウ男を睨みつけた。
「なんか……部屋の外から『養女』がどうとかいうのが聞こえてきたんだけどさ。あいにく俺は人類だから、魚人の養女になるのは生理的に無理だわ」
部屋の時間が、完全に停止した。
空間が再び動き出したのは、目の前の魚人公爵が、怒りのあまりプルプルと震えだしてからだった。
「あ? 何プルプル震えてんの? 陸の上だから呼吸できないのかな。早く海水にでも浸かってくれば?」
追撃の言葉を、無表情のまま叩き込んでやった。
そう、俺は今、猛烈に怒っている。 この世界に来てからというもの、言葉の通じないやつ、道理の通じないクズばかりだ。そんな理不尽な環境の中で、カランベルンだけは初めて言葉が通じ、道理を理解し、俺を的確にサポートしてくれた奴なのだ。
そんな部下を傷つけられて、キレないわけがないだろうが。
「き、貴様ぁぁッ!! たかが平民の分際で、公爵である我が身に向かって――」
「――黙れ、魚人」
奴がそれ以上汚い声を張り上げる前に、俺は奴の喉元を結界で直接塞いだ。
当然、空気は通らない。息ができなくなった公爵は、たちまち顔を青白くさせて喉をかきむしり、その場に崩れ落ちた。
「閣下に何を――ッ!」
護衛の騎士が色めき立ち、俺に向かって剣を突き出してくる。 俺はその剣ごと、騎士の両腕を結界で包み込み――そのまま圧縮した。
ゴリゴリ、ボキボキボキッ!!!
骨の砕ける異音が響き渡り、騎士の剣と両腕は一瞬にして一塊の肉塊となる。
「ぎゃああああああああああーーーッ!!!」
騎士が痛みのあまり床を転げ回って絶叫する。俺はそれを、無表情で冷徹に見下ろした。
喉を塞がれて苦しんでいる公爵は、鼻は塞いでいないので窒息こそ免れているが、青白い顔でその情景を見て完全に恐怖に支配されていた。
俺は、蹲る公爵の目の前にしゃがみ込み、真っ向から見据えた。
「公爵だか侯爵だか知らねぇが、次に顔を見せたら殺すぞ。もし、俺やカランベルンの邪魔立てをするなら、お前の屋敷ごと空間ごと圧縮してゴミ屑にする。……わかったか?」
冷たい声音で告げると、公爵の目の前で言った。
「わかったなら、縦に首を振れ。わからないなら、そのまま死ね」
公爵は、何度も何度も縦に首を振った。
俺は無言で結界を解除してやった。もちろん、カランベルンを斬った騎士の両腕はそのまま。 公爵は「ヒィ」と情けない悲鳴を上げながら、教会を後にした。
まったく、この世界の連中は、俺を定期的にキレさせないと死ぬのだろうか。理不尽極まりない。
「マリアベル様……お救いいただき、ありがとうございます」
立ち上がったカランベルンが、深く俺に頭を下げた。
「お前は俺の部下だから当然のことだ。馬鹿ばっかりで、本当に腹が立つ。お前がいなければ、そのバカの相手を俺が直接する羽目になるんだ。せいぜい健康に仕事をしてくれ」
カランベルンは、さらに深々と頭を下げた。
本当に、この男がいてくれないと困るのだ。
俺がこの世界そのものを完全に憎悪してしまう前に、彼が間に入って調整してくれなければ、本当にどうにかなってしまうのだから。
「本当に頼むわ」
俺は残された地図に目を落とし、やれやれと首を振るのだった。
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本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




