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37-1・ザムシードvsイゾウ~ガルダvsベンケイ

 全身が強大な妖気で覆われた紅葉が、炎のような赤色に変化した瞳で、リリス&ベンケイ&イゾウを睨み付ける!


「何が・・・起きているの?」


 リリスは棒立ちのまま、紅葉を眺めている。リリスが想定したスペクタープロジェクトと違う。何が起きているのか理解ができないが、失敗作ならば廃棄をする以外の選択肢は無い。


「ベンケイ!イゾウ!不気味な小娘(紅葉)を潰せっ!!」


 指示を受けた妖幻ファイターベンケイ&妖幻ファイターイゾウが、紅葉に突進!


「紅葉っっ!!」


 ザムシードは、ベンケイ達を止める為に立ち上がるが、ダメージで体が痺れて満足に動かせず、前のめりに崩れ落ちて両膝を地に着いた。


「気合いでどうにかなる相手じゃない!逃げろ紅葉っ!」


 叫ぶザムシード!しかし、紅葉は逃げる素振りを一切見せない!


「オマエ達・・・殺す!!・・・んぁぁぁっっっっっ!!!」


 妖気に包まれた紅葉が気勢を上げながら、ベンケイ&イゾウに向かっていく!丸腰の紅葉と、突進速度の速いイゾウが激突!


「妖気は潤沢だが、動きは素人!」


 拳を振り上げた紅葉に対して、イゾウが刀を叩き込むんで弾き飛ばす!


指揮官リリスが最優先で討伐指示をした理由が解らぬな!」


 ベンケイが、地面を転がる紅葉に接近して、薙刀の連続突きを叩き込んだ!紅葉は、為す術も無く弾き飛ばされて地面に墜落する!


「フン!これで終わりだ!」

「ただの小娘相手に、些か大人げなかったか?」


 生身の小娘が、戦闘に特化した者達の攻撃を正面から喰らって生きているわけがない。ベンケイ&イゾウは、紅葉の生命の有無を確認せずに、踵を返してリリスの所に戻ろうとする。・・・だが。


「ど、どうなっているんだ?・・・紅葉っ!?」


 ザムシードの妖気センサーは、紅葉が発する妖力が全く衰えていないことを感知している。去ろうとするベンケイ&イゾウの背後で、紅葉が立ち上がる。


「ふぬぅぅっっ・・・痛いなぁ、もうっ!」


 その体には傷1つ付いていない。紅葉は、ベンケイ達の攻撃の衝撃で弾き飛ばされただけ。紅葉を覆う分厚い妖気が防御壁となり、一切のダメージが通っていないのだ。


「なに?小娘・・・何故?」

「少し、手を抜きすぎたか。・・・次で確実に仕留める。」


 向き直って、薙刀を構えるベンケイと、刀を納刀して柄に手を置いて居合抜きの構えになるイゾウ。


「い、いけるか?」


 ザムシードは妖刀を握る手の感触を確かめる。まだ、全身の痺れは完全には回復していないが、先程までに比べれば動けるようになった。

 何故、紅葉が妖気に守られているのか見当も付かないが、今の一連で、紅葉はスペクター達から警戒をされてしまった。次は、妖気防御を撃ち抜くつもりで攻撃を仕掛けるだろう。袋叩きにされる紅葉を眺めているわけにはいかない。


「おぉぉぉっっっっ!!!」


 ザムシードは、気合いで体に活を入れて立ち上がり、イゾウに向かって突進!走りながら、水晶メダルを和船バックルに装填して、EXザムシードにフォームチェンジ!握り締めていた妖刀ホエマルを妖刀オニキリに変化させて、柄に属性メダル『斬』をセットする!


「ベンケイ!小娘は任せる!」


 EXザムシードの接近に気付いたイゾウが、タイミングを図って、振り返りながら抜刀をする!


「退けぇ!邪魔だっ!!」

「出しゃばるな、死に損ないがっ!」


 しかし、刃が鞘に引っ掛かって抜刀が僅かに遅れ、切っ先はEXザムシードに届かずに刃同士がぶつかった!『斬』の効果で研ぎ澄まされた妖刀オニキリが、イゾウの名刀・肥前忠弘が砕く!


「なにっ!?」


 イゾウは気付いていなかった。紅葉に一撃を叩き込んだ時に、紅葉を覆う頑丈な妖気によって刀身が欠け、抜刀速度が鈍ってしまったことを。


「うおぉぉぉっっっっっっ!!!」


 EXザムシードは、刀をヘシ折った勢いのまま、妖幻ファイターイゾウの脳天に、妖刀の刀身を叩き付けた!


「ぐはぁっっ!・・・バ、バカなっ!

 俺が・・・現代の素人如きに・・・」


 面を割られ、脱力して地に両膝を落とし、俯せに倒れるイゾウ。致命打を受けた為に実体を維持できなくなり、青い霧化をして消滅。依り代(茂面慎吾)の肉体だけが残る。


「紅葉っ!!」


 紅葉は拳を振り上げながらベンケイに向かっていくが、大柄なベンケイの薙刀が相手では、リーチに差がありすぎる。小柄で、体術の「た」の字も知らない紅葉の拳が届くわけもなく、アッサリと、ベンケイが奥義を発動させる射程に持ち込まれた!


「んぉぉぉっっっっ!!!」


 だが、紅葉が、ベンケイに届くワケのない拳を突き出した途端に、紅葉の腕を覆っていた妖気が、闇色の腕に変化して伸びて、ベンケイの腹に掌底を叩き込んだ!


「なにぃっ!」


 プロテクターに掌底を喰らった程度では、ベンケイにダメージは無い!しかし、「小娘の細腕から放たれた掌底」とは思えない力で押されて数歩後退!ベンケイが強制的に下がってしまった所為で、奥義の射程が消滅をする!


「ぐぅぅ・・・信じられん。何者だ、小娘!?」


 ベンケイが戸惑った直後!


「おぉぉぉっっっっっっっっっ!!!下がれ、紅葉っっ!!」


 妖刀を振り上げたEXザムシードが、飛び掛かる!ベンケイは薙刀の柄で受け止めるが、『斬』の効果で鋭利に変化をしていた妖刀が、薙刀を叩き切る!


「舐めるな、小童ぁっ!」


 ベンケイは折れた薙刀を素早く振って、EXザムシードの脇腹に叩き込んだ!弾き飛ばされて地面を転がるEXザムシード!ベンケイは薙刀を捨て、七つ道具の一つ・大鋸を召喚して、振り上げながらEXザムシードに突進をする!


「燕真ぁぁっっっ!!!」


 紅葉が、ベンケイに背に向かって突っ走る!「燕真を助けたい」という思いが紅葉の妖気を増幅させて全身を包んだ!一塊の妖気弾と化した紅葉は、無意識に宙を滑り、ベンケイに体当たりをする!


「ぬぅぉぉぉっっ!!」

「ふんげぇぇっっ!!」


 巨漢のベンケイが、紅葉と縺れ合いながら弾き飛ばされて地面に墜落。渾身の体当たりを決めたところで、紅葉の妖気はガス欠となり、地面を転がりながら意識を喪失させた。


「奇っ怪な小娘めっ!」


 立ち上がり、気絶中の紅葉の首目掛けて大鋸を振り下ろすベンケイ!しかし、EXザムシードが割って入って、妖刀で大鋸を受け止める!


「退け、小童!」

「退くわけがないだろう!」


 力の鬩ぎ合いはベンケイが上!EXザムシードは、鎬を削りながら徐々に押される!ベンケイは、足払いでEXザムシードの体勢を崩し、武器を袖搦に持ち替えて、渾身の力でEXザムシードの顔面に叩き付けた!脳が揺れ、意識を朦朧とさせて仰け反りながら、足を開いて踏み止まるEXザムシード!


「くっ!倒れてたまるかっ!!」


 ベンケイはEXザムシードよりも、紅葉へのトドメを優先させようとしている!ここで倒れるワケにはいかない!


「フン!考えが甘いっ!!」


 だが、EXザムシードの、その行動こそが、ベンケイの思惑通り。ベンケイがEXザムシードの頭部を強打したのは、致命打を狙ったのではなく、「次」に繋げる為の前振りだった。

 ベンケイ&イゾウ&ナガヨシは戦闘のプロ。血で血を洗う戦乱の中で、勇名を轟かせた連中。今回のスペクタープロジェクトは、現代人の戦闘経験を凌駕する豪傑の類いばかりが集められた。イゾウとナガヨシは本領を発揮する前に倒せただけ。


「くっ!マズい!!」

「はぁぁっっ!!!千閃乱舞!!」


 袖搦を中段に構えて、奥義発動の間合いに踏み込むベンケイ!EXザムシードは、無防備のまま対応ができない!


「突っ立っているだけなら邪魔だ!退いていろ!!」


 獣の咆吼のような銃声が鳴り響き、上空から飛んで来た光弾が、EXザムシードに着弾!弾き飛ばされたEXは、ダメージの蓄積によって、エクストラモードが解除されて、ノーマルフォームに戻ってしまう!そして、ザムシードが弾き飛ばされた為に、ベンケイは標的を失い、繰り出された無数の突きは空振りをした!


「正直言って助かったけど・・・オマエ、どっちの味方なんだよ?

 回避させる手段が強引すぎねーか?」


 マスクの下で安堵の表情をして、仰向けに倒れたまま上空を見上げるザムシード。翼を広げたHガルダが、空中で鳥銃・迦楼羅焔を構えている。


「光弾で、どの程度退けられるか解らない初見の相手に攻撃をするより、

 死にかけている君を退かした方が、確実だからな。」

「死にかけてねーよ!」

「コイツ(ベンケイ)も妖幻ファイターのようだが、倒して良い相手だな。」


 遅れて到着したHガルダは、ベンケイが何者で、どんな目的で戦っているのか把握していない。だが、ベンケイが紅葉を狙い、庇ったザムシードが窮地に追い込まれる様子は見ている。ザムシード(燕真)を信じているHガルダ(雅仁)にしてみれば、戦う理由は、それだけで充分だ。


「ああ、倒して良い相手だ!」

「承知した!」


 Hガルダは、翼を収納して、ザムシードとベンケイの間に着地!妖槍ハヤカセを召喚して構える!


「閻魔の次は天狗か?次から次へと忙しない!」

「次から次ではない。俺で終わりだ!」


 ベンケイは袖搦を頭上で振り回して、勢いを付けてHガルダ目掛けて振るう!妖槍の柄で受け止めたHガルダは、力負けをして蹌踉けた!そこへ、ベンケイの横薙ぎが着弾!大きく体勢を崩すHガルダ!


「フン!息巻いて現れたわりには、非力ではないか!」


 袖搦を中段に構えて、奥義発動の間合いに踏み込むベンケイ!


「はぁぁっっ!!!千閃乱舞!!」


 だが、ベンケイが奥義の体勢になったと判断したHガルダは、素早く数歩後退して、千閃乱舞の射程から離れ、間合いを詰めてくるベンケイに向かって、妖槍の穂先を伸ばした!10mに伸びた妖槍が、突進するベンケイの胸を貫く!


「うぐぅぅっっっ!!貴様・・・俺を呼び込む為にワザと・・・」

「佐波木が蹴散らされる様子は見せてもらった。貴様の技の習性は把握済みだ!」


 Hガルダは、ベンケイに妖槍を突き刺したまま、腰のホルダーに収納された鳥銃・迦楼羅焔のグリップに『白』をセットしてから抜き、ベンケイに向かって発砲!至近距離でハイパーギガショットを喰らったベンケイは、弾き飛ばされて仰向けに倒れ、動かなくなる!


「言っただろ・・・次から次ではなく、俺で終わり・・・と。」


 ベンケイは、致命打を受けて実体を維持できなくなり、青い霧化をして消滅。依り代(日部光)の肉体だけが残った。

 ザムシードは、日部に触れて脈を確認するが、生命反応は無い。


「くっ!ダメか。」


 やはり、魂を破壊されて肉体を乗っ取られ、ただの抜け殻となってしまったようだ。確認はしていないが、おそらく、イゾウの依り代(茂面)も、同じ結末を迎えているのだろう。

 面識の無い連中だから「死んでも良い」ことにはならない。だが、紅葉も同じ状況に陥りながら、同じ運命を辿らずに済んだことには、大きく安堵をする。




-広場手前の公道-


 吹雪の竜巻(氷の結界)の中で、氷柱女はスペクター(攻撃的魔力)の消滅を感知した。


「終わったか。」


 氷柱女の目的は、マスクドウォーリアの討伐ではなく彼等を閉じ込めること。これ以上の足止めを続ける必要は無い。結界を解除して広場の方向を眺め、紅葉の気配があることを確認した後、白い霧に姿を変えて飛び去る。


「クッソォ!腹立つっ!」


 結界から解放されたハーピーが、氷柱女の去った空を睨み付ける。ギガントは広場側に視線を向けた。


「むぅ?スペクターの魔力を感じない。」

「アバズレ(里夢)が失敗をしたのか!?」

「急ごう。」


 ギガントとハーピーは、広場に向かって駆け出す。




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