文化祭の準備は恥ずかしい第九話
文化祭の準備が本格的に始まったある日、文化祭の出し物の案出しをしている。
合宿で描いた絵に加えて、追加でひとつ作品を飾ることになっているからだ。
追加の題材を決めている最中、雫は部長に怒られていた。
「そんなの却下だ」
雫が珍しく肩を落として落ち込む。
「もう、部長ったら……あんなに怒ることないのに……」
部長からの説教が、よほど堪えたらしい。
「お前はもっと怒られたほうがいいよ」
和葉は容赦なく突き放すように言った。
「わ〜、先輩までひどいですね。
『和葉先輩のヌードデッサン展』なんてどうですか?って提案しただけなのに……」
「それが問題だって言ってるの!!」
「何でですか? 先輩のこの素晴らしい体を全世界に広める、最高のチャンスなんですよ!」
「う、うるさい! そんないい身体じゃ……
じゃない!! 何で裸にならなきゃいけないのよ!」
和葉が真っ赤になって叫ぶと、雫は目を輝かせてさらに畳みかけた。
「だって先輩、服を着てると勿体ないんですもん。
あの柔らかい曲線とか、鎖骨のラインとか……」
「具体的に言うな!!」
「合宿の時の水着姿。今でも目に焼きついているんですよ。お風呂に一緒にはいれない事。ほんとに悔しいです……」
にやけながらも悔しそうな顔をする雫。
「決めた。お前とは絶対にお風呂一緒にはいらないからな!」
後ろで聞いていた薫がため息をつきながら言った。「雫ちゃん、普通に似顔絵コーナーとかでいいんじゃない?」
泉希も控えめに同意する。
「ヌードは……さすがに学校的に厳しいと思いますけど……」
少し間を置いて、泉希は我慢出来ず続けた。
「でも、芸術の一つとして考えると、ヌードって素晴らしいと思います。
人体の曲線や陰影、生命の温もり……それを描くのは、美術部としてとても挑戦しがいのある題材だと思います」
「っえ、泉希ちゃんもそんな事言うの?」
「ごめんねー、和葉。泉希って芸術絡むと、こうなるのよ」薫はやれやれとした顔で和葉に言う。
「泉希も分かってるね! 先輩、やっぱヌードやりましょうよ!」
「それでも駄目だ!」
「え〜、先輩、せめて下着姿だけでも……!
芸術の名のもとに!」
「却下!! 絶対に却下!!」
「芸術の為に一肌脱いでくれても良いのに……」
和葉が全力で拒否すると、雫はしょんぼりしながら呟いた。
そして、いつも笑顔に戻ると
「わかりました……。
でも先輩が文化祭で一番輝く姿は、私がちゃんと目に焼き付けますからね♡」
「焼き付けるな!」
そんな会話をしていると部長が手を叩きながら割って入る。
「いい加減決めるぞ。ヌードは諦めろ。雫と泉希」
「あれ?私まで怒られているんですか?」泉希は意表を突かれた顔をした。
結局、追加の作品は、和葉のヌードでは無く似顔絵を描くことに決まった。
和葉は机に突っ伏しながら、心の中で呟いた。(……こいつが本気で私のヌード描こうとしてたのが、一番怖い……)
もちろん、そんな本音は絶対に口には出さない。 福女美術部の、文化祭準備はまだまだ騒がしく続いていくのだった。
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