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40-2・魍紅葉覚醒~牛鬼討伐~大武vs里夢

「ど~なってるの?」


 中庭にいたはずの紅葉は、真っ暗な空間に立っていた。目の前では、青年男性と、煌びやかな着物を着た少女が、向かい合わせで立っている。紅葉は直感で「2人が人間ではない」と把握した。

 何故だろうか?紅葉は、青年男性に懐かしさを感じる。初めて見る人なのに、何度も助けてもらった気がする。

 何故だろうか?額から角を生やした少女は、自分と同じ顔をしている。


「ふざけるな、酒呑童子!

 ワラワが、人間の生の望んでいることを知らぬワケではあるまい!」


 酒呑童子と呼ばれた青年は、紅葉がイメージする「おっかない鬼の総大将」とは違いすぎる。


「知っているさ。

 だが、人間であり続けることに拘れば、オマエの希望は此処で終わる。

 今必要なのは、自体を打破する力だ。」

「それが、余計なお世話と言っておるのぢゃ!

 オヌシが度々シャシャリ出て、人を越える力を紅葉に使わせた所為で、

 面倒な奴等(退治屋)から眼を付けられてしまったのぢゃからな!」

「オマエはそれで良いのか?

 紅葉が俺の力を発揮せねば、数ヶ月前に、燕真君は闇に食われて死んでいた。

 そして、今も風前の灯火だ。

 力を出し惜しみすれば、オマエと燕真君の命運は尽きる。」

「だが・・・それでは、ワラワの求める人間の生が・・・。」

「妖怪が人間として生きるには覚悟が必要。

 決して、簡単ではないってことさ。」

「・・・ぬぐぐぐ。」


 反論を失う紅葉似の和装少女。青年は紅葉の方に視線を向ける。


「やぁ、紅葉。こうして向かい合うのは、これが初めてかな?」

「・・・オマエ、誰?」

「ずっと、君に寄り添い続けていた者さ。」

「・・・ずっと?」

「だけど、今は‘涙のご対面’を楽しんでいる時ではない。」

「・・・泣いてね~し。」


 紅葉は、質問をはぐらかされ、且つ、心を見透かされているように感じる。誰なんだろう?母とは少し違うんだけど、同じような優しい目で紅葉を見詰めていた青年の表情が、真顔に変化をする。


「燕真君や、友人(麻由)と一緒に、此処で人間としての生を終えた方が、

 人間らしさを望む君にとっては、楽なのかもしれない。

 状況打破の先には、おそらく、酷な道が待っている。

 分厚い壁の前で立ち止まるのか、引き返すのか・・・

 それとも、乗り越えるか・・・

 どちらの道に進むか・・・選ぶのは君だ。」

「んぇっ!?」



 我に返る紅葉。青年や自分似の少女と共に真っ暗な空間は消え、目の前には牛鬼に押し潰されそうになりながら持ち上げるEXザムシードと、倒れている麻由がいて、自分は弓矢を構えている。


「よくワカンナイけど・・・みんなで死んで終わりなんてイヤだ!

 ァタシゎ先に進みたい!ぶ厚い壁があるならブチ破る!」

(茨の道ぢゃぞ。後悔せぬか?)

「燕真が一緒にいてくれれば、どんなトゲトゲの道でも怖くないっ!!」

(・・・ワカッタ。ならば、思うままに進もうぞ。)


 紅葉の全身から妖気が放出される!ブレザー姿から、煌びやかな着物姿に変化!頭に2本角が出現!瞳が紅く染まる!

 発せられている妖気が、腕を伝って弓矢に流れ込み、上位妖力となって鏃に凝縮される!


「ブモォォッ!?・・・これは、鬼力!!?」

「紅葉が変身した!?どうなっているんだ!?」


 牛鬼は紅葉の発する上位妖力=鬼力に驚く。


「燕真っ!ソイツの顔を、こっちに向けてっ!!」


 麻由は、「牛鬼の弱点は頭」と予想した。改めて考えると、頭を狙われた牛鬼は、あきらかに過剰反応をして、麻由への攻撃をした。麻由の予想は当たっているように思える。


「うおぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 今までも、紅葉の突飛な発言が状況を打破することは度々あった。打開策を見出せないEXザムシードは、紅葉を信じ、渾身を振り絞って体を捻り、持ち上げている牛鬼を紅葉が狙いやすい方向に向けた!


「んおぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 次の瞬間、鬼力を纏った矢が紅葉の手から放れた。

 矢は呻りを上げて飛び、牛鬼の眉間に突き刺さる。


「ブモォォォォッッッッッッッッッッッ!!!」


 ただの矢ではない。鬼力を纏った矢だ。牛鬼は、悲鳴を上げながらザムシードから離れ、眉間に刺さった矢を抜こうとする。

 「酒呑童子の残りカス」と侮っていたのが間違いだった。小娘は、気合い1つで子妖十数匹を無力化し、背に牛鬼の爪が直撃したのに掠り傷しか負わず、玩具の矢一本で牛鬼に致命傷を喰らわせた。


「何をしてもダメージを受けなかったのに、

 矢一本で苦しんでる?どうなっているんだ?」


 解放されたEXザムシードは、地に片膝を付いたまま息を整え、藻掻いている牛鬼に視線を向けた。


「燕真っ!ソイツの弱点ゎ頭だよっ!頭をブチ抜いてっっ!!」

「そういうことか!サンキュー、紅葉!」


 EXザムシードのブーツには、白メダルがセットされたままになっている。気勢を発すると、右足が赤い光を纏い、同時に牛鬼との間に炎の絨毯を発生。牛鬼に正面を向けて構える。


「・・・閻魔様の・・・裁きの時間だ!」


 標的を睨み付けるEXザムシード!炎の絨毯を力強く踏みしめながら突進!


「ハァァァッッ!!」


 踏み切った場所の炎が一際大きな火柱となり、跳躍を後押しする!空中で一回転をして牛鬼の顔面に向けて右足を真っ直ぐに突き出すEXザムシード!


「うおぉぉぉぉっっっっっっ!!!

 エクストラ・エクソシズム・キィィーーーッック!!!」


 朱く発光したEXザムシードの右足が、牛鬼の顔面を粉砕して胴体を突き破った!


「ブモ・・・ォ・・・ォ・・・ォ・・・

 何故・・・退治屋のオマエが・・・酒呑童子の救出を・・・?」


 EXザムシードは、振り返って、風穴の空いた牛鬼を睨み付ける。


「酒呑童子じゃない。俺は紅葉を救出したんだ。」

「その小娘が・・・酒呑・・・」

「紅葉は紅葉だ!」

「ブモ・・・ォ・・・ォ・・・ォ・・・・・愚か・・・なり。」


 牛鬼は、最後の力を振り絞って、光を放っている封印の結界に自分自身を捧げるようにして、両前足を伸ばした。


「大嶽丸様、申し訳ありません!・・・だが、封印は、我が命を贄にして・・・。」


 牛鬼は、黒い炎を上げて爆発四散をした!撒き散らされた黒い霧は、光の柱に群がって破壊!役割を終えた黒い霧は1ヵ所に集まり、EXザムシードのブーツに嵌められていたメダルに吸い込まれて封印され、メダルには『牛』の文字が浮かび上がる!


「か、かなりヤバかったな・・・死ぬかと思った。」


 変身を解除して大の字に寝転がる燕真。何故、本部に保護された紅葉が妖怪に襲われていたのか?結果的に麻由のことも救ったが、自分の行為は、職務怠慢になってしまうのか?牛鬼が今際のきわに言った「封印」とは何のことなのか?

 不安と疑問だらけだが、とりあえず、紅葉を救出できて良かった。


「燕真っ!」


 紅葉が寄ってくる。弓矢を構えていた時の紅葉は着物姿で角が生えていたが、今はいつも通りの紅葉だ。


「オマエ、さっきの変身は何だったんだ?」

「んぇ?ヘンシン?何のこと?」

「自分の姿が変わったことに気付いてなかった・・・のか?」

「ァタシ、ヘンシンしたの?カッコ良かった?

 ザムシードとァタシで、どっちがイケてた?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 紅葉自身が解っていないらしい。雅仁や粉木や砂影ならば、何か解るだろうか?


「まぁ、いいや。葛城さんを回収して、YOUKAIミュージアムに戻るぞ。」

「ぅん!」


 麻由を背負って、紅葉をタンデムに乗せて、バイクの3人乗りで帰るのは不可能。紅葉は、タンデムを要求せずに、自転車で帰ってくれるだろうか?

 ・・・というか、命令無視は承知しているが、粉木に会った瞬間に怒鳴りつけられそうで、帰るのが怖い。



-屋上-


 牛鬼が討伐された時点で、茨城童子は戦いを放棄して撤退した。


「おいおい、大変なことになったぞ。」


 茂部園太が青ざめながら中庭を見下ろしている。


「文架支部の若造が、とんでもないことを・・・。」


 酒呑童子討伐隊の統括責任者が、ザムシードに倒された。倒れている牛木CSOを確認できないってことは、肉体が砕け散ったのか?

 副責任者の砂影は、文架支部の監視が任務だ。つまり、酒呑童子討伐の実質的なサブリーダーは茂部なのだが、脳内がパニックで考えがまとまらない。

 怒りと動揺で全身を振るわせながら、通信機で本部に連絡をする。




-東京・退治屋本社-


 大武剛は、COO室で、秘書の迫天音から「牛木義雄CSOの敗北」の訃報を聞き、悲痛な面持ちで友を悼む。


「ただでは死なず、封印を破壊してくれたか。

 失うには惜しい、仕事のできる男だった。」

「感傷に浸る時ではないわ。精鋭隊の責任者が真っ先に倒れるなんて一大事。

 直ぐに、次の手を打たなければ成らないわよ。」

「もちろんだ。

 彼は、我々が次の一手を打つ為の呼び水になってくれたのだからな。」

「私に出撃の指示を下さい。私ならば・・・」

「確かに、我が副官たる君ならば、我が目的は成せるだろう。

 だが、人間社会での君の地位は、俺の秘書だ。

 君が赴いても、兵隊共は納得をしてくれまい。」

「・・・では?」

「ああ・・・CSOが犠牲になるという緊急事態を治められるのは、その上の役職。

 牛木が犠牲になってくれたおかげで、

 トップが、たかが一地方で陣頭指揮を執ることに疑問に感じる者はおるまい。

 牛鬼は、俺の出番を演出してくれたということだ!」


 直ぐさま、上層部、及び、本部直轄の隊員に、「CSOの敗北」の情報が廻った。皆が緊急事態を知り、前線に行きたくない自己保身連中は、「大武COOが後任に入る」という判断を支持する。これで、下らない役員会議を省いて、「文架市に多数の退治屋を集める采配」、及び、「文架市の掌握」を反対する者はいなくなった。


〈COO、お車が準備できました。〉

「了解だ。直ぐに行く。」


 大武が、迫を伴って、COO室を発つ。自己保身優先の幹部達に、御機嫌取りをされながら見送られ、エレベーターで1階まで降りて、車が待つ正面入口へ。


屋外に出た瞬間に、死神のような影が差す。


「貴方の命・・・私のコレクションに加えてあげる!」


 大武目掛けて大鎌が振り下ろされた!だが、大武は表情1つ変えずに、妖気を発した素手で、軽々と刃金を受け止める!


「困ったな。少々急いでいるのだがね。」

「・・・フン!」

「俺に何か用かな?・・・大魔会の夜野里夢くん。」


 デスサイズを向けているのは、マスクドウォーリア・リリス(里夢)。周りでは、ハーピーが構えている。その後で、協力者・大平法次がボケッと突っ立っている姿を見て、大武は苦笑いをした。


「貴方が提供してくれた協力者、見当外れな案内ばかりで、全然使えないのよね。」


 表向きは、退治屋の大平法次が独断で大魔会に協力をしていることになっているが、真実は、大武が提供をした人材だ。文架市でのスペクター計画の続行は目立ちすぎて妨害が入りやすいとの判断で、多の地域に移って実験を続けたのだが、大平の案内や技術がいい加減すぎて、計画は「あと少しで完成」なのに少しも進展をしなかった。


「私達を文架市から遠ざかっている間に、随分と派手に動き出したわね。

 無能(大平)を提供した目的は、文架市から大魔会の排除・・・よね?」

「ふっ!そこまで見抜かれていては、弁明の余地は無さそうだな。」


 前CEOの喜田は、言葉巧みに利用することができた。だが、リリスは「現トップの大武COOは一筋縄ではいかない」と判断したのだ。


「だから・・・私を騙してくれた貴方を狩るのよ!」


 大武とリリスは、大武がデスサイズの刃を素手で受け止めた状態で拮抗している。リリスの目配せにより、ハーピーが大武を仕留める為に動き出した。


「舐めたマネをしてくれんじゃねーか!」


 だが、秘書の迫天音がハーピーの前に立って、臨戦態勢で牽制をする。この後に及んでも、大武は「余裕の表情」を全く崩さない。


「ヤレヤレ、随分と拙速だな。

 迫君、そして君達(マスクドウォーリア達)も、少しは控えたまえ。

 こんなに人目の多いところで、血で血を洗う騒ぎを起こす気かね?」

「・・・チィ。」


 退治屋と大魔会は暗黙の不可侵。リリス達は、派手な抗争を起こす気はない。初手のデスサイズを防がれた時点で、無血の奇襲は失敗をしたのだ。


「時間は惜しいが、大魔会の幹部諸君を無視することもできまい。

 話し合いでも、潰し合いでも、俺はどちらでも構わないが、

 人目の無いところに場所を移す提案をさせてもらえないだろうか?」

「それくらいの要求は応じましょう。」


 思考を見透かされたリリスは、一時的に刃を収めた。

 大魔会の今の目的は、「スペクター計画の完成」だが、その根底にあるのは、「退治屋を弱体化させて、大魔会が世界のシェアを牛耳ること」だ。「退治屋の現トップが戦いに応じてくれるなら、弱体化に導くチャンス」と判断する。





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