合宿では夏を満喫する第八話
合宿2日目。
待ちに待った海遊びの日。
和葉は昨日買ったばかりの紺色のビキニに着替え、少し照れながら浜辺に出てきた。
しかし、隣に並んだ雫を見て目を丸くした。
「……雫?それ、なぁに?」
「何って、パーカーですが……」
「人の水着で散々遊んどいて、雫がパーカーとは何事じゃーー!!」
和葉は呆れながら、雫に近づくと、パーカーの上から雫の脇腹を両手でぐにゅっと掴んだ。
「ひゃうっ!?」
雫が変な声を出して飛び上がる。
「ほら、脱げ!!
お前がやる側だけじゃなくて、やられる側も味わってみろ!」
和葉が意地になってさらに揉んでやると、雫の顔が真っ赤になり、揉み手を振り解くと砂の上に転げ込んだ。
「先輩に襲われて………もう、お嫁にいけません……」
雫は両手で顔を覆いながら、情けない声で呟いた。「大げさだよ! お前が今まで私にしたこと考えたら、これくらい全然!」
和葉が言い返すと、雫は指の隙間から上目遣いにこちらを見て、小さな声で言った。
「先輩……責任取ってくださいね」
「は?」
和葉の動きがピタリと止まった。
少し離れたところで薫と泉希がその様子を見ていた。
「薫先輩。またあの二人いちゃいちゃしてますよ」
「ほんと、飽きないね。あの二人」
「和葉先輩! 雫! 海に入りましょうよ〜」
泉希が2人に言う。
「折角来たのんですから、泳ぎましょう先輩」
雫が言うとファスナーをゆっくりと下げ、パーカーを脱いだ。
その下から現れたのは、白を基調としたフリル付きのビキニだった。
胸元と腰の部分に控えめなフリルが付いているものの、全体的に布面積は少なめで、雫のスタイルの良さが際立っている。
和葉は一瞬固まった後、慌てて目を逸らした。
「どうですか?先輩。可愛いでしょ」
雫がくるりと回ってみせる。
「う、うん……可愛いけど、結構大胆だな」
「はい!先輩にちゃんと見てもらいたくて選びましたから。似合っているでしょ?」
白いビキニが陽光に映え、濡れた砂浜の上で妙に色っぽく見えた。
「…………似合ってるよ。バカ」
和葉がぼそっと呟くと、雫の顔がぱっと輝いた。
「やった! 先輩に褒められました!」
その後、二人は泉希や薫と共に海に入った。
最初はビーチバレーをした。
雫は和葉と同じチームになると、わざとボールを和葉の胸に当てたり、
「先輩、ナイスレシーブです!」と抱きついてきたりと、相変わらずのペースで和葉を翻弄した。
その後は波の上で浮き輪に寝転がる和葉を見つけると、雫が悪戯っぽく笑って近づいた。
「先輩〜、寝てる場合ですか?」
ぐいっと浮き輪をひっくり返すと、和葉は派手な水しぶきを上げて海に落ちた。
「ちょ、ちょっと、雫!!」
「油断しましたね!」
和葉が這い上がろうとすると、今度は本気の追いかけっこが始まった。
雫は笑いながら逃げ、捕まれば和葉の腰に絡みつき、
和葉が逃げればまた飛びついてくる。
波に何度も飲み込まれながらも、二人は楽しそうに笑い声を響かせていた。
日が陰り、周囲が橙色から紫色に変わり始めた頃、
美術部の面々は合宿所の前で手持ち花火を始めた。 火を消すためのバケツを囲み、線香花火を落とさないようにじっと見つめる和葉と雫。
「先輩……今日、すごく楽しいです。花火も、海も」
雫が小さな声で言った。
「そうだな。こうして来れて良かった」
「また、来年もこうして遊びましょうね」
二人の線香花火は、ほぼ同時に砂の上に落ち、
小さく輝いた後、静かに消えていった。
和葉は心の中でそっと思った。
(来年も雫と……この時間が続けば良いな……って、ちょっと待て! 私!)
もちろん、そんな本音は絶対に口には出さない。 波の音が遠くから聞こえる中、福女美術部の夏合宿は、
賑やかで、少しだけ甘い余韻を残して幕を閉じた。
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