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40-3・燕真逃走~大武と里夢の同盟

-文架市・優麗高の校庭-


 燕真が麻由を背負い、紅葉が燕真のバイクを押して正門に向かう。


「ねぇ~ねぇ~、燕真。

 きっと、あっち(グラウンド)でアミが寝ているから、連れてこようよ。」

「平山さんは、牛鬼の本体との戦いに巻き込まれたわけじゃないんだろ?」

「ぅん、子妖に憑かれちゃったの。」

「なら、変に巻き込まず、本部の連中の任せておいた方が良い。」

「そっかぁ~。」


 牛鬼が倒れたので、生徒に憑いていた子妖は全て消滅した。今は、ヘイシ達が生徒達の安否確認をしている。


「ねぇ~ねぇ~、燕真。

 マユぉオンブして、えっちなこと考えてるでしょ?」

「考えてねーよ!オマエ、どんだけ貧相な想像してんだよ?

 (実際には、密着する様々な感触を、全身で楽しんでるけど)」

「マユばっかりオンブしてもらってズルい!ァタシもオンブしてよっ!」

「葛城さんを背負ってるんだから、無理に決まってんだろ!」

「なら、試してみようっ!」

「・・・へ?」


 紅葉は、ホンダ・NC750Xのスタンドを立てて駐め、燕真の後ろに回り込んでダッシュ!燕真に背負われている麻由に勢い良く飛び付いて、ガッシリとしがみついた!


「ふぬぅぉぉぉっっっっっっ!!お~~も~~い~~~~~!!!」


 足を踏ん張らせて、前につんのめるのを堪える燕真。


「は~~な~~れ~~ろ~~~~!!」

「女の子に重いゆ~なっ!失礼だぞっ!!」

「牛鬼より重い~~~~!!!」


 戦い終わったばかりで疲れ切っているのに、女子高生2人をおんぶするのは、マジできつい。燕真は体を捻って紅葉を振り落とそうとするが、紅葉が意地になってしがみつく。


「佐波木さん、紅葉ちゃん、何をイチャ付いているの?」


 声を掛けられたので振り返ったら、正門前に、バイクの跨がった佑芽がいた。


「んへへへへへっ!イチャ付いてるのっ!」

「イチャ付いてねー!虐待されてんだ。」

「良かった、紅葉ちゃん無事だったんだね。心配しちゃったよ。」


 佑芽は「紅葉殺害命令」が出ていることを把握した上で喋っているのだが、事情を知らない燕真は、単純に「妖怪に襲われたが無事だった」と解釈する。


「ニャンニャン(佑芽)、ちょうどイイところに来てくれたねっ!

 ァタシゎ燕真と一緒に帰るから、

 マユのこと、(バイクの)後ろに乗っけてってあげてよ。」

「麻由ちゃん?・・・うわっ!麻由ちゃんもいたんだ!?

 佐波木さんと紅葉ちゃんの間に挟まっていて、気付かなかった。

 乗せていくのは構わないけど、

 気絶しているのに、どうやってタンデムで維持すんの?」

「ニャンニャンがオンブして、オンブ紐で縛るの。」

「ちょうど良い紐なんてあるの?」

「無い!燕真、持ってる!?」

「そんな都合の良いもんが、あるわけ無ーだろ!」

「つかえねー!」

「俺が、常にオンブ紐を携帯してたらオカシイだろーが!」


 すったもんだしているうちに麻由が意識を取り戻したので、麻由は佑芽の後ろに乗せてもらい、紅葉は定位置に収まり、YOUKAIミュージアムに戻ることにした。・・・が、和気藹々としていられるのは、そこまでだった。


「ん?なんだ?」


 妖幻ファイター(茂部)と数人のヘイシが、銃を構えて駆け寄ってくる。その雰囲気は殺伐としており、強敵(牛鬼)を倒した勇者(燕真)の凱旋を見送る様子には見えない。


「ヤバい!燕真、逃げてっ!」

「はぁ?なんで?」

「アイツ等、ァタシをやっつけようとしてるの!」

「オマエをやっつける?なんだそりゃ?」

「イイから早くっ!!」


 燕真は、状況が全く把握できない。だが、佑芽は、紅葉の必死さを見て、直ぐに「紅葉殺害計画」が事実だと悟った。


「逃げるよ、佐波木さん!」

「えっ?えっ?」

「説明はあと!紅葉ちゃんが危ないの!とにかく急いでっ!!」


 ホンダ・VFR1200Fを急発進させる佑芽。燕真は状況が理解できないまま、ホンダ・NC750Xをスタートさせて、佑芽に付いていく。


「案の定・・・面倒なことになってきたな。」


 雅仁が離れたところから、燕真&紅葉&佑芽&麻由が去って行く姿を眺める。




-東京・人目の無い河川敷-


 全長3mほどの、八つの頭を持つ蛇=八岐大蛇が、マスクドウォーリア・ハーピーを叩き伏せる!


「クソ!何なんだ、コイツ等!?妖幻ファイターではなく、妖怪なのか?」


 全身緑色で身長10mの巨人=大太郎法師が、マスクドウォーリア・リリスを踏み付ける!


「くっ!・・・こんなはずでは・・・。」


 肝心の標的(大武)は、秘書(迫)を侍らせて満足そうな表情で眺めているだけで、手を出していない。


「そろそろ、互いの刃を収めないかね?

 君達ほどの優秀な戦士ならば、我らに適わないと解るだろう?」


 大武が手を翳して合図をすると、八岐大蛇と大太郎法師が、構えを解いて数歩後退をした。リリスとハーピーは、立ち上がって悔しそうに大武を睨み付ける。


「退治屋と大魔会は暗黙の不可侵。

 俺は、会ったこともない大魔会の総帥に目の敵にされたくはない。

 君達の命を奪う気は無いから安心したまえ。

 温和しく話を聞いてもらう為に、戦意を挫いたのだ。」

「話・・・とは?」

「聞く気になってくれたかな?」


 大武がもう一度手を翳して合図をすると、八岐大蛇は妖怪化を解除して運転手・矢的大地の姿に、大太郎法師は協力者・大平法次の姿に戻った。リリスとハーピーも、変身を解除して、里夢とカリナの姿に戻る。


「大魔会幹部の君達と、退治屋幹部の俺。

 この場にいる我々だけで、同盟を組まないか?」

「・・・なに?」


 大魔会にとって、退治屋は、同盟など組めるはずのない商売敵。だが、大武は、「退治屋と大魔会の同盟」とは言っていない。あくまでも、「この場にいる者だけの同盟」と言っている。


「無論、俺と手を組んで、大魔会総帥を裏切れと言っているわけではない。

 君達は、大魔会の立場を貫いた上で、俺に手を貸してくれれば良い。

 あとは、どう動いても、我々は黙認する。」


 端的に言えば、大武達の邪魔さえしなければ、好き勝手に暴れて退治屋を何人殺害しても、「全ては不問にする」と言っているのだ。こんな好待遇の同盟など、常識では考えられない。


「君達が『使えない』扱いをしている大平君だが、

 実際に戦ってみて、使える同志ということが理解できただろう?」


 大武の言い分は尤もだった。里夢は、「役立たず」と侮っていた大平法次=大太郎法師に完敗をしたのだから、ぐうの音も出ない。


「同盟の土産に、1つ、君達が欲しい情報を差しあげよう。

 スペクターが育たなかったのは、案内人の大平君が無能だったからではなく、

 場所以外にも理由があるってことだ。」

「何が言いたい?

 スペクターが召喚できないのは、私達のアプローチが間違えているとでも?」

「まぁ、そういうことだ。これまでの経緯を考えてみたまえ。」


 偶発的に発生したブロントはともかく、意図的に発生させたアポロ&リンクスは長時間の維持ができた。しかし、計画発展型のベンケイ&イゾウ&ナガヨシは、攻撃力は高かったが、耐久力が低くて簡単に倒された。


「前者と後者で決定的な違いがあるだろう。」


 アポロ&リンクスとベンケイ達の違いは、媒体となるアイテムの有無。いくら依り代となる人間が優秀でも、霊の念を固定する媒体が無かった為に、闇祓いに対して、念の維持ができず、簡単に祓われたのだ。


「龍脈に優れた地、優秀な召喚者、霊の念を維持できる媒介、

 これが、強いスペクターを生み出す土壌だ。」


 この条件が揃えば、里夢が欲したスペクター計画は完成する。だが、里夢は素直に喜べない。スペクターの実験は、里夢と前CEO喜田による秘密裏の計画だったはず。しかし、大武は、詳細の全てを知っている。仮に喜田からの報告を受けていたとしても、里夢以上に熟知しているなど有り得ない。


「何故、貴方が、それを知っている?」

「無論、ずっと君達や前CEO(喜田)を監視していたから。

 そして、君達の欲する知識を、最初から有していたから。」

「退治屋が、スペクターの知識を?」

「俺が過去に収集した財宝に紛れて、

 魔術で死者を召喚する方法が描かれた文献があるのだ。

 非常に興味深いが、魔力を使えぬ俺には、ただのゴミでしかない。

 君達が欲するなら、くれてやっても構わんぞ。

 尤も、提供は、君達が盟友として、俺を勝利に導いてくれたあとになるがな。」

「・・・貴方は一体?」

「見た目通り、退治屋の代表代理だが、それがどうしたのかね?」

「ただの代表代理とは思えないわね。貴方の魂胆は?」

「我々の目的は、我々の安息を得る事。

 無駄な争いは好まないが、目的達成の為ならば手段は選ばない。」


 これは、破格の同盟などではない。大武は「好待遇と必要な情報をくれてやる代わりに邪魔をするな」「敵対をするなら今すぐにでも殺す」と脅しているのだ。里夢とカリナにとっての必須は、生きてスペクター情報を持ち帰ること。意地を張って、この場で命を落とすなど、愚かな行為にしかならない。


「私達に求めることは?」

「代表の地位が転がり込んで数日しか経っていないので、

 恥ずかしながら、まだ組織を上手く掌握できていない。

 俺の方針に従ってくれぬ者が数人・・・存在しているのだ。」

「その者達を排除しろと?」

「排除対象が誰なのか・・・詳細は、君達の仲間に聞けば良い。

 その為に、1人は、先んじて文架市に戻っているのだろう?」


 大武の指摘通り、大魔会幹部の1人・アトラスは、「大武の暗殺」を無駄と判断して参加せず、先に文架市入りをして状況確認をしている。その情報すら筒抜けになっている有り様では、ハナから「大武の暗殺」が成功しなくて当たり前だ。


「貴方に従わない者達を排除する過程で、

 貴方(大武)達以外なら、誰が犠牲になっても黙認する・・・と?」

「そういうことだ。」


 笑顔で頷く大武。里夢&カリナには、受け入れる以外の選択肢は無い。大武一派と大魔会先鋒隊の同盟が成立する。





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