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33-4・6年前の雅仁と礼奈~魂狩り~銀メダル反発

 根古礼奈は、中学時代に才能を見込まれ、高校を卒業して直ぐに退治屋本部で就学をした。礼奈は才能を過信していたわけではないが、「スカウトをされた者は、妖幻システムの受領はほぼ確実」「エリート候補として期待されている」と聞いていたので、それなりに自信を持っていた。

 陰陽道の学校は、陰陽道がメインだが、一般教養も学び、世間一般では、専門学校卒業と同等の扱いになる。

 礼奈は、その学舎で、突出した才能と出会った。それが狗塚雅仁。


「何か、スゲー名門らしいぞ。」

「家族は皆、鬼に殺されたんだってさ。」

「教官が『あまり深入りをしない方が良い』って言ってた。」


 同期は雅仁を珍獣扱いして、遠くから眺めるだけで、接点を持とうとしなかった。雅仁自身が、人を寄せ付けない雰囲気を発していたので、礼奈も積極的に話し掛けることは無かった。

 しかし、模擬戦(戦闘や陰陽術を駆使した化かし合い)や、グループ行動になると、同期内で成績2番手の礼奈は首席の雅仁と組む機会が多く、必然的に接点が増える。雅仁は、試験や模擬戦のような実力の勝負では他者の追随許さなかったが、協調性の類いは大幅に欠けており、ロクに発言もしない為、グループ行動では礼奈がイニシアチブを取らなければならなかった。


「狗塚君・・・もう少し、皆と仲良くしないと、意思の疎通ができないよ。」

「申し訳ないが、俺には協調など必要無い。」


 狗塚雅仁は、退治屋ではなく孤高の陰陽師。退治屋で学んでいるのは、師となる父を失ったからであり、同期達と同じ進路は歩まない。父が生存をしていれば、サラブレッドの彼は、退治屋の就学生と接点を持つ機会など無かった。


「そうかもしれないけど、一般常識を蔑ろにしすぎなんだって。」


 陰陽道のスキルを磨くことのみしか考えていない雅仁は、礼奈のアドバイスを聞こうとはしなかった。


「猫には優しく接してあげるのに、人は苦手なの?」

「・・・ん?」


 想定外の質問に戸惑う雅仁。それは、礼奈が初めて見る雅仁の‘年相応’の表情だった。


「昨日の帰り道、野良猫に餌をあげてたでしょ?

 冷たい印象があったけど、根は優しいんだね。」

「俺が・・・優しい?」

「猫好きなの?」

「な、馴れ馴れしく寄ってきて煩わしかったから、

 たまたま持っていた食料を恵んで、食している隙に去っただけだ。」

「・・・へぇ~。」


 礼奈が思い返す雅仁の姿は、意識的に猫に寄って行って、しかも餌を与えたあと、しばらく眺めているようにしか見えなかった。


「まぁ、狗塚君がそういうなら、そういうことにしておいてあげる。」


 雅仁は、恥ずかしそうにそっぽを向いた。礼奈は、雅仁の人間性には不満を持っていたが、彼の不幸な生い立ちを聞いていた為、周りを見ない彼のスタンスは‘焦り’と解釈して、「誰かがサポートしてあげなければならない」と感じていた。その感情が淡い恋心ということに、礼奈自身、まだ気付いていなかった。


 就学から1年半後、礼奈が自分の感情に気付く前に、雅仁が退治屋本部から旅立つ日が来た。優秀すぎるゆえの飛び級。本来ならば、優秀な者で2年、平均では3年間を学舎で過ごすので、僅か1年半での卒業をする雅仁は異例だった。

 礼奈は、去って行く彼を遠目に眺めていた。鬼の殲滅は狗塚家代々の悲願であり、鬼への復讐が雅仁の行動理念になっていた。共に学んだ1年半で、礼奈は、彼には、それ以外は見えていないことを理解した。

 雅仁のサポートをする為には、彼に追い付かなければならない。警備地域が固定をされる支部勤務ではなく、フリーで全国を動ける本部に所属をするのが最短ルートだ。雅仁が旅立ったことで、必然的に同期の首席に上がった礼奈は、エリートコースを目指して陰陽道を学ぶ。


 才能が有り、器量が良く、性格も穏やかな礼奈は、喜田CEOから気に入られ、「息子に嫁」に勧誘されたことがあった。だが、追い掛けたい相手がいたので、「まだ結婚は考えていない」と解答を先延ばしにする。


 そして、ようやく並び立てると思った矢先・・・根古礼奈は命を失う。



「君が・・・根古礼奈?」


 うろ覚えだが、陰陽道の就学時代に、唯一、頻繁に話し掛けてきた女性の顔が重なる。当時灰色にしか見えなかった雅仁の記憶の中の彼女が、今は色付いて見える。


〈佑芽に罪は無いの!許してあげてっ!〉


斬っ!!

 次の瞬間に、デスサイズの刃が、女性の真上から真下へと通過!ソウルイーター(魂狩り)発動!佑芽は、斬撃の傷一つ無いまま、俯せに倒れて動かなくなる!


「なにが・・・起きた?」


 リリスの技の効果は知らないが、大魔会の離反者が、致命傷の無いまま死体となっていたのは知っている。彼等が、大魔会のアサシンに始末されたという見当は付いている。

 ガルダは尻餅をついたまま、倒れた女性を呆然と眺める。佑芽を覆っていた礼奈の魂は、もう見えない。


「アナタもコレクションにして、並べて飾ってあげるから、悲しむ必要は無いわ。」


 ガルダ目掛けて、デスサイズを振り下ろすリリス!真横にワームホールが出現!


「うおぉぉっっっっ!!!」


 マシンOBOROを駆るザムシードが、装備した弓銃カサガケから光弾を発砲しながら、ワームホールから飛び出してきた!


「やっぱり、紅葉の予想した通り『嫌なヤツ』だったのかよ!?里夢さんっ!!」

「くっ!邪魔者がっ!」


 リリスは、魂狩りを中断して、デスサイズで光弾を防御しながら数歩後退!ガルダとリリスの間を通過したザムシードが、マシンOBOROを素早くUターンさせて、再び光弾を発砲しながら、リリスに突っ込む!リリスは、デスサイズで防御をしながら、背中の翼を広げてジャンプをして空中へと逃げた!


「無事か!?狗塚っ!」


 マシンOBOROから降りて、ガルダに駆け寄るザムシード。ガルダは、呆然としたまま、差し出されたザムシードの手を借りて立ち上がる。ザムシードは、正面で倒れている女性を見詰めた。


「彼女(佑芽)は?まさか?」

「すまない。俺の考えが甘かった。」

「何やってたんだよ!?

 優秀なオマエなら防衛してくれると思って任せたのに、救えなかったのかよ?」

「・・・すまない。」


 ガルダの気持ちが折れている。絞り出す声は、泣き声のように聞こえる。こんなガルダを見るのは初めてだ。察したザムシードはガルダを庇うようにして立ち、上空のリリスを睨み付けた!


「何をどう失敗したのか・・・話は、あとでゆっくり聞く。」


 Yウォッチから、水晶メダルを抜いて、和船バックルに装填するザムシード!全身が輝いて、エクストラモードに変化をする!


「オマエは少し休んでろ!」


 妖刀オニキリを装備したEXザムシードが、リリスに向かって飛び上がった!


「燕真君!アナタの魂、私のコレクションに加えてあげる!」


 空中のリリスは、刃が揺らめくデスサイズを構える!


「佐波木っ!その刃は気を付けろ!物理を無視して魂を狩るぞ!」


 我に返ったガルダが、声を絞り出して注意喚起をしながら、鳥銃を構えて発砲!リリスは、デスサイズを回転させて、飛んで来た光弾を防御!EXザムシードが振るった妖刀がデスサイズの柄とぶつかり、リリスの手元から弾き飛ばす!

 自由落下で着地をするEXザムシードは、振り返ってガルダを見詰めた。


「おい、狗っ!物理を無視して魂を狩るってどういうことだ!?」

「リリスのデスサイズは、防御不能で、命を奪われると言うことだ!」

「そーゆー超重要事項は先に言えよ!

 何も知らずに突っ込んで、いきなり死ぬところだったじゃねーか!」


 リリスが地上に降りて、拾い上げたデスサイズを構え直す。EXザムシードは、振り返ってリリスを睨み付け、妖刀オニキリの刃に手の平を宛てた。


「オーン!!」


 切っ先が鈍く揺らいだ妖刀を構えて突進をする!リリスが振り下ろしたデスサイズと、EXザムシードの妖刀がぶつかって切り結ばれた!


「なに?ソウルイーターを受け止めた!?」

「同じ種類の刃にすれば、対応できるってことだろ!?」


 ザムシードの妖刀は、除霊モードにすれば、妖怪に憑かれた人間を物理的に切断をせずに、憑いた妖怪のみを切り払える。


「要は、物理無視は、オマエ(リリス)だけの特権じゃない!

 どの組織も似たようなもんを考えるってことだ!

 尤も、うち(退治屋)はオマエのところ(大魔会)と違って、

 魂だけを狩るなんて下品なことは、やらないがな!」


 リリスは、二度三度とデスサイズを振るうが、妖刀で受け止められ、EXザムシードに柄を掴まれてしまう!柄を引っ張ってリリスを手繰り寄せ、腹に蹴りを叩き込むEXザムシード!蹴り飛ばされたリリスは、デスサイズから手を離して尻餅をつく!

 EXザムシードは、奪い取ったデスサイズを持ち直して振り上げ、リリスに向かって振り下ろした!


「くっ!」


 自身がソウルイーターを喰らう覚悟して、マスクの下で目を瞑るリリス。しかし、意識が途切れる様子が感じられない。恐る恐る眼を開けたら、EXザムシードは、デスサイズの刃を寸止めしていた。


「俺には、里夢さんの魂をコレクションに加えるような悪趣味は無い!」

「助けて・・・くれるの?」

「アンタにはムカ付いているが、だからって殺して良いとは思っていない!

 俺達を引っかき回して、人の命や思いを蔑ろにして、

 一体何がやりたいのか、俺に解るように説明をしてくれ!」


「佐波木のヤツ・・・どういうつもりだ?」


 様子を見ていたガルダには、EXザムシードの温情が理解できない。ガルダには、リリス(夜野里夢)が「情けをかければ改心をしてくれる人間性」とは思えない。鳥銃をリリスに向け、躊躇わずに引き金を引いた。


 飛んで来た光弾が、尻餅をついたままのリリスに着弾!怯えた声を上げ、這って逃げようとする!


「ひぃぃっっっ!!助けてっ!」

「おい、狗塚っ!何のつもりだ!?」


 見かねたEXザムシードが、妖刀を盾にしてガルダの発射した光弾を受け止める!


「それは俺の台詞だ!退け、佐波木!」


 リリスは、EXザムシードに庇われている間に立ち上がって間合いを空け、掌を翳して念じた!デスサイズはEXザムシードの手から放れて、リリスに向かって飛んで行く!


「あっ!」


 慌てて振り返るEXザムシード!デスサイズを握り締めるリリス!気を取られて防御が甘くなったEXザムシードに、ガルダの光弾が炸裂!弾き飛ばされて仰向けに倒れる!


「何をやっているんだ、未熟者めっ!」

「燕真君。アナタの好青年ぶりは、総帥に報告してあげるわ。」


 リリスは、デスサイズ・キルキスのグリップに『Kr』メダルを装填!奥義・アーキテウシス発動!深藍色の刃から、一振り十閃の真空波を飛ばす!ガルダは光弾の連射で相殺を試みるが、同時に飛んでくる十の刃には対抗できず、3発を迎撃して7発を喰らって弾き飛ばされた!


「くっ!悪女めっ!!」


 這いつくばるガルダ!ザムシードがヒューマニスト、且つ、フェミニストなのは、以前から知っている。リリス(里夢)を許せないのなら、他人任せにせず、やはり、ガルダ自身が仕留めなければならない。だが、これまで蓄積したダメージが重くのし掛かり、満足に動けない。


「負けるわけにも・・・逃すわけにもいかない。」


 ガルダは、Yウォッチから銀色のメダルを抜いて見詰める。それは、人間では扱えない危険なアイテムとして、大半が回収されて処分された。父の命を代償にして凄まじい力を与えた光景を、ガルダは覚えている。


「使うしかない・・・。一度くらいならば・・・食われずに済むはずだ。」


 デスサイズを構えて接近してくるリリス。EXザムシードは、状況の目まぐるしい変化に頭が付いていけないが、ガルダを庇って立つ。

 ザムシードの背後で、意を決したガルダが立ち上がった。手に握っていた銀色メダルを頭上に翳し、Yウォッチの空きスロットに装填!


《HYPER!》


 装填確認の電子音声が鳴り響き、妖幻ファイターガルダの戦闘能力が上昇をする!


「おい、狗塚!そのメダルはっ!?」

「下がっていろ!ヤツとは俺が戦う!!」


 EXザムシードを押し退けて前に出るガルダ!・・・だが。


〈雅仁・・・それは、オマエが使うべきメダルではない。〉


 ガルダにだけ、懐かしい声が聞こえる。


「父さんっ!?・・・うわぁぁっっっっ!!」


 ガルダの全身から小爆発が発生!仰向けに倒れ、変身が強制解除をされてしまう!

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