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おっさん聖女の異世界救済計画 〜ジャマなやつらは結界で潰す〜  作者: せひろかつみ


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第14話:有給休暇を破壊する理不尽(魔王)

世界救済計画は、信じられないほど着実に進捗していた。

現在、俺の結界魔法によって安全が完全に確保された魔の森の中央部には、天を衝くような巨大な塔が聳え立っている。 ここが、俺が全方位に向けて最大出力の浄化を行い、初手で魔物の本拠地を根本から消滅させるための最前線だった。


当初、魔の森の中央部にこのような建造物を建てるのは不可能とされていた。

だが、俺の結界魔法で森を横断できるかを検証したところ、驚くほどあっさりと道沿いに結界が張れ、その維持も量産した聖魔石で十分に補えることが判明した。

最初の頃こそ強力な魔物に邪魔をされたが、その都度まとめて殲滅していたため、学習能力があるのか、今や結界への攻撃自体がほとんどなくなっている。ここ一帯が完全に「俺の縄張り」として魔物たちに認知されたのかもしれない。


塔の完成は後わずかだ。 この初手の中心部攻撃が成功すれば、あとは各国が足並みを揃え、森の端からじわじわと残党の浄化にかかる手はずになっている。

専門家の分析によると、先にこの中央部の魔物を殲滅しておかないと、かつての辺境のような大規模な氾濫が起き、手痛いしっぺ返しを食らうらしい。


年が明けてから三十日後、俺は魔の森の中央部にある塔の頂上にいた。

この時代においてはオーパーツとも言える、最先端の建築技術で作られた高さ六〇〇メートルはある塔だ。

当然エレベーターなどという便利なものはないので、螺旋階段を丸一日かけて登り、ようやく頂上に辿り着いた。これだけでもかなりの重労働だ。


眼下に広がる魔の森の中央部は、巨大な盆地のようになっていた。魔素が溜まりやすく、強力な魔物の巣窟となっている。 600メートルの高さから見下ろす視界は、およそ100キロ程度。この中心部を、有視界の直径200キロに及ぶ円形の浄化魔法で一気に消滅させるのが今回の任務だ。

魔の森全体の規模から言えばまだまだ一部のエリアだが、危険度的には最も厄介な場所である。


まあ、本音を言えば、俺自身が後からチマチマと出張浄化をするのが嫌なので、「魔物の中心部を一撃で殲滅する!」と大見得を切って、各国のやる気と予算を引き出すためのパフォーマンスでもあるのだが。


「聖女様、時間です」

護衛の神殿騎士団長のクラムから開始の合図を受け、俺はゆっくりと両手を掲げた。 くるりとその場で回って視界のすべてを範囲指定していく。

ここには見届け人として、教会関係者だけでなく、帝国や各国のベテラン調査員たちも大勢詰めかけている。こうした演出は非常に大事だ。


「――穢れた大地よ、浄化されよ」

言葉を発した瞬間、真下からカメラのフラッシュのような強烈な光が疾走した。 光は波紋となって広がり、あの辺境の時のように、美しい光の雲海となって盆地を完全に覆い尽くした。


浄化は見事に完了した。 光が収束した跡を見て、見学人たちは互いに手を取り合って涙を流し、大喜びしている。この中央部の最凶エリアが消滅するだけで、世界全体の危険度が一段階下がるらしい。

俺はその後、数箇所の魔素が強く残るポイントのピンポイント浄化を淡々と行い、すべての任務を完了させた。これで残った浅い魔の森は、各国と地元のハンターたちが十分に管理していけるはずだ。


ようやく、この異世界でも「早期リタイア(FIRE)」の文字が見えてきた。 とりあえず、自分の街へ帰ってゆっくりしよう。神殿の奥に特注で作らせた、お気に入りの露天風呂にゆっくりと浸かりたい。



それから暫くの時が流れた。 俺の担当する浄化エリアも残り僅かな地域のみとなり、大仕事のほとんどが片付いた、とある休日のことだ。

その日はとても穏やかな天気で、心地よい涼しい風が吹き込んでいた。俺は久しぶりにまとまった休暇を取り、新築したお気に入りの小庭園で、優雅に温かいお茶を楽しんでいた――のだが、その平穏は最悪な形で破られた。


「聖女様! 大変です!」

「なんだよ……。せっかくの休暇くらい、ゆっくりさせてくれよ」

息を切らして飛び込んできた報告員に、俺は不機嫌さを隠さずに生返事をする。だが、続く言葉は俺の眠気を完全に吹き飛ばした。


「聖女様の担当領域である浄化未完了エリアにて、突如、魔物の氾濫が発生! さらに魔物の中に、人間の言葉を流暢に話し、自らを『魔王』と称する超高ランク個体の発生を確認! 現地の守備隊が、一瞬で全滅いたしました!」

「はぁ!? 魔王……!? そんなんいるの、この世界!?」

俺は呆然として立ち上がった。隣にいたカランベルンに視線を向けるが、彼もまた見たこともないほど困惑した様子で首を振った。


「いえ、私もこれまでの歴史資料でそのような存在は聞いたことがありません……」

俺はそれを聞いて、思わず両手で頭を掻きむしった。


「なんだよそれ!? どんなクソゲーだ!」

最近は、話の通じるまともな人間関係と、計画通りに進む予定調和な仕事ばかりだったため、このあまりに突然で不条理なバグに、見事なまでに意表を突かれてしまった。


「いえ、大変なのはこれからです! その魔王を筆頭とする軍勢が、現在、この神殿都市マリアベルに向けて直線的に侵攻してきています!」

「なんで俺の本部(自宅)に直行してくるんだよ!?」

ラスボスが何の前触れもなく突然ポップして、いきなり本社ビルに突っ込んでくるようなものだ。マジでふざけるな。


「ああ、くそ! 作戦会議だ! 主要メンバーは、すぐに作戦室に集合しろ!」

急ぎ作戦室に集まったのは、神殿都市マリアベルの主要幹部たちだ。

大司教カランベルン。ハンター協会のパウエル本部長。神殿騎士団長のクラム。そして帝国から派遣されているマリアベル騎士団長のアルベルト。その他、優秀なサポートスタッフたち。 室内の中央に置かれた重厚なオーク材のテーブルに、急ぎ最新の地図が広げられ、現状の報告がなされた。


報告によると、マリアベルから北西にある魔の森の未浄化エリアに、突如として巨大な黒い竜巻が発生。その中から三体の巨大な魔物が姿を現したという。 急ぎ現地の守備隊が迎撃準備を整えたが、その三体の戦闘力はこれまでの魔物とは次元が違っており、守備隊は文字通り一瞬で蹂躙、崩壊した。 そしてその際、遠くから観察を続けていた斥候の隠密部隊に向けて、その中心にいた個体が明確な意思を持って言い放ったという。


『我は魔物の王であり、魔王。人間どもに伝えよ。我が領域を侵す神の使徒を、この手で殺しに行く、と』

斥候曰く、「あえてメッセージを伝えるための生見本として見逃された」とのことだった。


「今の話から察するに、目的は完全に俺個人の排除。そして、明確な知能を持っているな。実に厄介だ」

俺が腕を組んで呟くと、帝国の騎士団長であるアルベルトが、非常に言いにくそうに口を開いた。


「……魔の森を監視していた我が帝国の守備隊は、いずれも一騎当千の精鋭です。その彼らがなすすべもなく蹂躙されたとなると、斥候の報告通り、恐縮ながら聖女様以外ではまともな戦力にならないかと……」

「馬鹿な! ならば聖女様お一人で対応させるつもりか!」

神殿騎士団長のクラムが激昂し、ガン、と激しく机を叩いて反論した。


「冷静な戦力分析を報告したに過ぎん。理想論だけで勝てる戦術が立てられるか」

アルベルトがクラムを鋭い視線で睨みつける。

俺はパン、と一度大きく手を叩いて、二人の視線をこちらに強制的に向かせた。


「論じるのは、まずは全ての報告を聞き終えてからだ。感情的になるな」

状況を整理すると、魔王を含めた三体の特殊な魔物が、なぜか先頭に立って直線的にこの神殿都市マリアベルに向けて進軍している。

敵の狙いは俺、聖女の排除。 帝国の精鋭が一瞬で消された以上、俺以外の戦力を防衛線に配置したところで、ただの無駄死にであり自殺行為だ。


「それで、ここまで来る予想到達時間は?」

「斥候の移動速度からの逆算ですが……およそ三日後には、このマリアベルに到達するかと」

「よし、時間がないな。まずは全市民の即時避難だ。軍人以外の民間人は全員だぞ。神殿騎士の半分は、即座に避難誘導のタスクに回れ。全体の指揮はカランベルン、お前に任せる。帝国騎士と残った神殿騎士、それとハンターたちは、武器と食糧の調達に奔走してくれ。城壁に籠もる防衛戦は無駄そうだから、やるなら街の外での野戦だ。馬も動かせるだけ準備しろ。まずは早急に足元を固めるぞ。具体的な戦略や戦術は、避難が完了してから決める」

「聖女様! 私は神殿に残り、あなた様と……!」

カランベルンが悲痛な声を上げ、残留組に残ろうとするが、俺はそれを手で制した。


「ダメだ。行政の長として、カランベルン、お前には市民の安全を確保する責任がある。自分の責務を全うしろ」

カランベルンが悔しそうに顔を歪める。


「……そんな、まるで今生の別れのような顔をするな、縁起でもない。あの魔物どもは俺が全員殲滅する。最初から最後まで、この計画の目的は変わらんよ。さあ、時間がないんだ、動け動け!」


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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