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おっさん聖女の異世界救済計画 〜ジャマなやつらは結界で潰す〜  作者: あらたまのみこと


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第15話:おっさん聖女vs魔王(日常破壊の代償)

すぐさま神殿都市マリアベルに緊急事態宣言が発令され、市民たちの迅速な避難が始まった。 一部、街に残りたいと駄々をこねる頑固な市民もいたようだが、カランベルンが寝る間を惜しんで説得して回ってくれたおかげで、二日後には、神殿都市マリアベルからの民間人の避難は完全に完了した。

彼らは一時的に帝都で手厚く保護される手はずになっている。


帝国軍も国境付近に大規模な軍団を集結させているようだったが、俺への接近は厳重に禁止してもらった。 正直、帝国騎士では相手にならないと思う。俺自身が対応しないとダメな案件なのだろう。

人が消え、静まり返った作戦室で、俺は残った面々に最後の指示を出した。


「神殿騎士、帝国騎士、そしてハンターは、全員敵の後方に回り込め。俺が正面から戦闘を開始したら、周囲にいる通常の魔物たちの討伐に専念しろ。以上だ」

「……それは、到底作戦とは言えません!」

「そうです! 聖女様をお一人で戦場に立たせるなど、騎士の矜持が許しません!」

アルベルトとクラムが、案の定、猛烈に反対してきた。


「あのな、魔王とその愉快な仲間たちは、普通の人間がどうにかできる仕様じゃないんだよ。お前らが近くにいても、俺の広域魔法の邪魔になるか、足手まといになるだけだ」

「しかし……!」

「お前たちの忠誠心は素直に嬉しい。だが、部下に無駄死にされる方が、上司としては精神的に一番キツいんだよ、察しろ」

アルベルトが、どうしても納得がいかないというように一歩進み出た。


「我々とて、せめて囮になるくらいは出来ます! 帝国の騎士をあまり舐めないでいただきたい!」

その必死な様子に、俺は思わずふっと笑ってしまった。


「お前ら、何か勘違いしてないか? これは俺が一人で寂しく戦うための話じゃない。敵を『完全殲滅』するための最も効率的な布陣だ。お前らは大人しく北側の丘陵の陰に潜んでいろ。俺の心配は無用だ。なぁに、仮に俺がここで死ねば、この世界ごと全員滅ぶんだ。なら、勝った後の美味い酒のことだけ考えていればいい」

アルベルトとクラムは、まだ何か言いたそうに口を噤んでいたが、俺は強引に話を締めくくった。 こういう時、ハンター協会のパウエルが、余計な口を出さずに空気を読んで黙っていてくれるのは本当に助かる。



俺は、神殿都市マリアベルから馬車で一時間ほど離れた、見晴らしの良い丘の上で、一人で魔王の軍勢が現れるのを待っていた。

完全に、俺一人きりだ。 そういえば、この世界に来てから、こうして完全に一人になるのっていつ振りだろうか。

前の世界で独身貴族を謳歌していた時は、一人で行動するのが当たり前だった。だが、この世界に転生してからは、なんだかんだで俺の周りには常に誰かしらが群がっていた。


――静寂の中でぽつんと佇んでいるうちに、だんだんと腹が立ってきた。


そもそも、魔王だかなんだか知らないが、一体なんなんだアイツらは。

せっかく、神殿都市マリアベルという最高の拠点を手に入れ、立派な自宅を得て、ようやく生活の腰を落ち着けられたというのに。 面倒極まりない魔の森の定期浄化業務もほぼ完了し、一段落ついたから、本当に久しぶりの有給休暇を取って、自宅の庭でダラダラと過ごすはずだったんだぞ。それを、突然の緊急トラブルで全て台無しにされ、この三日間てんやわんやの大騒ぎだ。


街は避難する人々で大混雑し、まともな買い物一つできず、この三日間、満足な飯すら食えていない。

風呂にも入れず、ひたすら右へ左へ指示、指示、指示。時間がなさすぎて、ほぼ徹夜状態が続いている。 いつも身の回りの世話を焼いてくれていた有能なシスターたちも全員避難させたため、手元にある食事は味気ない保存食のみ。お茶すら自分で淹れる暇がない。 風呂を準備する時間など当然なく、汗をかいた身体を冷たいタオルで拭き取るのが精一杯だ。洗濯もできないので、ここ数日、埃っぽい同じ服を着回している。


風呂に入りたい。石鹸を泡立てて、この肌の油分と埃をさっぱりと洗い流したい。 暖かいスープが飲みたい。シスターが淹れてくれる淹れたての紅茶を飲みながら、差し入れの茶菓子をつまんで、シスターたちと他愛のないお喋り(いちゃいちゃ)をして癒やされたい。


そんな俺のささやかな平穏を……。

地平の彼方に、うごめく巨大な黒い存在を目視した。


――あれが、俺の日常を害した敵か。

やってくれたねぇ、本当に。この世界は、俺のプライベートを破壊することに全力を捧げているらしい。これ以上ない最悪のタイミングで、悪い意味での想定外のバグをぶつけてきて、俺の足を引っ張ってそんなに楽しいか? ああ、楽しいんだろうな、クソ神め。

黒い霧を纏った塊が、丘の麓まで近づいてきた。


『貴様が、神の使徒か』

黒い人影のような禍々しい存在が、俺に向けて直接話しかけてきた。そのシルエットは、前世の有名な国民的RPGに出てくる大魔王のような、不気味な威圧感を放っている。 その左右を固める配下の二体は、巨大な狒々と、不気味な虎の姿をしていた。どちらも黒いモヤで形成された獣のシルエットだ。そのさらに後方には、地平線を埋め尽くすほどの膨大な魔物の軍団が控えている。


『答えよ』

「……まあ、そうなんだけどさ。なんだかな。今更お前と会話する必要、ある?」

『何だと?』

「いや、だって互いにこれから跡形もなく滅ぼし合う気満々でここにいるのに、会話って必要か? 何? もしかして、今から自分の境遇とか、俺たちの正義は〜、とか語っちゃう感じ? やめてくれよ、聞いてて気持ち悪いから」

『不遜な小娘が、貴様――!』

自称魔王が怒りを爆発させた瞬間、左右の狒々と虎が地響きを立てて俺に向かって突進し、空間を切り裂くような巨大な腕を振るってきた。


「ほらな。やっぱり会話する意味なんてないじゃないか」

凄まじい衝撃波が巻き起こったが、俺は完全に無傷だった。だが次の瞬間、俺を攻撃したはずの狒々と虎の巨大な腕が、ボロ雑巾のようにズタズタに引きちぎれ、天高く吹き飛んだ。


『な……何をした!?』

魔王が驚愕の声を上げる。が、コイツはまだ話しかけてくるのか? 本当に何がしたいのか分からん奴だ。漫画やアニメじゃあるまいし、現実の戦いの中で、わざわざ自分の手の内を丁寧に説明してやる馬鹿がどこにいる。


俺は無言のまま、凄まじい速度で狒々と虎に向かって突進した。

華奢な子供の身体で突進? と思うだろうが、これは魔の森の開拓の過程で俺が独自に開発した、移動・防御・攻撃をすべて一元化した複合結界術式――名付けて『ジャイロ結界』だ。 複数の強固な結界帯を球体状に高速回転させ、その中心に俺自身が配置される構造になっている。外郭の結界はあらゆる攻撃を弾き飛ばし、さらに術式の構造変化によって、触れるものすべてを微塵切りにする鋭利なノコギリの役割も果たす。先ほど二体の腕を引きちぎったのも、この回転結界の反作用だ。


狒々は、再度俺に近づこうとした瞬間に残った別の腕を刈り取られ、痛みで仰け反った一瞬の隙に、両足も根元から削り取ってやった。それを見た虎が狂乱状態で噛みつき攻撃を仕掛けてきたのだが、知能が低い獣型特有の、最悪の悪手だ。突っ込んできた口の中へジャイロ結界をそのままねじ込み、脳漿ごと綺麗に貫通してやった。

二体の巨獣は、地響きを立てて倒れ、ピクリとも動かなくなった。


復活イベントとかあるか? と一応身構えたが、そのまま光の塵となって消えていく。

……しないみたいだな。よかった、面倒な工程が減って助かる。


「さてと。残りは一体か……」

『そ、そんな馬鹿な……! 魔の森の膨大な魔力を凝縮して生み出された、我が至高の眷属たちが、こうもあっさりと……!?』

俺は、一切の無言のまま、魔王とやらに向かって一歩ずつ歩を進める。

正直なところ、こいつがなぜ人間の言葉を話せるのか、そして会話ができるほどの知能がありながら、なぜわざわざこんな全面戦争(攻撃)を仕掛けてきたのかが、全く理解できなかった。 今回の棲み分け計画において、俺たちは魔の森の危険地帯は浄化するが、森のすべてを消滅させるわけではない。もしこいつらが、初手で「武力行使」ではなく「対話による交渉」を選択していれば、彼ら独自の生存圏を確保できる可能性は十分に高かったのだ。 にもかかわらず、いきなり精鋭を虐殺し、わざわざ俺に宣戦布告をして突撃してきた。

会話のキャッチボールが成り立つ知能がありながら、やっていることはただの無謀なアホの子だ。

無言のまま、絶望に顔を歪める魔王の前に立つ。 俺は、ふっと冷酷に笑った。


コイツをここで徹底的に消滅させ、ついでに後ろの軍勢ごと森を完全浄化する。それで今回の世界救済計画は、本当の意味ですべて完遂だ。

計画さえ終われば、あとは正真正銘、ゆっくりダラダラと過ごしてやる。神殿都市マリアベルの奥に、一般人立ち入り禁止の、俺だけの広大なプライベートエリアを作ろう。そこで可愛い犬でも飼って、のんびり余生を送るんだ。


『おのれぇ……! 神の飼い犬めが……!』

魔王はやたらと「神」という言葉を強調して呪詛を吐く。なるほど、コイツもあのクソ神の身勝手な仕様の被害者なのかもしれない。だが、そんなことは俺の知ったことではない。


「アホか。文句があるなら神に直接言え。俺に言うのはお門違いだ、ボケ」

そのままジャイロ結界の出力を最大にし、魔王の懐へと突進した。


容赦なく腹に巨大な穴を開け、四肢を細切れにちぎり飛ばし、最後はその頭頭部を上から容赦なく踏み潰した。 終わってみれば、俺個人の戦力値からすれば完全に余裕の勝利だった。

だが、今回の騒動のせいで都市住民の避難に伴う巨額の経済的損失が発生し、守備隊の全滅による貴重な人的リソースの損失も出た。ただただ、俺のスケジュールに多大な迷惑だけを掛けられたというのが、今回の実態だ。


「聖女様――!」

後方から、アルベルトやクラムたちが騎馬を飛ばしてこちらに向かってくるのが見えた。彼らも、後方の雑魚魔物の討伐タスクを上手く片付けてくれたようだ。 さあ、さっさと残りの残務処理を終わらせよう。


こうして、突如として発生した「魔王騒動」は実にあっけなく決着した。 その後、魔の森の残り僅かなエリアの浄化も当初の計画通りにすべて完了し、人類はついに、長年苦しめられてきた魔物の脅威から完全に脱却した。


世界に、本当の意味での「人間の時代」がやってきたのだ。


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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