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36-4・ザムシードvsスペクター~魍紅葉覚醒

「問答無用かよっ!?」


 ザムシードは、アクセルを捻ってマシンOBOROを加速!迫ってくるベンケイとイゾウを跳ね飛ばすが、ナガヨシと相対して戸惑う!


「紅葉っ!」


 妖幻ファイターナガヨシの外面は面具を着けた鎧武者なのだが、中身が「乗っ取られた紅葉」だ!ザムシードは、戸惑った隙を突かれ、ナガヨシの振るった十文字槍を喰らって、マシンOBOROから投げ出される!


「・・・くっ!」


 体勢を立て直したベンケイが、地面を転がるザムシードに突進!ザムシードは、体勢が整わないまま裁笏ヤマ(木製ナイフ)を振るって応戦するが、死角から踏み込んできたイゾウの斬撃を喰らって、再び弾き飛ばされて地面を転がる!更に、ナガヨシが接近してきて、倒れているザムシードに十文字槍を突き降ろした!


「ぐわぁっっっ!!」


 十文字槍がザムシードの胸プロテクターに着弾!ザムシードは、左手で十文字槍の穂先を握って、ナガヨシを手繰り寄せる!


「目を覚ませっ!紅葉っ!」


 右手に持つ裁笏ヤマをナガヨシに叩き込む隙は充分に有るのだが、ザムシードに攻撃意思は無い!


「らしくねーぞ、紅葉!シッカリしてくれ!!」

(・・・燕真っ)


 ザムシードの声が、ナガヨシ(清姫)の中に封じ込められた紅葉に届く!目覚めた紅葉が懸命に抵抗をして、ナガヨシの動きが鈍った!


「紅葉!オマエは、支配しているヤツに抵抗を続けてくれ!

 オマエさえ割り込んでこなければ、あとは何とかする!!」


 ナガヨシから離れ、ベンケイとイゾウを睨み付けるザムシード!Yウォッチから水晶メダルを抜いて、ベルトの和船バックルに装填!全身が虹色に輝いて、EXザムシードへと姿を変える!


「歴史上の敗者が、閻魔様を舐めるな!!」


 EXザムシードは、妖刀オニキリに『炎』メダルをセットして、迫り来るベンケイに突進!炎を帯びた妖刀と、薙刀・岩融がぶつかり、力負けをしたベンケイが数歩後退をする!

 背後から名刀・肥前忠弘を振り上げたイゾウが突進をするが、EXザムシードは、振り返りながら妖刀を薙いで、イゾウの脇腹に叩き込んだ!妖刀の発する炎がイゾウを焼く!

 体勢を立て直したベンケイが、薙刀を振り回しながら突進!EXザムシードの脳天目掛けて振り下ろすが、EXザムシードは、妖刀で受け止めた!


「小癪な!千閃乱舞!!」


 ベンケイは、苛立ちながら奥義を発動!無数の突きがEXザムシードを襲う!EXザムシードは数歩後退をしながらベンケイを引き付け、タイミングを見計らって宙返りで大きく回避!真後ろから突進をしてきたイゾウに、ベンケイの千閃乱舞が炸裂!イゾウは、全身から火花を散らせながら弾き飛ばされる!


「おのれ、卑怯な!」

「二人掛かりで仕掛けといて・・・よく、そんなことが言えるな!」


 EXザムシードに向き直ったベンケイが、再び奥義・千閃乱舞を発動!だが、EXザムシードは、刃を一切交えること無く、後退をしながら武器を弓銃ヤブサメに持ち替えて発砲!光弾の直撃を喰らったベンケイが仰向けに倒れる!


「卑怯と言われようが、セコいと言われようが、

 俺は、紅葉を駒扱いする連中に、容赦をする気は無い!」


 構えながら、ナガヨシをチラ見するEXザムシード。紅葉が抵抗を続けているらしく、ナガヨシは動きを止めたままだ。最優先で助けてやりたいが、その為には邪魔者を排除しなければならない。ベンケイとイゾウだけでなく、抵抗をするなら、里夢と退治屋CEOも叩き伏せるつもりだ。


「おい、夜野君、どうなっているんだ?」


 眼前の出来事は、喜田CEOには想定外。スペクターを召喚すれば、圧倒的な戦闘能力を得られると期待して手を貸したのに話にならない。


「燕真君が、想像以上に強いのよ。まさか、これほどとは思わなかったわね。

 強制的に従えた依り代(紅葉)は、戦力外。

 同調をしてもボンクラ(日部&茂面)では、一流のスペクターを使い熟せない。

 おかげで、良いデータが取れたわ。」

「何を悠長な!どうするのだ!?」

「ふふふっ・・・安心してください、CEO。

 今回のプロジェクトには、もう一つ布石があるの。」


 ここまでは、妖幻ファイターの使役対象が、妖怪から歴史上の英雄に変わっただけ。里夢は、依り代が主導権を握った状態で、どの程度、スペクターを使い熟せるかを確認していた。だが、それだけで終わらせるならば、手間をかけて英雄を召喚をした意味が無い。


「小娘を乗っ取っている妖怪(清姫)には、

 小娘(紅葉)の体から出て行ってもらって構わないわよ。」

「ん?それでは、依り代を操れないのではないのか?」

「乗っ取ってもらった目的は、スペクターとの契約を結ぶ為。

 もう、依り代の意思など関係無いと言っているの。」

「どういうことだ?」


 里夢は、不敵な笑みを浮かべて掌を翳す。


「弁慶、岡田以蔵、森長可!依り代の命を糧にして、肉体を支配しろ!」


 里夢が、ベンケイ&イゾウ&ナガヨシに指示を出すと、スペクター達は青白い魔力の光を放つ!


「ひぎぃぃぃっっ・・・怨念に・・・」

「乗っ取られる・・・CEO、助けて・・・ぐわぁぁぁぁ・・・・・・・」


 スペクター達の支配力が増幅された!悲鳴を上げるベンケイ(日部)とイゾウ(茂面)。日部と茂面は、弁慶と岡田以蔵の念に魂を掻き消されて事切れる。それは、ブロントの怨念が依り代を食い潰したのと同じ現象。


「お、おい、夜野君。俺の部下達は・・・?」


 ブロント事件では、依り代を食い潰すことでスペクターが本来の実力を発揮することを学んだ。アポロ事件では、スペクターと依り代の相性が良く、且つ、依り代の霊的才能が高ければ、スペクターが生前以上に強くなることを知った。リンクス事件では、アポロ事件を焼き廻したが、依り代を洗脳状態にしても、上手く機能しないことを経験した。


「命令伝達の間に挟まる依り代の人格は邪魔なだけ。

 依り代など、ただの燃料タンクと位置付けた方が計画は円滑に進む。」


 今回のプロジェクトの目的は、英雄そのものを、戦力として扱うことにある。依り代は、スペクターに肉体を与える為の媒体であり、依り代の人格や生命などは無用。


「彼等の魂は、英雄達に捧げられたわ。」


 喜田CEOは、腹心の部下が犠牲にされることを聞いていない。スペクタープロジェクトの全容と、里夢の冷酷さを知って驚愕をする。

 一方の里夢は、退治屋内で立場を失いつつある喜田など、頼れるパトロンではなく、ただの駒だ。


「うわぁぁっっっっっっっっっっ!!!

 変なオッサン(森長可の霊)が、ァタシを踏み潰そうとするぅぅぅっっ!」


 スペクターに魂を潰されかけているのは紅葉も同じ!蹲る妖幻ファイターナガヨシの中から、紅葉の悲鳴が聞こえる!


「紅葉っ!!」

「燕真っ!助けて、燕真ぁぁっっっっ!!!」

「シッカリするんだ!負けるな!!」


 駆け寄るEXザムシード。妖刀オニキリを装備して呪文を唱え、霊体斬りモードに変える。だが、戸惑ってしまって振るえない。妖気の類いならともかく、魔力媒体の霊を、妖力起源の刃で切れるのか?長可の霊には干渉せず、紅葉の魂にダメージを負わせることにはならないのか?試したことが無いので解らない。


「ソイツ(ザムシード)の声が邪魔で、長可が覚醒しない!

 弁慶!以蔵!ソイツを潰しなさい!!」


 里夢は、戦闘よりも紅葉のフォローを優先させるザムシードを見逃さなかった!これまでのプロジェクトを失敗に追い込んできた佐波木燕真という青年には興味があるが、興味や愛着で目的を見失うつもりは無い!『Li』メダルを翳しながら駆け出す!


「マスクドチェンジ!」


 里夢の体が青白い光に包まれ、マスクドウォーリアリリスにチェンジ完了!ベンケイ&イゾウと共に、ザムシードに押し寄せる!


「アイツ等を蹴散らして直ぐに戻る!だから、気をシッカリと保つんだ紅葉!」


 妖刀オニキリを構えて迎撃の体勢になるEXザムシード!だが、紅葉に危機に動揺をして、依り代を潰して肉体を得たスペクター達が、ワンランクパワーアップしていることを想定していなかった!


「うおぉぉぉっっっっっ!!!千閃乱舞!!」


 ベンケイの発する無数の突きがEXザムシードを襲う!EXザムシードは、ナガヨシ(紅葉)を庇いながら、妖刀でベンケイの突きを弾くが、先程までの奥義とは、速さも重さも別次元だった!無数の突きが着弾!

 弾き飛ばされ、悲鳴を上げながら宙を舞うEXザムシードに、納刀をしたイゾウが飛び掛かる!


「はぁぁっっっ!!奥義・鏡心抜刀!!」


 イゾウの居合抜きがクリーンヒット!EXザムシードは、勢い良く弾き飛ばされて、全身から火花を上げながら地面に墜落!エクストラモードが解除されて、ノーマルフォームに戻ってしまう!


「ふふふっ!燕真君!アナタの魂・・・私のコレクションに加えてあげる。」


 仰向けになったまま動けないザムシード対して、デスサイズを振り上げたリリスが襲いかかる!


「燕真っっっ!!!!立ってぇぇっっ!!」


 目の当たりにした紅葉が、蹲る妖幻ファイターナガヨシの内側で、悲鳴に似た声で燕真の名を叫んだ!


ドクン!

「うわぁぁぁっっっっっっ!!」


 心拍の高まりと共に、紅葉の中で「ドォンッ!」と音を立てて何かが弾け、ダムが開かれて堰き止められていた物が流れるように、霊力が溢れ出す!

 紅葉が、限界の更に奥を解放するのは3回目。氷柱女は、「上辺の霊力に覆われて隠された真の力」「上辺を枯渇させなければ真価は発揮はされない」と表現していた。

 ただし、これまでとの違い、眼前に、燕真の魂を狩ろうとする‘明確な敵’がいる!紅葉の発する霊力が、攻撃的な妖力に変化をする!


「燕真ぁぁっっっ!!!!」


 妖幻ファイターナガヨシの中から、闇色をした‘別の右手’が出現!ナガヨシの頭を掴んで、まるで皮でも剥ぐように力任せに引き剥がし、コアにされていた紅葉が姿を見せる!更に、闇色の‘別の左手’が、清姫の首を掴んだまま出現!紅葉の全身は闇に覆われ、地面に伸びた紅葉の影の頭部には角が生えている!


「んおぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 闇色の手は、紅葉の手と重なり、紅葉が力を込めると、ナガヨシの顔面を潰し、清姫の首をもぎ取った!森長可の霊は青い霧となって、清姫は闇の霧となって消滅をする!


「紅葉っっ!!」


 ザムシードは、痺れている体に活を入れて、上半身を起こして紅葉を見つめる。


「何が・・・起きているの?」


 リリスはデスサイズを止め、棒立ちのまま紅葉を眺めている。紅葉の様子は、リリスが想定したスペクタープロジェクトと違う。何が起きているのか理解ができない。


「オマエ達・・・殺す!!」


 全身が強大な妖気で覆われた紅葉が、炎のような赤色に変化した瞳で、リリス&ベンケイ&イゾウを睨み付ける!


※作中での燕真ザムシードの「歴史上の敗者が、閻魔様を舐めるな!!」と言う台詞は、敗者の気持ちを知っている燕真には珍しい台詞です。燕真らしくないんだけど、それくらいカッカしていると解釈して下さい。投稿前に「カットしようかな?」と考えたけど、聖人ではない燕真の人間らしい部分として残しました。

作者は、自らの思想に殉じた敗者は格好良いと思っています。


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