34-1・大魔会の戦士達~佑芽生存~魔楔が見える紅葉
※第34話以降に敵キャラとして登場するキュリア・カリナ・アトラスは、『妖幻ファイター』には登場しません。
ガルダは、手に握っていた銀色メダルを頭上に翳し、Yウォッチの空きスロットに装填!装填確認の電子音声が鳴り響き、妖幻ファイターガルダの戦闘能力が上昇をする!・・・だが。
「うわぁぁっっっっ!!」
ガルダの全身から小爆発が発生!仰向けに倒れ、変身が強制解除をされてしまう!
「おい、狗っ!何がどうなっているんだよ!?」
リリスは容赦無く接近をして来た!
「やめてくれ、里夢さん!俺は、説明を求めているんだ!」
「説明なら、頭が固すぎる雅仁君を排除したあとでしてあげるわよ!」
「応じられるわけないだろう!」
EXザムシードは右手の妖刀を強く握り締め、左手には裁笏ヤマを装備して、リリスに突進!振り下ろされたデスサイズを裁笏で受け止め、妖刀の刺突を放った!
デスサイズの深藍刃から発せられる一振り十閃の真空波の全てがEXザムシードに着弾!同時に、妖刀オニキリの切っ先が、リリスのプロテクターに突き刺さる!
「ぐはぁぁっっっ!!!」 「うぐぅぅぅっっ!!!」
地面に片膝を落とすEXザムシード。背後を見て、雅仁には真空波が一発も届いていないことを確認して、マスクの下で安堵の表情を浮かべる。ハナっから、盾になる覚悟はしていたが、さすがに十閃全部を受け止めるのはキツい。
「燕真君・・・最初から相打ち狙いで・・・」
数歩後退をして片膝を付くリリス。手数はリリスの方が多かったが、ザムシードの一点突破の一撃の方が重かった。
「避けたら狗に飛んで行くんだから、俺が全部受ける以外の選択なんて無い!」
「ふふふ・・・燕真君。アナタは興味深いわ。」
「俺はアンタのことが苦手になったけどな!」
アーキテウシス(一振り十閃の真空波)は、リリスがデスサイズを振り切ることで攻撃が完成する。EXザムシードが突進で距離を詰め、且つ、刃を受け止めた為に、リリスは振り切る間合いを失い、EXザムシードが喰らったのは不完全な真空波だった。ただし、EXザムシードは奥義の発動条件を見抜いたワケではなく、「仲間を守らなければならない」という勇気が奥義を完成させなかったのだ。
「燕真っ!」 「狗塚!」 「佑芽っ!」
スカイラインで到着をした紅葉&粉木&砂影が、駆け寄ってくる!消耗したEXザムシードと、倒れた雅仁&佑芽を見た粉木は「予断は無い」と判断して、自分も戦う為にサマナーホルダを翳す!異獣サマナーアデス登場!
-離れたビルの屋上-
リリスの戦闘を眺める2つの人影がある。
「どうする?見なかったことにする?」
「見殺しにはできまい。狙えるか、カリナ?」
「はぁ?誰に聞いてんだよ?狙えるに決まってんでしょ。」
カリナと呼ばれた小柄で髪をシニヨン(お団子頭)で纏めた女が、Aウォッチからメダルを抜いてベルトのバックルに装填!全身が青い輝きを放って、ピンク色で翼の生えた騎士=マスクドウォーリア・ハーピー出現。弓にメダルをセットして矢を番え、交戦中のEXザムシードを狙う。
-病院敷地内-
「・・・チィ!余計な手出しを。」
「ん?」
リリスが、高魔力を察知して振り返った。同時に、EXザムシードのセンサーが、高エネルギー体の急接近を感知。紅葉も嫌なプレッシャーを感じる。
「爺さん、狗塚達を頼む!?」 「婆ちゃん、ヤバい!隠れよう!」
「任せや!」 「なんなの!?」
アデスは雅仁と佑芽を庇って防御の姿勢になり、紅葉と砂影は建物の影に隠れる!EXザムシードは向かってくる高エネルギーに突進をして飛び上がり、着弾点を少しでも遠ざける為に妖刀を投擲した!
空中で高エネルギーと妖刀がぶつかって黒い爆発が発生!EXザムシードは爆風で弾き飛ばされて地面を転がり、アデスが雅仁と佑芽の盾になって堪える!
「ワシの出番は、防御だけかいか?」
爆風が収まり、脱力をして地面に片膝を降ろしたアデスの変身が強制解除をされ、粉木の姿に戻った。
「くっ!大魔会の新手かよ!?」
一定以上の消耗をしたEXザムシードがノーマルモードに変化。立ち上がって、裁笏ヤマを構える。しかし、その場にリリスの姿は無かった。
翼を広げたリリスが、上空からザムシードを睨み付ける。ガルダのスマートな戦いは完封したが、何故かザムシードの泥臭くて未熟丸出しの戦いには苦戦をさせられた。未完成だが意外性のある佐波木燕真という男は、大変興味深い。自分の色で汚したくなる。
「燕真君、アナタとは相互理解を深める為に、ゆっくりと、お話しがしたいわね。」
当初の目的(佑芽の殺害)は成功した。仲間に「屈辱的な援護」をされて興が冷めたリリスは、空の彼方へと飛び去っていく。
数秒の間を空けて、紅葉がザムシードのところへ、粉木は雅仁のところに、砂影は佑芽へと駆け寄った。
「燕真、ダイジョブだった!?」
「ああ・・・エクストラの防御力に助けられた。
オマエが、里夢さんを嫌う理由が、解ったよ。」
「でしょでしょ!ナマコオバサン、すっげームカ付くでしょ?」
「珍しゅう、手酷うやられたようやな、狗塚。」
「俺のことは良いんです。申し訳ありません。彼女(佑芽)が・・・。」
「意識を失うとるし、縫合した傷ちゃ開いしもたみたいだけど、
佑芽ちゃ生きとるさかい、あっかりして良いわちゃ。」
「生きて・・・いる?」
佑芽は間違いなくソウルイーターを喰らった。魂を斬られたのに、何故生きている?雅仁には理解ができなかったが、「守れた」という安堵で緊張感が途切れて意識を失った。
-離れたビルの屋上-
着地をしたリリスが、変身を解除して、スマートな男と、お団子頭で小柄な女を睨み付けた。
「キュリア君、カリナさん・・・邪魔をしないで欲しいわね。」
「何だよ、その言い方!?リムさんが苦戦していたから助けてやったんだろ!」
「助けを求めたつもりは無いんだけど。」
「ほら!やっぱり見なかったことにすれば良かった!
キュリアが助けろって言うから悪いんだ!」
「まぁ、そう言うなカリナ。里夢は大切な仲間だ。」
キュリアと呼ばれた優男が、カリナと言う名の小柄な女性を宥めつつ、里夢を見詰める。
「里夢・・・君の単独の任務は、離反者の始末だけ。
スペクター計画と退治屋の弱体化は、チームの任務だったはずだ。
いくら‘総帥のお気に入り’でも、独断は許されない。」
「・・・チィ。」
里夢は不満そうに舌打ちをしたが、それ以上の反発はしなかった。彼等が来日するまでにプロジェクトを軌道に乗せて自分1人の手柄にしたかったが、考えが甘かったようだ。
-数時間後・文架総合病院の病室-
燕真&紅葉&粉木&砂影に付き添われ、並んだベッドで雅仁と佑芽が眠っている。
「狗塚がこれほど消耗するなんて珍しい。ワシ等が到着する前に何があったんや?」
「ああ・・・まぁ・・・だいぶペースが乱れてたみたいだな。」
燕真は、雅仁卒倒の決定打が、リリスの攻撃ではなく銀色メダルを使った為と知っている。だが、粉木と砂影の猛反発が予想できるので、説明はしない。
点滴を受けている雅仁は、時折、小さく唸り声を上げ、眉間にシワを寄せる。昏睡の中で見ているのは、父が銀色メダルで命を削りながら、宿敵に突っ込んでいく姿。
「父さんっっ!!」
跳ね上がるようにして、ベッドから上半身を起こす雅仁。周囲を見廻して、自身の現状と、隣のベッドで眠っている根古佑芽の姿を確認する。
「彼女(佑芽)は・・・無事なんですか?」
「開いしもた傷口ちゃ治療したわ。命には別状が無いわちゃ。」
「精神的にごっつ疲弊してるみたいだけどな。」
「そうですか・・・良かった。」
佑芽が魂を狩られたと感じたのは、やはり錯覚だったのか?雅仁は安堵の溜息を漏らす。
「随分と取り乱していたようやが、何があったんや?」
雅仁は、しばらくは答えにくそうに俯いたが、やがて脳内で「解る範囲」を整理して口を開く。
「彼女(佑芽)は魂を斬られたんです。
おそらくは、離反者達の死因と同じ。奴等はリリスの制裁で死んだんです。
しかし、彼女(佑芽)の暗殺には失敗したようですね。」
「お姉ちゃんが・・・助けてくれたんです。」
薄らと眼を開けた佑芽が、弱々しい声で会話に参加をする。会話は聞こえていたが、困憊状態で動けなかった。今も意識は朦朧としているが、「リリスの魂狩り」の話題を聞き流すことはできない。
「斬られたのは、お姉ちゃんの念です。
私と狗塚さんを助ける為に、お姉ちゃんの念が私を支配したんです。」
「君のお姉さん?だから、君が根古礼奈に見えたのか?」
「あの時の私は、自分の意思で体を動かせなくなっていました。
お姉ちゃんが割り込んでくれなければ、きっと、死んでいたと思います。」
物に念が隠って意志を持ったり、妖怪が依り代を支配するように、姉の強い念が佑芽に取り憑いて動かしたとしても、不思議なことではない。
「でも、私の代わりにお姉ちゃんが・・・。」
「礼奈の意思ちゃ、佑芽と雅仁を守りたかったんでしょうね。」
礼奈の念が佑芽に入り込んでいたので、佑芽は死なずに済み、姉が狩られたのだ。
雅仁は、佑芽を救うつもりで挑んだが何もできず、「摂理の無視」と考えて祓おうとした礼奈を救われ、礼奈は2度も命を奪われてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。悔しくて、根古姉妹に顔向けができない。
「粉木さん・・・砂影さん・・・。
大魔会には‘精神支配’という技術があるのでしょうか?」
佑芽は、「自分の意思で体を動かせなかった」と言った。雅仁には、暴走状態だった佑芽と、今の弱々しい佑芽が、同じ人物とは思えない。ましてや、自分を犠牲にして救ってくれた礼奈が、敵意を向けていたとも思えない。もっと別の意思に支配されていたと考えるのが、最も納得できる。
ここから先の話に確証は無い。だから、雅仁は「仮に」と前置きをして説明を始める。
「リリスは、彼女(佑芽)が何処にいるのかも解らない状態で、
声を出さず、通信手段も用いずに、指示を出しました。」
「ん?どういうことだ?」
「念で指示を出したっちゅうことか?」
「可能性が高いです。
彼女(佑芽)は、命を狙われていたのに顧みようともせず、
生身のままで、ガルダに変身をしていた俺の妨害を続けました。」
「有り得ないわ。
退治屋の従事者なら、学生だとしても妖幻システムの戦闘力は学んでいるわ。」
「はい。到底、正気の状態だったとは考えられません。」
「この女の人(佑芽)ゎノーミソが腐ってるってこと?」
「コラ、紅葉。
本人の目の前で、もの凄く失礼なことを言うな。オマエとは違うんだぞ。」
「ァタシ、ノーミソ腐ってないもんっ!」
人の尊厳や人命を顧みない大魔会に、精神支配の技術があったとしても何も不思議ではない。
「佑芽が、大魔会の精神支配を受けとる・・・ちゅうことね。」
「あくまでも、俺の推測ですが。」
そう解釈すると、佑芽の行動は、全て辻褄が合う。
「なら、里夢さんが仕掛けてきたら、根古さんは、また正気を失うってことか?」
「敵なんだから『さん』なんて付けるな!あんなの毒ナマコでイイのっ!」
「言いたいことは解るが、せめて人扱いをしろ。
そもそも、今の議題は、夜野里夢に『さん』を付けるかどうかではなく、
根古さんが洗脳されてしまってるってことだぞ。」
「ニャンニャン(佑芽)のセンノーなんて、
まっさっちか、爺ちゃんか、婆ちゃんが、何とかすればイイぢゃん!」
(ニャンニャン?・・・え?もしかして私のこと?)
紅葉の突飛な発言に対して、雅仁&粉木&砂影が、驚いた表情で顔を見合わせる。3人は、提示した『佑芽を助けるメンバー』の中に、霊力ゼロの燕真が入っていないことで察しが付いた。
「ァタシゎ、燕真が毒ナマコを人扱いしてる方が問題なの!」
「里夢さんは人だ!人扱いして当然だろう!
・・・え?・・・てか、精神支配なんだぞ!
ジジイ達が何とかするって、そんな他人任せなことを簡単に言うな!」
「ニャンニャン(佑芽)は暴れたくないのに、暴れちゃうってことは、
ニャンニャンだけぢゃ、毒ナマコ(里夢)の命令に負けちゃうってことでしょ?
なら、誰かが助けてあげればイイぢゃん。爺ちゃん達ならできそ~ぢゃね?
ニャンニャンの胸に刺さってるモヤモヤしてるのが魔力ってヤツだよね?」
「見えるのか?」
「ぅん!モヤモヤモヤモヤ。ニャンニャンのオッパイのところ。」
打ち込まれた本人(佑芽)すら見えない魔力の楔を、紅葉は認識をできるらしい。念を祓うのならば、粉木達でも可能だ。根源が霊力ではなく魔力なので決して簡単ではないが、不可能でもない。やってみる価値はありそうだ。
「粉木さん、砂影さん、彼女のことをお願いしても良いですか?」
雅仁は、佑芽のサポートを粉木達に任せ、ベッドから抜け出して、まだ重い体に活を入れて立ち上がる。
「魔力を感知できる紅葉ちゃんも、フォローに入ってくれるか?」
「ん~~~・・・イイケド。まさっちは手伝ってあげないの?」
「すまないが、俺には俺でやることがある。」
「ジッとしてられんのは解るが、あまり根を詰めんなや。」
粉木は「無理をしないように」と忠告をしたが、生真面目な雅仁が無理をすることは百も承知で見送る。
「俺、狗に付くよ。」
「んぇっ?燕真、ニャンニャン(佑芽)のお手伝いしないの?」
「根古さんを助けるメンバーから俺を外したのはオメーだろーに!」
「ぅん。燕真ぢゃなんにもできない。でも、ァタシのお手伝いならできるぢゃん。」
「どんな手伝いだよ!?」
「ァタシのジュース買ってくるとか、お菓子買ってくるとか、肩もみするとか。」
「俺はオマエの舎弟かよ?」
言うまでもなく、紅葉のパシリをする気は無いので、燕真は雅仁を追い掛けていく。




