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39-4・中庭の紅葉&麻由~牛鬼~ザムシード到着

-優麗高・中庭-


 中庭から校舎に飛び込むんだはずの紅葉は、中庭に戻っていた!


「これって結界!?」


 以前、「入ることのできない」氷の結界を体験したことがある。この薄暗い結界は、氷柱女の結界とは逆で、「出ることができない」結界のようだ。


「フッ!残りカスとはいえ、さすがは鬼の頭領。即座に理解したか。」


 中庭の中央、闇の結界に囲まれて、天に伸びた光の柱が出現する。それは、牛木が発動させた結界とは雰囲気が違う。


「んぇぇっっ!ど~なってるの?」

「封印の結界・・・。我が闇結界の干渉で姿を現したのだ。」


 紅葉には、「以前から在ったけど、見えにくくて気付かなかった物」と感じられる。穏やかな光だが、紅葉には忌み嫌う物に感じられて、見上げながら数歩後退をする。


「封印の結界って?」


 紅葉は、優麗高に霊気や妖気が溜まりやすいことは知っている。粉木からは、「優麗高には龍穴がある」と教えられた。だから、「優麗高の空気が周りと違うのは、龍穴の影響」だと思っており、結界が隠されているなんて考えたこともなかった。


「人間界を地獄界から守る結界だ。」


 古の日本には、強い龍脈の影響で数多の人間の邪念が集まり、地獄に繋がる大きな歪み維持された一地域があった。その地は、事実上、地獄界の支配下にあり、様々な地獄の住人が闊歩して、「この世の地獄」と呼ばれていた。

 危機感を持った人間は、その地に4つの結界を張って地獄に繋がる歪みを封じた。だが、それで全てが人間の社会から排除されたわけではない。人間の持つ強い邪気に引かれて、地獄の住人は出現をする。

 それが文架市。だから、他の地域と比較して、妖怪事件の発生率が異常に高いのだ。


「封印の結界が壊れちゃったら、文架市が地獄になっちゃう?」

「この封印を解くには、上級以上の妖力を持つ贄が必要でな。

 今からオマエに、その命を捧げてもらう。」

「ァタシに妖力?意味がワカンナイ。」


 紅葉は自分が人間と信じて疑わない。上級妖怪の扱いをされても理解不能。


「オマエが理解するかどうかなど、関係無い。

 オマエの意思など、関係無い。

 オマエが贄となれば、それで良いのだ。」


 闇の結界に紅葉を閉じ込めたのは、逃がさずに確実に生贄にするため。


「状況は理解できませんが、アナタに紅葉さんは渡しません!」

「んぇっ!?」


 聞き覚えのある声に反応して、青ざめながら振り返る紅葉。中庭の隅に、弓矢を構えた麻由が、凜と立っている。


「紅葉さんから離れて下さい!」


 紅葉を連行した連中の雰囲気と「捕獲」という言葉の違和感、麻由にとっては何もかもが不審だった。だから、隠れて尾行をしていた。そして、紅葉と牛木の会話を聞いて、「彼等は信用できない」との判断に至った。


「たかがスポーツ用具と思わないで下さい!

 私がその気ならば、アナタに傷を負わせることも可能です!」


 弓道具で人を傷付けたくない。だが、友人が何らかの犯罪に巻き込まれているのならば、麻由には手段を選ぶ余裕など無かった。


「・・・マ、マユ。」


 しかし、紅葉からすれば「状況の悪化」以外の何物でもない。何も知らないまま助けに来てくれた友人を、危機に巻き込んでしまった。


「マユっっ!!逃げてっっっ!!!」


 叫びながら、麻由に向かって全力で駆ける紅葉!その後から牛木が追って来る!


「紅葉さんっ!身を低くして、私のところまで走って下さいっ!」


 麻由は意を決し、牛木に向けて矢を射た。そして、紅葉に向かって手を差し出しながら、素早く校舎内に後退をする。


「えっ?なんで?」


 矢で牛木を怯ませて、その隙に紅葉を校舎内に逃げるのが麻由の作戦だった。しかし、結界の作用によって、麻由は中庭に立っている。


「面倒だ・・・覚醒っ!」


 牛木が気合いを発して叫ぶと、全身から闇が吹き上がって人間態が闇に溶け込み、全身漆黒で、牛顔に、鋭い爪を生やした6本脚の、体長4mほどの異形が出現をした!麻由が射た矢は、硬い皮膚に阻まれて弾かれる!


「ブモォォォッッッッ!!所詮は遊び道具!俺の薄皮1枚傷付けられぬ!」

「んぇぇっっ!!?退治屋の偉いヤツが何でっ!?」

「きゃぁぁっっっっ!!?」


 上級妖怪・牛鬼が、鋭い爪を振り上げて、紅葉と麻由に襲いかかる!足が竦んで動けなくなった麻由に飛び付く紅葉!牛鬼の爪が、紅葉の背中に叩き込まれた!弾き飛ばされ、縺れ合いながら地面を転がる紅葉と麻由!


「ひぃぃっっ!!」

「ダイジョブ、マユ?逃げるよっ!」


 紅葉が麻由の腕を掴んで立ち上がらせる。


「この傷・・・私を庇った時に?」


 紅葉の腕からは、一筋の血が流れていた。


「こんなの掠り傷っ!今は、そんな心配してる時ぢゃないよ!」


 飛び掛かる牛鬼!紅葉と麻由は、必死で逃げ回る!

 その光景は、屋上から様子を眺める妖幻ファイター(茂部)にも、想定外の光景だった。


「妖怪にしか見えないけど、新型の妖幻システムか!?」


 東東京支部から派遣された妖幻ファイター(甘利亜真里)と、文架支部を統括する支店から派遣された妖幻ファイター(七篠権兵衛)も、校庭や校舎内から中庭を眺めて驚く。


「ん?牛木CSOが妖怪になって、捕獲した女の子を襲っている?」

「どうなっているんだ?」


 彼等(甘利&七篠)は、この作戦の真の目的を知らない。疑問には感じるが、今は「子妖の殲滅」と「部外者を中庭に近付けるな」を命令されている為、与えられたミッションを継続する。




-優麗高の上空-


 実体化をした茨城童子が校舎の屋上に着地をして、薄暗く濁った中庭を見下ろしながら舌打ちをした。


「チィ!御館様を宿す小娘は、結界の中か!?」


 張られているのは、脱出不能の結界。術者の牛鬼を倒す以外に、紅葉を結界から解放する手段は無い。


「最優先すべきは、御館様の魂を救うことだ。」


 茨城童子が、闇の結界に飛び込もうとしたら、無数の光弾が飛んで来て妨害をする!


「牛木CSOの予想通り、鬼が来たぞ!散開して取り囲め!」


 A班の妖幻ファイター(茂部園太)&ヘイシ(部下)達が銃を連射しながら駆け寄って、茨城童子を取り囲んだ!


「鬼の幹部を、牛木さんの結界から遠ざけろ!」


 ヘイシが発砲する光弾には、上級妖怪に致命打を与えるほどの威力は無い。しかし、複数人による一斉連射ならば、茨城童子の足止めに充分な手数だった。


「煩わしい退治屋め!いつの間に、ヤツらと手を組んだ!?」


 茨城童子の足が止まったと判断した妖幻ファイター(茂部)が、刀を構えて突進。茨城童子は、指先から鬼爪を伸ばして応戦をする。


「烏合の衆の分際で!!」

「本部直轄の我らを舐めるなっ!」


 数秒の鍔迫り合いの後、妖幻ファイター(茂部)は素早く数歩後退。同時に、ヘイシ達が一斉に発砲した光弾が、茨城童子に着弾をする。


「ぐぅぅ・・・この程度で息巻くな人間共!舐めているのは、貴様等の方だっ!」


 茨城童子は「片手間で仕留められる相手ではない」と判断して、左右に腕を広げて闇を灯した両掌を翳す!妖気乱舞発動!


「拙い!周りの邪気を浄化するんだ!」


 妖幻ファイター(茂部)は、即座に呪印を結んで周囲の空間を浄化する!だが、ヘイシ達には、その技量が無かった!周りの空間が茨城童子に掌握され、周囲に漂っていた妖気が衝撃波となってヘイシ達に襲いかかる!多数が屋上の床を転がり、2人が手摺りから弾き出されて墜落をする!


「く、くそっ!」


 これで、屋上にいて応戦可能な戦士は、妖幻ファイター(茂部)だけになってしまった。


「鬼の幹部が出現をした!

 B班は引き続き子妖に対応しろ!

 C班には共闘を求む!屋上まで来てくれ!」

〈了解!現在の任務を維持します〉 〈了解!至急、屋上に向かいます!〉


 妖幻ファイター(茂部)は、「単身では苦戦必至」と判断して通信で援軍要請をする。




-中庭-


 屋上から中庭に弾き出されたヘイシ2人は、不運としか言い様が無かった。プロテクターに守られて命は失わずに済んだが、牛鬼の目の前に落ちてしまった。


「んぇっ?」

「人が落ちてきた?」


 逃げ廻っていた紅葉と麻由は、ヘイシ達に駆け寄る余裕無し。落ちた衝撃で体が痺れて動かないヘイシ達に、牛鬼が迫る。


「ブモォォォォッッッッッッッッッッッ!!!邪魔だっ!!」

「ひぃぃっっっ!!牛木さんっ!」 「俺達は味方です!」


 隊員達が呼び掛けるが、牛鬼には「ちょうど良い餌」にしか見えない!振り下ろした前足の爪がヘイシのプロテクターを貫いた!


「ぎゃぁぁっっっっ!!!」 「ぐわぁぁぁっっっっ!!!」


 ヘイシ達は、生命を肉体ごと吸収されて、プロテクターを残して消滅する。その光景を目の当たりにした紅葉と麻由は、「明日が我が身」と青ざめた。栄養補給を終えた牛鬼が、雄叫びを上げながら紅葉達に迫る。



 派遣隊が茨城童子討伐の為に屋上に戦力を集中させたのは、ザムシードには最適のタイミングだった。


「うおぉぉぉっっっっっっっっっっ!!!!」


 マシンOBOROを爆走させたザムシードが、生徒玄関に突っ込み、引き戸を突き破って中庭に飛び出す!


「無事だったか!」


 細かい経緯は解らないが、紅葉達が危機に瀕している状況だけは、直ぐに解った。


「燕真っ!」 「佐波木さんっ!」


 ザムシードは、マシンOBOROを駆りながら妖刀ホエマルを装備!牛鬼目掛けて突っ込み、その顔面に妖刀を叩き付けながら通過して、更にUターンで牛鬼に再突入をして体当たりをした!

 しかし、牛鬼の巨体は体勢を崩すのみで、マシンOBOROの方が、押し戻されて後退をする!


「さすがにデカすぎて、弾き飛ばすのは無理だったか!」


 マシンOBOROから降りて、妖刀を構え直すザムシード!


「燕真!やっぱり助けに来てくれたんだねっ!」

「当然だろ!オマエ達は、中庭から逃げろ!」

「ダメなの、逃げられないのっ!」 

「外に出られない結界に囲まれてしまいました!」

「・・・マジかよ?急ぎすぎて、何も考えずに飛び込んじゃった。

 また、爺さんや狗塚にバカにされそうだな。」


 ザムシードは結界が苦手。氷柱女の結界(第10話)や、星熊童子の結界(第11話)など、劣勢に陥った経験しか無い。相殺をして攻略する技術など無い。だが、「紅葉を救う為に、結界に飛び込んだ行動」に、少しの後悔も無い。


「ブモォォォッッ!・・・文架支部の若造か!?」

「ん?俺のことを知っている?・・・のか?」


 牛鬼は、前足の長爪を振り上げて、ザムシード目掛けて振り下ろした!ザムシードは、妖刀で応戦するが、力負けをして数歩後退!


が立たないなら、を研ぎ澄ませば良い!」


 裁笏ヤマ(木製ナイフ)を装備して、属性メダル『斬』を柄にセット!2刀流で構えて、再び踏み込んだ!妖刀の切っ先が、牛鬼の振り下ろした右爪と激突!続けざまにザムシードの振るった裁笏で、牛鬼の右前足が切断される!


「ブモォォォォッッッッッッッッッッッ!!!」


 しかし、牛鬼が気合いを発すると、即座に、失った前足が再生されてしまう!


「げっ!マジで!!?」


 更に、牛鬼が吐き出した大型火炎弾がザムシードに着弾!高熱の影響で、周辺の、窓ガラスが割れる!


「燕真っ!」 


 ザムシードに駆け寄ろうとする紅葉。ザムシードは、手を翳して「心配ない」と伝える。


《LIMITER CUT!!・・・EXTRA!!》 


 炎の中で幾つのも光の輪がザムシードを包み、炎を弾き飛ばした!中から、EXザムシードが出現をして構える!



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