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34-3・大魔会再戦~1対3~宗仁の語らい

 脱力気味に床に片膝を降ろす雅仁。「上手く進捗していない」と察した燕真が、雅仁に近付こうとする。しかし、横目に見えた光景が燕真の動きを止めた。


「・・・ん?」


 病院の真正面。防犯灯に照らされ、敷地内に入ってくる人影が2つ。


「おい、狗塚。」

「どうした?」

「また来たぜ。しつこい。」

「なに?」


 立ち上がった雅仁が、燕真に寄って行って同じ方向を見下ろす。片方は見知らぬ青年だが、もう片方は夜野里夢だ。


「根古佑芽の殺害に失敗したことに気付いたのか?」

「解んねーけど、俺達と仲良くする為に来たってことはなさそうだな。

 もう片方もマスクドウォーリアかな?」

「間違いないだろうな。」


 奇襲ではなく正面から乗り込んでくるのは、戦闘能力に自信があるから。青年が真っ向勝負タイプと考えるべきだろう。


「1対2・・・か。キツいけどやるしか無いな。」

「1対2?」

「オマエ、今の自分を戦力外って感じてるんだろ?

 そんな負け意識を抱え込んだままで戦うつもりなのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何かを掴めそうなんだよな?

 だったら、それを掴んでから戦闘に参加してくれ。

 それまでは、俺1人で凌ぐ。」

「解った・・・任せるぞ。」

「おう!」

「ただし、おそらく、最低でも1対3。

 何処かに、もう1人潜んでいると考えるべきだ。」

「はぁ?」


 先程の戦いでは矢で攻撃してきた者がいた。ハンタータイプを前線に送るバカはいない。そして、正面突破の自信を見せる青年が、ハンターということは無いだろう。つまり、接近戦タイプの里夢と青年の他に、遠距離から仕掛けてくる敵がいるのだ。


「1対3・・・マジで?」

「ハンタータイプの攻撃を封じる為、ひたすら接近戦を挑め!」

「う・・・うん。頑張る。できるだけ早く戦闘に参加してくれ。」


 雅仁が戦闘可能になるまで、敵2人を相手に1人で凌ぐつもりだったが、敵は最低でも3人はいるらしい。しかも、雅仁は、燕真の言葉に甘えて、「何かを掴む」を優先させる気だ。


「君が3人を引き付けられない可能性を考慮して、

 俺から粉木さんに、根古佑芽の防衛を頼んでおく。」

「ああ・・・うん。」

「俺が戦線に立つまでは、敵の制圧よりも、君自身が倒されないことに専念しろ!」

「なんで、戦わないオマエが仕切ってんだよ!?なんか腹立つ。」


 燕真は、格好を付けてしまったことを後悔しつつ、Yウォッチから『閻』メダルを抜いて和船型バックルに装填をした。


「幻装っ!」


 妖幻ファイターザムシード登場。更に水晶メダルでEXザムシードにパワーアップをしてから、屋上手摺りを飛び越えた。



-地上-


 里夢と青年キュリアの前にEXザムシードが降ってきて着地をする!


「あら、燕真君。私に会いたくて、お出迎えかしら?」

「そんなワケ、無ーだろ!ここから先は行かせない!」

「それは残念ね。燕真君とは仲良くしたいのに。」


 青年は『Xi』メダルをAウォッチから抜いて、ベルトのバックルに装填!黄色ベースのマスクドウォーリア・キマイラ登場!


「里夢、君には老人達を任せた。妖幻ファイターは僕とカリナで相手をする。」

「痛め付けても構わないけど、殺さない程度にしてほしいわね。」


 里夢はザムシードを避けて走り、病院の入口へと向かう!EXザムシードが追うが、キマイラの放った鞭が伸びてきて足に絡み付いて転倒をする!


「くそっ!行かせるかっ!」


 EXザムシードは弓銃ヤブサメを召喚して構え、駆けていく里夢の足元目掛けて矢形の光弾を放つ!爆風に煽られた里夢が転倒!EXザムシードは足に巻き付いた鞭を解いて里夢を追うが、上空から黒い矢が飛んで来た!


「チィッ!狗の予想通り・・・狙撃タイプの3人目がいるってか!」


 一定の予想をしていたEXは、横っ飛びで回避!黒い矢が地面に着弾して、黒い爆発が発生をしてEXザムシードを弾き飛ばす!

 更に、キマイラが振るった鞭が着弾して、火花を散らせながら再び弾き飛ばされるEXザムシード!直ぐに立ち上がって里夢を追い、病院内への潜入を妨害する!


「いつまでも女性を追い回すのは醜いわよ、燕真君!」

「生身のアンタを、問答無用で銃撃するよりはマシだろうに!

 だけど、俺を無視してアンタが押し通るなら、発砲する覚悟はできている!」


 粉木を戦場に引っ張り出すつもりは無い。1人で3人相手の防衛戦をするつもりなので、綺麗事を並べる余裕も無い。

 EXザムシードの覚悟を把握した里夢が、マスクドウォーリア・リリスに変身をする!


「おぉぉっっっっ!!」


 武器を妖刀オニキリに持ち替え、柄に属性メダル『閃』を装填したEXザムシードがリリスに突進!妖刀とリリスの振るうデスサイズがぶつかる!キマイラがEXザムシードの後ろに回り込んでサーペントウィップを振るうが、EXザムシードは、ローキックでリリスの体勢を崩し、振り返りながら妖刀から閃光の刃を伸ばして打ち返す!



-離れたビルの屋上-


「あのアバズレ、邪魔だってのっ!!」


 マスクドウォーリア・ハーピーが、弓矢でEXザムシードを狙った状態で苛立っていた。狙撃をしたいのだが、交戦中のリリスが邪魔でザムシードを狙えない。


「クソ!纏めて吹っ飛ばしてやりたいっ!」


 ハーピーならば、無差別に矢を放って粉木達を建物ごと吹っ飛ばすことも可能。ただし、人命軽視の大魔会でも一般人に被害を出す戦闘は御法度。ハーピーがペナルティーを科せられてしまう。


「リムさんの尻ぬぐいで、私がイエローカードをもらうなんて、冗談じゃない!」


 EXザムシードは出動時の雅仁のアドバイスに従い、矢が飛んで来た方向を意識してリリスを盾にしながら接近戦を挑んでいる。



-病院の屋上-


 悠長に精神世界と現実世界の往復をしている余裕は無い。


「父さんの思念を退けなければならない。だけど、どうやって?」


 今まで、特に疑問を持たずにガルダに変身をしていたが、改めて考えれば疑問だらけだ。既に天狗の封印力が限界なら、雅仁は何に守られている?銀色メダルを使った時点で、天狗に食われるはずではないのか?

 その答えは理解できた。父が最後の力を振り絞って『銀』メダルに込めた念によって守られているのだ。処分されるはずの銀色メダルが、「父の遺品」「御守り」として雅仁の手に残った理由も説明できる。

 だから、銀色メダルの機能が発動する前に、父の念によって妨害をされる。


「・・・父さんの念を、俺の念で上書きする。どうやって?」


 地上では、EXザムシードとリリス&キマイラが戦っている。辛うじて防衛線を維持しているが、あきらかに劣勢。破られるのは時間の問題だ。


「あと少し・・・あと少しで答えに辿り着けそうなんだ。」


 気ばかりが焦るが答えが解らない。父は、「雅仁の理論では大幅に消耗をする」「そこまでして、宿命とは無関係な敵と、何の為に戦うのか?」と問うていた。


「・・・俺が戦う理由。」


 何故、銀色メダルを使おうとした?守ろうとした者を守れず、それどころか、守ろうとした者に庇われた。その、やるせなさ、憤り、悔しさから、自分を見失い、無意識に銀色メダルを手にしていた。


「今は違う。忘我ではなく、俺の意思で銀色メダルを使いたい。」



 気が付くと、雅仁は幼い姿になり、ホワイトアウトをした精神世界に立っていた。目の前には父の姿がある。


〈答えは見付かったか?雅仁。〉

「ああ・・・見付かったよ、父さん。」


 宗仁の幻影は、厳格な表情で雅仁を見詰める。


〈改めて問おう。オマエは、なにゆえ、宿命とは無関係な戦いに心血を注ぐ。〉


 雅仁は、決意を秘めた眼で父の幻影を見詰めた。


「答えは、解らない・・・だ。」

〈・・・ん?〉

「満足な答えが返せなくて申し訳ありません。だけど、心配は要りません。

 俺は、貴方の知る俺から十数年が経過して、今はもう子供じゃないんだ。

 父さんに守られなくても、自分の責任は自分で取れるんです。」


 雅仁の姿が幼少から青年に変化をする。


「俺は、文架に来て、仲間の大切さを知った。

 当時の俺は気付けなかったが、以前、俺を仲間扱いしてくれた女性がいた。

 その人が、俺の手放そうとしていた暖かさを、思い出させてくれた。

 だから・・・彼女が守ろうとしたものを、今度は俺が守りたい。

 宿命の為でも、恨みを晴らす為でもない。

 俺が何をできるのか・・・俺自身で決めたいんです。」


 そこまでは真剣に話した雅仁の表情が少し砕け、穏やかな笑みを浮かべた。


「聞いてくれよ、父さん。

 文架市には、凄まじく未熟な退治屋がいるんだ。」


 最初に会った時、雅仁は「彼に退治屋が務まるのか」と驚いた。感情的で、結果に繋がらない意味の無い行動と、泥臭い行動ばかり。彼が行ったことで、意味が無いままで終わった活動は沢山ある。だけど、意味が無いと思ったのに、結果に結びついた努力も沢山ある。

 接していくうちに、雅仁には無い素晴らしいものを沢山持っていることを知り、格好良く感じられるようになった。雅仁が認めた天才少女が、彼に惹かれる理由が、今ならば解る。

 退治屋の騒動など、退治屋で処理をすれば良いのだろう。雅仁が消耗を覚悟して付き合う理由なんて無い。・・・だが、


「俺のやりたいことが、無駄な努力なのか、意味があるのか、

 それは後から考える。」



 ホワイトアウトが晴れて、現実世界が開ける。


「今はただ・・・俺は、彼等と肩を並べて共に進みたい。」


 薄くなっていく宗仁の幻影が小さく微笑む。


〈ならば・・・やってみろ。〉


 父に対して深々と頭を下げる雅仁。顔を上げた時、その場に父の姿は無かった。銀色メダルは父の念から開放された。あとは、雅仁が強化の結界を封じ込めるだけ。 雅仁は、銀色メダルを握り締めて念を込める。




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