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40-4・立ち塞がる粉木~アデスvsザムシード

-文架市-


 燕真&紅葉はホンダ・NC750Xに乗り、佑芽&麻由はホンダ・VFR1200Fに乗り、YOUKAIミュージアムまでの帰路を急ぐ。文架大橋を通過して、東詰交差点を右折。ここまで来れば、目的地は目と鼻の先だ。

 しかし、左側に見える鎮守の森公園を通り過ぎようとしたその時!


「んっ!?」


 突然、巨大蝙蝠が飛来して進路を妨害!燕真達が急ブレーキで停まると、見覚えのある巨大蝙蝠は、公園内を案内するようにして飛んでいった。


「今のは、粉木ジジイのコウモリか?」


 それは、粉木勘平=異獣サマナーアデスが契約をしている蝙蝠型モンスターだ。


「じいちゃんが、呼んでるのかも。」

「行ってみよう!」


 YOUKAIミュージアムには監視者(高菱&田井)がいるので、「話しにくい」と判断した粉木が、公園で待っていてくれたのかもしれない。車輌禁止の公園だが、「今は緊急事態」なので、燕真達はバイクのまま公園内に乗り入れた。


「んぉっ!やっぱりいたっ!」

「砂影の婆さんもいるのか?」

「あれぇ?なんで、ママも一緒にいるの?」


 蝙蝠型モンスターを追って公園の中央付近まで行くと、粉木、砂影、そして紅葉の母・有紀が待っていた。燕真は合流できたことに安堵をして、タンデムの紅葉は3人に向かって大きく手を振った。だが、粉木や有紀に、「弟子」もしくは「娘」の無事を確認して安心する様子は無い。険しい表情のまま、寄ってくる燕真達を眺めている。


「ゴメン、爺さん。派手に命令無視して、紅葉を連れてきちゃった。」


 職務怠慢は百も承知している。合流するなり、燕真はバイクから降りて、粉木に深々と頭を下げた。


「また、爺さんに迷惑を掛けることになるだろうけどさ、

 それでも、紅葉の護衛は、他人任せにしたくないんだ。」

「それがオマンの答えなんやな?」

「ああ、そうだ。紅葉のことは、俺達で守りたい。」

「そうか、よう解った。」


 燕真は、粉木が納得してくれたと解釈して、嬉しそうな表情で顔を上げた。だが、粉木に睨み付けられ、燕真の笑顔は直ぐに消える。


「オマンから押し付けられる迷惑は・・・いや、オマンとの縁は、これで終いや。」

「・・・え?」


 粉木が目配せをすると、有紀の隣に氷柱女が出現。氷柱女の発した念が氷の結界を作り、その場にいる全員を包んだ。


「これで、もうオマン等は逃げられん。」

「どういうつもりだ?」

「ワシは・・・退治屋の職務を果たす!」


 変身アイテム=サマナーホルダを正面に翳す粉木!


「変身っ!」


 全身が輝いて、異獣サマナーアデスへと姿を変える!


「爺さん?」


 粉木が怒る理由は理解できる。だが、燕真には、粉木が変身をする目的が理解できない。


「とんでもない事をしてくれたな、燕真!」

「命令無視は承知している!2~3発ブン殴られる覚悟だってしている!

 だけど、なんで変身を!?」

「言ったはずだ!退治屋の職務を果たすとな!」

「ちょっと待ってくれ!」


 アデスがサーベルを抜刀して、問答無用で斬りかかる!燕真が慌てて飛び退くと、アデスはバイクのタンデムに跨がったままの紅葉を睨み付けて、サーベルを振り上げた!


「んぇぇっっ!?」

「狙いは紅葉っ!?・・・幻装っ!」


 燕真は反射的にザムシードに変身!裁笏を装備して紅葉の前に割って入り、アデスが振り下ろしたサーベルを受け止めた!


「本気なのか、爺さん!?」

「なんで、じいちゃんがァタシを!?」

「本部の命令を粉木さんが?」

「どういうことですか、粉木さん!?」


 驚いたのはザムシードと紅葉だけではない。佑芽は、粉木が「紅葉討伐」の尖兵になったことが納得できない。麻由は、昨日まで紅葉と仲良くしていた粉木が、紅葉に刃を向ける状況を理解できない。


「燕真!オマンの行動は問題だらけや!

 命令を無視して本部に楯突いただけでも解雇もんやのに、

 統括責任者を殺害し、封印の結界を崩しおった!

 これでは、言い逃れのしようがない!」

「な、なんのことだ!?俺は、紅葉と葛城さんを襲った妖怪を・・・」

「オマンが倒したんは、妖怪やない!本部から派遣された牛木CSOや!

 オマンは、討伐対象のお嬢と組んで、牛木CSOを殺害したんや!」

「・・・なに?」


 ザムシードは脳内に押し寄せてくる情報を整理できない。

 紅葉討伐ってなんだ?本部の目的は護衛ではないのか?

 牛木CSOの殺害ってなんだ?倒したのは妖怪じゃないのか?

 封印の結界を崩壊させた件に関しては、何のことかすら解らない。

 戸惑いで体を硬直させたザムシードの腹に、アデスの強烈な蹴りが叩き込まれる!体勢を崩したザムシードに、アデスはサーベルの乱打を叩き付けた!弾き飛ばされて地面を転がるザムシード!


「何が何だか解んねーけど・・・俺の頭じゃ、一個も理解できねーけど・・・

 要は、本部が紅葉を殺そうとしてるってことか!?

 ジジイは、本部の命令を受け入れたってことなのか!?」


 立ち上がり、妖刀を装備して、アデスに突進!ザムシードの妖刀と、アデスのサーベルがぶつかる!


「答えろジジイっ!」


 鍔迫り合いをさせながら、アデスを睨み付けるザムシード!アデスは深く頷いて肯定をする!


「冗談じゃねーぞ!そんなの受け入れられるワケがない!」

「オマンが受け入れるかどうかなど関係あれへん。

 お嬢の本性は酒呑童子。オマンが、どう思うても、この事実は変わらんのや。」

「だからって、何で急に態度を変えなきゃならないんだよ!?

 本性がなんだろうと、紅葉は紅葉だ!」

「今は酒呑の一部しか目覚めとらんから、お嬢の人格が保たれているだけ。

 せやけど、全てが目覚めれば、お嬢はお嬢ではなくなる。

 せやから覚醒する前に討伐せなあかん。

 それが、本部が調査をした結論なんや。」

「これからだって、目覚めない可能性だってあるだろうに!」

「それは、可能性やなくて、オマンの妄想や!」


 妖怪が人間に化けて人間社会に紛れ込むケースは多々ある。だが、人間が最上級妖怪を宿すケースなど、これまでに前例が無い。銀色メダル事件のように、人間と妖怪の共存は成り立たず、やがて、人間の脆い精神は妖怪に支配をされる。そして、紅葉は、様々な妖怪事件や大魔会との抗争を経て、妖怪の力を開花させ始めた。


「ァタシが妖怪?・・・そんなのウソだよね?」


 信じられない事実に驚愕して、青ざめながら後退る紅葉。牛鬼も「紅葉は鬼」と言っていたが、デタラメだと思っていた。だが、信頼できる者が同じ口にすると、重みが別物だ。

 紅葉は狼狽えながら有紀に視線を向け、母の「そんなわけ無いでしょ」と言う言葉を待つ。


「ゴメンね紅葉。」


 母は悲痛な面持ちで、短い謝罪だけをした。


「ウソだぁっっ!!これ、ドッキリかなんかだよね!?

 ァタシが騙されて驚いたところで、ウソでしたーって言うパターンでしょ!?」


 しかし、母は否定をしてくれない。


「普通の人とは違う感覚・・・身に覚えはあるわよね?」

「そんなの無いもんっ!ァタシゎ、普通の人だもんっ!!」


 少し考えただけで、紅葉は「自分には人とは違う感覚がある」ことが解る。だが、それでも紅葉は「自分が普通の人間とは違う」ことを信じない。

 ザムシードの胸に、紅葉の悲鳴にも似た悲痛な叫び声が突き刺さる。紅葉の泣きそうな表情を見ているのが辛い。


「本部が言ったからって従うのかよ!ジイさんは本部の犬か!?」

「それが、企業人っちゅうもんや!

 お嬢が酒呑童子の支配に負けて一般人に被害を出してしまった時に、

 青二才のオマンは、責任を取れんのか!?」

「・・・だけどっ!」


 アデスの言い分は理解できる。師のアデスとは戦いたくない。だけど、殺されるのが解って紅葉を差し出すなんて、できるわけが無い。


「くっそぉっっ!!」


 力押しでアデスを後退させるザムシード!アデスは、武器をサーベルからスピアに持ち替えて、再びザムシードに向かって行く!


「だったら、せめて、本部に掛け合って、もうしばらく様子見を!」

「今更、そんな甘い認識が通るわけないやろ!

 他の退治屋連中から見れば、オマンは、酒呑童子に荷担した反逆者や!

 牛木隊長を殺害したオマンの意見を、誰が聞くと思うとる!?」


 勝手な判断で動き、その場しのぎを重ねた結果、退治屋全員から敵として認識されてしまった。ザムシードは、何度も「何でこうなった」と自問をするが、現状を覆せる答えは出ない。


「こ、こうなったら、俺1人でも・・・・」

「大バカもんが!何が『1人』や!?

 オマン1人が自滅をして、自分の命に決着を付けるなら、まだマシや!

 オマンは、自己満足を優先させたあげく、

 佑芽ちゃんと麻由ちゃんまで、反逆に巻き込みおったんやぞ!

 彼女達の未来を妨害した責任は、どう取るつもりや!?」


 アデスの指摘通りだ。ザムシードは、状況が全く解らないまま、佑芽&麻由を連れて逃亡してしまった。ただの成り行き任せの行動とは言え、退治屋達から「佑芽達はグル」と思われても言い訳ができない。動揺で手を止め、佑芽と麻由の方を振り返る。


「私達が・・・。」 「・・・反逆者?」


 佑芽は、ザムシードが牛木CSOを殺害したことを知らないまま、退治屋の隊員に追われて逃げてしまった。麻由は、紅葉が妖怪だから命を狙われているとは知らずに、一緒に逃げてしまった。2人とも、不安の表情を隠しきれない。


「・・・くっ!佑芽ちゃん、葛城さん。」


 隙だらけになったザムシードに、アデスが振るったスピアが直撃!堪らずに数歩後退をして距離を空けるザムシード!妖刀を握り直し、眼前のアデスに集中する!


「燕真!オマンには、何もできん!もう手詰まりなんや!」


 アデスの合図で蝙蝠型モンスターが飛来をして、ザムシードの背後に体当たりをする!更に、体勢を崩したザムシードの脳天に、アデスが振り下ろした一撃が叩き込まれた!地に伏すザムシード!


「佐波木さんっ!」


 ザムシードが敗北をしたら、自分達も捕まって退治屋達に引き渡されてしまう?佑芽は、自分が反逆者になったつもりは無い。だが、「御曹司を守れなかった姉」を一方的に無能扱いした連中は信用できない。堪えきれなくなった佑芽が、ザムシードに加勢する為に、Yウォッチを構えながら駆け出す。


「幻装っ!」

「加勢はさせぬ!」


 佑芽が変身をするよりも前に、氷柱女が正面に立って掌を翳した!吹雪の衝撃波が発生して、佑芽を押し戻す!


「わぁぁっっっ!!!」


 吹雪が止み、佑芽が眼を開けると、目の前に吹雪の竜巻が立ち上がっている。氷の結界から弾き出されてしまったのだ。

 結界の中では、立ち上がったザムシードが、Yウォッチから水晶メダルを抜き取って構える。


「ジイさん・・・本気なんだな?」

「今更、言葉で確かめな解れへんのか?」

「ジイさんがその気なら・・・俺も容赦はしない!」

「ヒヨッコのオマンが、手加減をしとったとでも?」

「仲間は傷付けたくないからな。年寄りなら尚更だ!」

「ごっつねぶったこと。」


 異獣サマナーは50年も前のシステム。サマナーシステムをプロトタイプにして開発されたのが妖幻システムであり、ザムシードのシステムは、その最先端にある。恩人相手に、性能差で押し切りたくはなかったが、もう、悠長なことは言ってられない。


「ザムシードが・・・ローテクに負けるわけがないっ!!」

「そう思うなら掛かって来い!未熟者め!」


 ザムシードは、気勢を発して、水晶メダルをベルトの和船型バックルに装填!全身が輝いてEXザムシードにフォームチェンジをする!一方のアデスは、神・マキュリーが描かれたカードを翳した!アデスが、パワーアップ形態のアデスアデス・マキュリーに変化をする!


「うおぉぉぉっっっっっっ!!!」 「はぁぁっっ!!」


 互いに向かって突進をするEXザムシードとアデスM!蝙蝠のモンスターがバイクに変形をして、アデスMと並走!アデスMが飛び乗った!奥義・バット・ホワールウィンドゥ発動!対するEXザムシードは、跳び蹴りの体勢でアデスMに突っ込む!


「おぉぉっっっっ!!!EX・エクソシズム・キィッックッッッ!!!」


EXザムシードとアデスMの奥義の激突!


「うわぁぁぁっっっっっっっ!!!」


 悲鳴を上げて弾き飛ばされるEXザムシード!墜落をして地面を転がり、変身が強制解除をされて、燕真の姿に戻った!奥義を決めたアデスMが、バイクを横滑りで停車させる!


「アホンダラ!そやさかいオマンは、未熟扱いをされるんや!

 サマナーシステムから進化さしたのは、妖怪に対する優位性!

 対人戦闘力は、妖幻システムと変われへん!」


 アデスMの言葉は、燕真には届いていない。アデスMの強烈な一撃を喰らった燕真は、意識を失っていた。


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