第13話:世界救済計画と、引き際の美学
「帝国を率いて、戦争一辺倒だった方針を改革し、即位して三十年。国土、戦力、経済のすべてで世界最大の国家となった。歴史的にも稀に見る太平の世を治めてきたという自負がある。だからこそ……余は、帝国の行く末をずっと見ていたいのだ。そのためには神となり、帝国の守護者として永遠の命を得ることが必要であると考えた。其方は神に会った。余も会えないだろうか……」
あー、権力者あるあるの「永遠の命」ってやつか。
ただ、この皇帝はなまじ能力があって責任感が強すぎるから、「自分が退いた後の帝国が心配だ」「無責任に放り出せない」という思いが強すぎて、引き際を見失っているのかもしれない。
さて、どう切り返そうか。
「俺は神に会ったことがあるが、先ほども言ったようにただの通達だ。それに、俺は神の使徒であり聖女ではあるが、おそらく不死でも不老でもない。あくまで使命を与えられた人間でしかない。この世界に人から神になった事例があるかどうかは知らないが、少なくとも俺は、それが可能とは思えない」
ぶっちゃけると「好きに自称神にでもなれば?」とも思うが、ここで適当にごまかしたり嘘を言ったりすると、後で辻褄が合わなくなり、余計に揉めることになる。経験則からそれはよく分かっている。
「皇帝陛下が、自らの実績を以て帝国の守護者として神のように崇められるなら、俺はそれを否定しない。だけど、陛下が求めているのはそういうことではないのだろう」
皇帝は、少し熱の入った自らの頭を冷やすように息を吐き、「そうか」と言って背もたれに寄りかかった。 一縷の望みを持っていたのだろう。
だが、人は死ぬのだ。俺だっておっさんの身体を失って、こうして別の人間としてここにいる。俺はこの老人の夢を諦めさせる立場にないし、なりたいとも思わない。
会談は静かに終わった。 皇帝は約束を守り、俺たちの計画は実行フェーズへと移行した。 帝国官僚、教会のスタッフ、ハンター協会、各国との調整を行う外交官。優秀な人員が揃い、物事は驚くほどの速度で進んでいく。
一年後には、『神殿都市マリアベル』と呼ばれる、本神殿を備えた新たな街が完成し、教会本部の機能がすべて移行した。 また、計画を動かすための組織も正式に設立され、調査、検証、交渉、法務、財務、軍務、研究などの専門部門が生まれた。
魔物の核である魔石を利用した、浄化のための魔道具なども次々と開発されていく。 聖魔法は俺にしか使えないから、魔石に俺の魔法を極限までつぎ込み、浄化の核となる『聖魔石』とするシステムを構築した。
俺はひたすら魔法をつぎ込む作業に追われることになったが、面倒臭くても、すべての場所に俺自身が行くなんて不可能なのだから、これが一番合理的だ。
こうして、次々と問題点を洗い出しては解決し、具体案を次々と実行プロセスへと移していった。
◇
数年の歳月が経過した。 帝都で壮大な『世界救済計画・開式展』が催されることとなり、俺たちは再び帝都にいた。
帝国の貴族たち、各国の要人も招かれた式典に出て、柄にもない演説をかまし、その後の晩餐会で美味い飯を食って、シャンパンを飲みながら夜風に当たっている。 ちなみに、今日の衣装だが、ドレスなわけがない。カランベルンからはドレスを強く勧められたが、全力で拒否して、動きやすい教会聖職者の式典衣装を通した。
そんな時、皇帝の侍従が現れて、再び皇帝との会談となった。
「余の治世で、ついに人類の救済が始まる。余は歴史上でも類稀な統治者として名を残すだろうな」
「ああ、歴史の教科書で一番最初に覚える名前になるだろうさ」
「それでも……」
これは愚痴だ。呼ばれた時からわかっていた。
彼は自分の肉体の衰えから、余命を感じ取っているのかもしれない。
「それでも余は、帝国の未来を見たいのだ」
皇帝は俺を見ず、自ら握った拳をじっと見つめていた。 全てを平伏せられる絶大な権力も、死には効かない。死への恐怖なのか、あるいはこの手で作り上げた国への執着の強さからなのか、その拳にはすがるような力が入っていた。
まったく、凡人にはわからん贅沢な悩みだよ。仕方がない。神の使徒であり、人類を救う聖女である俺が、綺麗な引き際を教えてやるしかないか……。
「皇帝。お前は死ぬ。どんなに偉大な皇帝であろうとも、生物である以上、必ず死は訪れる。だがな……お前は『死ななければならない』んだ。お前が死なずにずっと居座り続ければ、帝国はいつか確実に停滞する。
国家の停滞は死と同意だ。政治は腐敗し、経済は滞り、平穏な治世は変化のない古い慣習によって腐り果てる。変化しない世界は崩壊するんだよ。
だから、お前は死ななければならない。偉大な皇帝のまま美しく死んで、後世に神となるんだ。死んで席を譲らなければ、神にはなれないんだぞ」
皇帝は俺を見た。そして、今にも泣きそうな顔で、しかしどこか救われたように笑った。
「……神は残酷だな」
「ああ、クソ神だ」
運命は定まった。人類の救済が始まる。そして、その偉大な結果は、この皇帝を間違いなく帝国の神として永遠に語り継がせるだろう。
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本作はAI(Gemini)を利用し、校正を行っています。
基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。




