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その後輩、変態につきご用心  作者: ピピサビ


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4/8

弱った後輩は嫌な第四話

結局あの日、雨が少し弱まったタイミングで薫から傘を借り、和葉と雫は相合い傘で帰った。

 雫は帰り道も和葉にべったりくっついていたのを覚えている。

 そして次の日——。


 雫がいない美術室。和葉はなんとなくそわそわしながら絵を描いていた。

「和葉、雫ちゃんのお見舞いはいいの?」

 見かねた薫は和葉に言った。

「お見舞い? 別に……みんなが行くなら、ついでに行ってあげてもいいけど?」

 (照れ隠しだな……)会話を聞いていた泉希は思った。


 部活後、雫の家に美術部の和葉と薫。泉希はお見舞いに来た。

インターホンを押すと、雫に似て可愛らしい女性が出て来た。雫の母親だ。

母親は雫の部屋を案内してくれた。

「何で雫が風邪引くんだよ!」

 和葉は部屋に入るなり、ベッドの横に立ち、ため息混じりに言った。

 

 布団にくるまった雫は、鼻声になりながらもにこにこと笑っている。

 「私とした事が、風邪を引くなんて……

 でも、先輩が看病に来てくれたので、風邪引いて良かったかもですね♡」

 「来て損した。」

 和葉が即答すると、雫は「えー」と小さく抗議の声を上げた。

 「ひどい……。先輩の冷たい言葉が、私の心にまで染みて熱が出そうです……」

 「余計なこと言うから余計に熱出してるんだろ! ほら、ちゃんと薬飲んで」

 和葉は持ってきたスポーツドリンクをストロー付きで差し出す。

 雫は上目遣いに和葉を見ながら、素直に口を開けた。

 「ん……おいしいです。先輩が持ってきてくれたから」

 「……普通のドリンクだよ」

 和葉が頰を少し赤らめながらタオルを交換していると、雫が熱っぽい声で続けた。

 「っあ、先輩……すみません気が利かなくて。

 一緒に布団入りたかったですよね?

 はい、ここどうぞ。一緒に入ったら温かいですよ?」

 「どんな気付かいだよ! 絶対に入らんわ」

 「えー、でも先輩、昨日は私が後ろから抱きついて温めてあげたのに……

 今度は先輩が私の温もりで治してあげてください」「自業自得だろ! 誰がわざわざ傘忘れて雨に濡れようとしたんだよ!」

 雫はくすくすと笑いながら、布団の中から手を伸ばして和葉の指を掴んだ。

 「先輩の手、冷たい……。

 やっぱり看病してくれるの、嬉しいです。

 先輩が私の額に手を当てて『熱あるね……』って心配してくれる顔、ずっと見たかったです」

 「見てねーよ! 心配なんかしてねーし!」

 そう言いながらも、和葉はちゃんと雫の額に手を当てて熱を確かめていた。

 その様子を、部屋の外から少し扉を開けて見ていた薫と泉希が小声で話す。「完全に看病モード入ってるよね、和葉」

「和葉先輩、ツンデレ全開です……可愛い」

雫が熱で少し潤んだ目で和葉を見つめながら、最後に小さく囁いた。

 「先輩……風邪が治ったら、お礼に今度は私が先輩を朝まで看病してあげますね?」

 「いや、風邪引いてないから!!」

 和葉の悲痛な叫びが、学生寮の部屋に響いた。

 和葉は心の中でそっと思った。

(……まあ、珍しく雫が弱ってるのを見るのも、ちょっと心配だけど……嫌いじゃないかも)

 もちろん、そんな本音は絶対に口には出さない。 福女美術部の、いつもの騒がしさとは少し違う、静かで少しだけ甘い午後が続いていた。


お読みくださりありがとうございました。

感想等頂けたらモチベーションアップになりますので、よろしくお願いします。

今後は1話ずつ毎週水曜日9時半と土曜日の17時半に投稿します。

全13話を予定しています。

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