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34-2・ガルダの心象風景~メダルと強化結界

-駅前のビジネスホテル-


 大魔会幹部の3人が一室に集まり、これまでの推移を里夢が説明していた。話を聞くキュリア(青年)の表情は険しい。


「コナキ・・・イヌヅカ・・・サバキ・・・早急に消すべきだな。

 君はプロジェクトの当て馬程度に考えているようだが、その認識は甘すぎる。」

「なんですって!?」

「これまでの戦闘から、コナキ達が何を勘付くか・・・?

 我らは、不確定要素を1%も残してはならない。」

「解ったわ。それなら奴等の処分は私1人で・・・」

「心意気は買うが聞けない。やるぞカリナ。」

「はぁ?手を出すなって言ってんだから、勝手にしてもらえばいいじゃん!」

「そうよ!手を出さないで!」

「君1人ではできなかったから、今まで野放しにしたのだろう?

 もっと早くに処分をするべき・・・

 いや、我々が合流をするまで、君は計画の進行を待つべきだった。

 それなのに、勝手に計画を進め、彼等に余計な知識を与えた。」

「・・・チィ」

「これは、我らのプロジェクトだ。

 君1人には任せられない。僕等で後始末をする。

 失敗をしたら、里夢に責任を取らせるだけでは済まなくなるからな。」


 確かに、文架の退治屋達は知りすぎている。キュリアの正論に対して、里夢は何も言い返すことができない。


「彼等に使い魔は付いているな?今は何処だ?」

「病院よ。」

「サッサと始末をしよう。」


 キュリアの号令で、幹部達は文架総合病院へと出陣をする。




-病院の屋上-


 左手に『天』メダルを、右手に『銀』メダルを握り締めた雅仁が、平行立ちで気合いを入れ、四股立ちになって体内で練った霊力を左右の拳に送る。先程の戦闘では、ガルダと銀色メダルが反発をした。メダルの意思とリンクすることで、「あの時、何が発生したのか?」を確かめなければならない。


〈雅仁。私がオマエに課したのは、命の酷使ではない。〉

「・・・くっ!父さんっ!」


 しかし、メダルに念を送り込んだ直後に父の声が聞こえて、精神世界から弾き出されてしまう。2枚のメダルの両立を試みると反発が発生するようだ。


「何故、父さんが邪魔をする?」


 今の一連で理解できたことは、死した父・宗仁の念が『銀』メダルに残っていること。そして、父の念が、ガルダと銀色メダルの繋がりを妨害していること。だから、先程の戦いでは、銀色メダルを使った途端にガルダが拒否したのだ。

 だが、雅仁は諦めるつもりなどない。再び、左右の拳の中にあるメダルに、霊力を送り込む。


〈雅仁。〉


 再び、『銀』メダルから発せられる亡き父の声が、雅仁の念を退けようとする。だが、今度は、先程よりも強い‘執念’を発して踏み止まる。すると、周りがホワイトアウトをして精神世界に突入した。



「・・・これは?」


 雅仁は違和感を覚え、自分の手足を確認して、自分の姿が子供時代に戻っていることに気付く。目の前に狗塚宗仁が立っていた。


「邪魔をしているのは父さんなのか?」

〈そうだ。『銀』メダルに残した私の念だ。〉

「何の為に?」


 これは、宗仁が残した念の世界。だから、雅仁は、父が命を失った時の姿をしている。


〈言うまでもなく、オマエを無駄死にさせない為。

 オマエにとっては、銀色メダルは初使用かもしれぬが、

 ガルダのリミッターは私が破壊をしてしまったからな。

 1度でも使えば、天狗の妖気がオマエの命を飲み込む。〉

「・・・そ、そんな。」


 もう、ガルダでは銀色メダルは使えない。使えば即座に死ぬ。動揺で執念が保てなくなった雅仁が、再び精神世界から弾き出される。



 ホワイトアウトから通常の景色に戻り、成人した姿を取り戻した雅仁は脱力をして片膝を付いた。


「俺は、これ以上は強くなれない・・・ということか?・・・くっ!」


 一般的な妖幻システムは、妖幻ファイターの資格を得た時点で新規のシステムが提供される。だが、狗塚家の場合は、先祖から‘天狗’を継承しており、父の代で銀色メダルを限界まで行使してしまった為、これ以上の使用は不可能なのだ。再び、銀色メダルを使用できるシステムにするなら、天狗の封印を解いて再封印をしなければならない。要は天狗と戦わなければ成らないのだ。枯れた家系には、もはや、天狗を制圧する力など残されてはいない。


「おい、狗塚!ここにいたのか!?何やってんだ!?」


 雅仁を発見した燕真が寄ってくるが、雅仁には燕真の質問が呑気に聞こえて腹立たしい。燕真から眼を逸らし、ふて腐れた表情で腰を降ろす。


「君には関係無い。」

「関係無くはないだろ。」

「フン!足手まといの状態で、強さの限界を迎えてしまった俺を笑いに来たのか?」

「・・・はぁ?意味が解らん。」


 燕真は場の空気が読むタイプなので、雅仁から露骨に拒否をされているのが解る。だけど、珍しく拗ねているので放置できない。こんな時、紅葉ならば、相手の感情など無視して土足で踏み込むだろう。さすがに紅葉ほど図々しくはできないが、少しばかり紅葉を見習うことにして、雅仁の隣に腰を降ろした。


「足手まといとか、強さの限界ってなんだよ?オマエ、今でも充分に強いじゃん。」

「充分に強い俺が、リリスに惨敗か?嫌味にしか聞こえんな。」

「まぁ・・・そうだな。」

「妖幻システムの性能のみで戦えているクセに、いい気になるな!」

「否定できん・・・な。」


 今回のリリス戦に限らず、ブロンド戦でも燕真は勝ちを収め、サトリ戦では敗北寸前だった雅仁を救った。出会った頃は「未熟」と見下していたのに、いつの間にか、ガルダ以上の戦果を上げている。それでいて、相変わらず敵に情を見せ、落第点の戦いばかりしている。そんな未熟者が、高性能なザムシードシステムを扱っているのだから、「強さの限界」を勧告されてしまった雅仁は不満で仕方が無い。


「何をそんなにカッカしてんだよ?

 今回は、たまたまダメだっただけだろうに?」

「君は失敗をしても平気かもしれんが、俺は失敗が許されない!

 未熟者の君と一緒にしないでくれ!」

「はいはい・・・どうせ俺は、失敗だらけ。成功することの方が少ねー。

 酒呑メダルの時は、強さを求めた結果、死にかけたからな。

 オマエの気持ちは、それなりに理解している。」


 燕真は、雅仁の言い様に腹が立ったが、堪えて話を続ける。


「今回のことは、粉木ジジイや砂影ババアには相談できねーんだろ?

 ジジイ達は銀色メダルを全否定をしてんだから、

 銀色メダルを使おうとしたけどダメだった・・・なんて、言えるわけないよな。

 だから、俺が話し相手になってやるんだ。ありがたく思え。」


 だけど、腹が立っているので、燕真はチョット嫌味混じりに話す。


「俺は話し相手など求めてはいない。」

「なぁ、狗。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「エクストラザムシードってさ・・・

 多分、紅葉が、水晶メダルで俺を守ってくれてんだよな。」

「無能ぶりでもアピールしたいのか?それがなんだというのだ?

 君は、高性能システムと他者の力で強くしてもらっている。

 今更、改めて認識することでもあるまい。」

「それだよ、それ!」

「・・・何が言いたい?」

「俺は紅葉のおかげで強くなってるかもしれないけど、

 オマエの場合は、自力で何とかならないのか?」

「何ともならないから、困っているんだろうに!

 君と話していても、何も進展を・・・・・・・・・」

「水晶メダルは紅葉が霊力を込めたおかげ。

 優秀なオマエの自前の霊力で、

 銀色メダルが暴走しないように抑えられないのか?」

「・・・なに?」

「霊感ゼロの俺には、Yメダルの仕組みは、良くわかんねーんだけどさ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 一理ある。それまで否定的だった雅仁の言葉が止まる。現状の『天』メダルと『銀』メダルの両立は不可能。『天』メダル(ガルダ)のリミッターは限界に来ている。ならば、『銀』メダル側を管理すれば良いのではないか?今まで、『銀』メダル側で調整を試した退治屋など、誰もいないのではないか?


「フン!ド素人だからこその、定石に捕らわれない視点。

 だが・・・試す価値はあるな。」


 雅仁の目に輝きが戻り、いつもの‘マウントを取る言葉’を発する。燕真は、立ち上がった雅仁を見て、「自分のアドバイスが少しは役に立った」と感じ、安堵の笑みを浮かべながら手摺りに凭れ掛かる。


「相変わらず素直じゃねーなぁ。褒めるか嫌味を言うか、どっちかにしろ!」

「・・・フン!」


 両立ができないなら、片方ずつ攻略をする。雅仁が、体内で練った霊力を左の拳に握った『天』メダルに送る。



 雅仁の周囲がホワイトアウトをしており、目の前には天狗がいて、雅仁を睨み付けていた。


〈オマエが・・・俺を封印せし狗塚の末裔か?先代と同様に喰らってやる!〉


 天狗が飛びかかる。しかし、見えない壁に阻まれて、雅仁に近付くことができない。天狗の周りを透明の壁が覆っている。


〈・・・忌々しい。〉

「これが・・・妖幻システムの具現化?」


 使役妖怪が直ぐ近くにいるが、Yメダルの封印が機能して使用者には手を出せない。銀色メダルを使う度に、見えない壁が薄くなって妖怪との距離が近付き、やがては壁が無くなって封印妖怪の餌食になる。その一連が、この心象風景になって見えているのだ。


「なるほどな。理屈が解ってしまえば、簡単なことだ。」


 水晶メダルは、ザムシードの扱う閻魔大王の力を解放すると同時に、変身者の生命を守る。同様に、リミッターカットの機能を持つ銀色メダルに、封印妖怪を暴走させない力を与えれば、制御ができるようになるはず。


「結界の類いは、敵対妖怪の戦闘力を抑え、且つ、発動者の能力を高める。

 つまり、結界と同じ状況を銀色メダルに施すことができれば良いのだ。」


 雅仁が導き出した答えは、自分を結界で強化して天狗の暴走に対抗すること。念を込めながら呪文を唱え、見えない牢獄に閉じ込められた天狗の周りに、幾つもの結界の起点を作る。天狗から睨み付けられているが、奴は閉じ込められているのだから、気にする必要は無い。


「これで、理論上はクリアできるはず。」


 起点の設置を終えた雅仁が、強化の結界を発動させる。ここまでは成功。強化を実感した雅仁は、天狗の前に立って手を伸ばす。雅仁の手が見えない壁を通過して、天狗の腕を掴んだ。


〈ヌゥゥ・・・小賢しい奴め!〉


 一定の手応えを感じた雅仁は、体の半分を、天狗が閉じ込められている壁の内側に入れた。壁の中には、天狗の強い妖気が充満をしている。

 使役妖怪との距離が近ければ近いほど、妖幻ファイターの戦闘能力は上がる。だが、封印の壁(見えない壁)を銀色メダルの機能で破壊して近付く手段では、天狗が解放されて暴走を許してしまう。それならば、壁を破壊するのではなく、自らを強化して壁の内側に入れば良い。



 精神世界から現実世界に戻る雅仁。今の心象風景を現実世界で実行すれば、ガルダは、今まで以上に天狗の力を使えるようになる。問題は、強化の結界をどうやって発動させるか?毎回、変身をする度に、精神世界に入って一から結界を施すのでは、時間が掛かってしまう。


「無論、銀色メダルに結界を施す。」


 銀色メダルには、Yメダルに干渉する機能がある。その機能を、封印妖怪の強化ではなく、自分自身の強化に向ければ良い。

 やるべきことが明確化をした。雅仁は、今度は右の拳に握った『銀』メダルに念を送る。



〈正気か?雅仁。〉


 ホワイトアウトをした精神世界。幼少の姿に成った雅仁の目の前に、父・宗仁が立っていた。


「父さん。」

〈確かに、この理論ならば、天狗の餌食にならずに、ガルダは強化をされる。

 だが、解っているのか、雅仁。

 ガルダを強化している間、暴れようとする天狗を抑える為に、

 強化の結界を維持し続けなければ成らないことの意味を?〉


 それは、消耗を意味している。パワーアップをしたガルダとは、戦いで消耗をしながら、結界の維持にも霊力を使わなければ成らないのだ。


「もちろん、理解をしている。」

〈・・・なにゆえ?〉

「ん?どういうことですか?」

〈愚か者め!オマエが戦おうとしているのは鬼ではない!

 オマエは、狗塚の宿命とは関係の無い争いで、命を削るつもりなのか!?〉


 宗仁の幻影との間に反発力が発生!雅仁は精神世界から弾き出されてしまった。



「・・・くっ!やはりダメか!?」


 理論上ならば、ガルダの強化は可能になった。しかし、銀色メダルに込められている‘雅仁を守ろうとする父の念’が、『天』と『銀』のメダルのリンクを妨害する。


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