水着が無いなら買うしかない第六話
夏休みも半ばに差し掛かる頃、部長が美術室で皆に告げた。
「来週から夏の合宿に行く。各自、忘れ物がないように」
部員たちに質問はないかと問いかけると、雫が勢いよく手を挙げた。
「部長、合宿所は海の近くだと聞きました。泳げるんですか?」
真剣な眼差しで聞く雫に、部長は頷いた。
「ああ、そのような時間も設けている」
部長が去った瞬間、雫の顔がぱっと明るくなった。「先輩! 聞きましたか? 泳げますよ、海!」
「あぁ……私、水着持ってないんだよね〜。だから浜辺でみんなのこと見てようかな」
和葉が面倒くさそうに答えると、雫のほっぺがぷくっと膨らんだ。
「駄目です! 無いなら今から買いに行きますよ! ほら!」
雫は和葉の腕をぐいぐい引っ張りながら、学校を後にした。
二人が到着したのは最寄りのショッピングセンター。
案内板で水着売り場を探しながら、和葉がぼやいた。
「ほんとに買うの……?」
「無いなら買うしかないじゃないですか! 何ですか? 私に水着姿を見られたくないとでも言うんですか?」
「……うん、見せたくはないな」
「っな、冗談はほどほどにしてくださいよ!」
「痛い痛い、分かったから腕離せって」
「じゃあちゃんとついてきてくださいね」
水着売り場に着くと、雫は目を輝かせて次々と商品を手に取った。
「これも良いな……あ、こっちも可愛い……先輩、これなんてどうですか?」
雫はマイクロビキニや、面積の少ないものを見せてくる。
「なんで全部際どいものばっかなんだよ!」
和葉はムリムリと顔を左右に振りながら答えた。
「もー、しょうがないですね〜。じゃあこれは?」
「まぁ……これなら、ギリギリ許せるかも……」
「はい! じゃあ試着しに行きましょう!」
試着室の前まで来ると、雫は当然のように和葉と一緒に入ろうとした。
「ちょっと待てぇ! なんで一緒に入るんだよ!」「え? 試着しているところを見ないと、サイズとか……」
「あとで見せるから出てけ!」
和葉は慌てて雫を試着室から押し出し、カーテンを閉めた。
「先輩のケチ〜」
「うるさい!」
そんなやり取りをしていると、カーテンがそっと開く。
「……どう?」
紺色のバスト下で紐が交差するデザインのビキニを着た和葉が、恥ずかしそうに立っていた。
雫は一瞬固まった後、頰を赤くしながら目を輝かせた。
「先輩……やっぱスタイル良いですね!
すごく、すごく似合ってます。
やっぱり先輩の身体、全部私のものですよね?」「勝手に所有権主張すんな!!」
和葉が真っ赤になって叫ぶと、雫はくすくす笑いながらも、
どこか甘い目で和葉を見つめていた。
和葉は小さくため息をつきながら、心の中で思った。
(……このまま合宿に行ったら、絶対に大変なことになる気がする……)
もちろん、そんな予感はまだ、口には出さなかった。
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