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31-4・ヤキモチと梅パスタ~麻由の一目惚れ

-数日後(土曜日)-


 夕方前、紅葉目当ての客達が去って一段落したので、紅葉が燕真&粉木&雅仁を集めて、季節物の新メニュー=梅パスタの試作を開始した。燕真達は、店内に漂う梅の爽やかな香りを楽しみながら、紅葉の手際を眺める。


「ねーねー、そ~いえば、ホンゴーの元カノって、

 セイトカイチョーさんの嘘の爺ちゃんと結婚したんだよね?」

「ホンゴーじゃなくて、本条さん・・・な。

 そこは間違えるな。呼び捨てにすんな。

 血の繋がりは無いだろうけど嘘の爺ちゃんって言い方は失礼だぞ。」

「美琴ちゃんは、腹の中に葛城の嬢ちゃんの父親が居る状態で、

 オヤッサンに引き取られて葛城姓になったんや。

 それがどないした?」

「その辺ゎど~でもイイや。」

「どうでも良くはないだろ。そこそこの美談だぞ。」

「ホンジョーの元カノの子供って、セイトカイチョーさんのパパだけ?

 セートカイチョーさんのニセ爺ちゃんとの間には赤ちゃんいないのかな?

 嘘の結婚だから赤ちゃんできなかった?

 ホンジョーの元カノゎホンジョーしか好きぢゃないから赤ちゃんできなかった?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」×3


 本人に確かめたワケではないが、男3人の一般論で解釈すれば、ずっと一緒にいたのだろうから夫婦の営みがゼロの可能性は低いだろう。

 燕真達が無言になったところで、梅パスタを完成させた紅葉が皿に盛り付けて刻み海苔を添えて、それぞれの前に置いた。


「ど~思う?燕真?」

「そこ・・・あえて誰も触れなかったんだけど、わざわざ追及する?」

「どう転んでも美談が台無しになるで。」


 葛城昭兵衛が、友人の子を育てるという大義名分で、若すぎる後家さんを得たと考えるとキツい。だからって、美琴は生活の為に葛城昭兵衛を頼っただけで、ずっと、愛の無い仮面夫婦を続けたと解釈するのは切ない。


「解りやすく説明すると、

 ァタシのお腹に燕真の赤ちゃんがいるのに燕真が死んぢゃって、

 ァタシゎ燕真の代わりに粉木の爺ちゃんと結婚するってことだよねぇ?

 ァタシゎ、燕真の赤ちゃんを産んだあとで、爺ちゃんの赤ちゃんも産むのかな?

 どう思う、燕真?ァタシ、産む方がイイのかな?」

「大前提として、勝手に俺が殺すな。」


 せっかく、数日前に「紅葉を悲しませない為に死なない決意」をしたばかりなのに台無しだ。


「老体の粉木さんでは、子を作るのは不可能では?」

「バカにすんな、狗塚。まだまだ盛んだぞ。」

「梅パスタゎどう?もうチョット、塩味が強い方がイイかな?」

「ワシは、ちょうど良い塩加減と思う。」

「俺は、もう少し塩味が欲しいな。」

「リョーカイ!」

「もう少し梅が多い方が食欲がそそると思うぞ。」

「ん~~~・・・梅だとコストが掛かっちゃうから、

 爺ちゃんが塩っぱいと思わないくらいで、もう少し塩を増やしてみるね。」


 紅葉はカウンターに入って、早速、梅パスタ第二弾を作り始める。


「・・・で、ホンジョーの元カノと、ニセ爺ちゃんにゎ、愛ゎあったのかな?

 それとも、お金の為の結婚だったのかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」×3


 せっかく、話が逸れたと思ったから乗ったのに、直ぐに元に戻ってしまった。新メニューの話と、下世話な話題を混ぜないで欲しい。


「な、なぁ・・・そう言えば、その後、葛城さんは元気にしてるのか?

 傍から見ると、葛城さんとサトリの少年って、どっちも知的でお似合いだよな?」


 アポロの恋人絡みの話題は触れたくないでの、燕真が強引に話題を変える。


「ぅん!冨久センパイとセートカイチョーさん、お似合いだよね。

 でもね、事件のあと、冨久センパイ、コクってフラれちゃったみたいだよ。」

「ああ・・・そうなんだ?聞かなきゃ良かった。お気の毒に・・・。」


 こっちはこっちで、触れてはならない話題になっていた。


「なんかね、セートカイチョーさん、

 チョット前までゎ、お勉強と部活優先で、好きな人いなかったけど、

 最近になって、好きな人ができたみたいなの。」

「へぇ~・・・お堅いイメージだけど、年相応に、ちゃんと恋愛はするんだな。」

「冨久センパイぢゃないなら誰かな?生徒会の人かな?クラスの人かな?」

「さぁ・・・俺に聞かれても生徒会やクラスに誰がいるか知らんし・・・。」


♪~♪~♪~

 テーブルの上に置いてあった燕真のスマホが着信音を鳴らしたので、手に取って画面に表示された発信者を確認する。


「おっ!噂をすればなんとやら・・・だぞ。」

「んぇ?だれ?」

「葛城さんだ。」

「えぇぇっっ!なんでなんでなんで!?

 なんでセートカイチョーが燕真の番号知ってるの?」

「なんでったって、番号交換したからに決まってんだろ。」


 騒ぐ紅葉を尻目に、燕真はスマホに対応をする。あからさまに動揺をした紅葉が、調理に全く集中せずに燕真の会話に聞き耳を立て、「それ食ったら一発で高血圧になるぞ」って分量の塩を梅パスタのフライパンに投入した光景を、粉木と雅仁は見逃さない。だが、電話中の燕真は気付いていないので、「ヤツに責任を取って処理させれば良いか」とアイコンタクトを取る。


「これから、ここに来るってさ。」

「誰が!?」

「葛城さんと電話してたんだから、葛城さんに決まってんだろう。」

「なんで?」

「なんか用があるんじゃないのか?」

「何の用?」

「さぁ・・・俺に聞かれても解らん。本人が来たら聞けよ。」

「むむむぅ~~~~!!!」


 麻由は「最近になって、好きな人ができた」らしい。彼女が最近で出会った男なんて、燕真くらいしかいない。恋のライバル登場?女性視点で見ても、美人で完璧な麻由なんかに言い寄られたら、朴念仁の燕真でも浮つくのでは?紅葉は嫌な予感しかしない。


「梅パスタ出来たのか?試食させてくれよ。」

「梅パスタなんて無いっ!」

「有るじゃんよ。」

「燕真に食べさせる分ゎ無いのっ!」

「はぁ?」


 紅葉は1人前分(試食用)なのに1キロぐらい塩を投入された梅パスタを、燕真に食べさせるつもりは無いらしい。つまり、雅仁と粉木が食わされるってことか?2人は青ざめて「死ぬぞ」「逃げるか?」とアイコンタクトをする。


「燕真のヘンタイ!ホンジョーと同レベル!

 高校生と付き合う気なの!?犯罪だよ!」

「急に何だよ?」

「高校生のお嬢がソレを言っちゃアカンやろ。」

「オマエ、もしかして葛城さんのこと嫌いなのか?」

「嫌いぢゃないけど、なんかイヤ!」


 燕真は、紅葉が不機嫌になった理由が全く解らない。


(・・・燕真のカッコイイところゎ、ァタシしか知らなくてイイんだもん。)


 臨戦態勢でライバルを待ち構える紅葉。5分ほど経過をして店の出入口が開き、いつものブレザー姿とは違い、オシャレに決めた麻由が入店をする。


「こんにちは。急に押し掛けてしまって申し訳ありません。」


 丁寧、且つ、張りのある声で挨拶をした麻由だが、店内の面子を見廻したあとは、持っていた袋を胸で抱えて、恥ずかしそうに赤面して俯いてしまう。


「どうしたんだ、葛城さん?何か用か?」

「はい・・・あの・・・」

「ん?どうした?」

「助けていただいたお礼が言いたくて・・・」

「几帳面やのう。礼なら、事件解決後に言うてもろたで。」

「そ、それだけじゃなくて・・・あの・・・

 この気持ちを、どうすれば良いのか解らなくて、戸惑ってしまって・・・。」


 初々しくはにかむ麻由。その仕草が、とても可愛らしい。覚悟を決めた麻由が、顔を上げた。


「は、初めて接した時から気になっていました!多分、一目惚れです!」


 燕真は驚き、何故か初対面の雅仁まで緊張して、粉木は「若いって良いな」と眼を細めて微笑んだ。麻由は顔を真っ赤にして勇気を振り絞り、店の奥に進む。


「なぁ~にぃ~~!!?」


 いきり立った紅葉が、麻由の視線を遮るようにして燕真の前に立ち、「その挑戦、受けて立つ!」と言わんばかりにファイティングポーズを決めながら、麻由を睨み付けた。


「ん?」 「ほぇ?」 「なんだ?」


 だが、麻由は、皆の期待(?)に反し、紅葉と燕真を素通りして、粉木の前に立つ。


「粉木勘平さん!好きです!!」

「なんやて?」


 目が点状態の粉木&燕真&紅葉&雅仁。爆弾発言の後に、麻由は大切そうに抱えていた袋を粉木に差し出した。


「あの・・・私の気持ちです!

 手編みとかは苦手で、購入した物で申し訳ないのですが、

 受け取ってください!!」


 押し付けられた袋を受け取る粉木。


「と、時々、こちらに、遊びに覗っても良いですか!?」

「ああ・・・うん・・・ええよ。」

「ありがとうございました!」


 許可を得た麻由は嬉しそうな笑顔を浮かべ、「また来ますね」と言い残して粉木に深々と会釈をした後、振り返って燕真&紅葉&雅仁に軽く一礼をして、店から去って行った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」×4


 4人は呆気に取られたまま、麻由を見送る。


「燕真ぢゃないんだ?」

「一瞬、俺が告白されるのかと思っちゃった。」

「コクられなくて良かったねぇ~、燕真!」

「何が良いんだよ!?」


 粉木が受け取った袋を開けると、中には、ハートマークの付いた可愛らしいマフラーが入っていた。


「あの娘・・・ワシに、このハイカラなマフラーを付けろってか?」

「良かったな、爺さん。多分、人生最後のモテ期だぞ。付き合うのか?」

「若い娘は好きやけど、友人の孫には流石に手ぇ出せんやろ。」

「そ~いえば、ホンジョーに『孫を頼む』って言われてリョーカイしてたね。

 約束なんだから、ちゃんと結婚して、最後まで面倒見てあげなきゃダメだよ。」

「そう言う意味の『頼む』とちゃうわい。

 最後まであの娘(麻由)の面倒を見とったら、

 ワシは、あと何年、生きなあかんねん?」


 葛城麻由は、過度なグランドファザコンの面があり、同世代間とは打ち解けにくいが、老人と接する時は緊張感が解れ全面的に信頼を寄せる傾向がある。要は、極端な歳上が彼女の恋愛対象なのだ。

 これは、血の繋がらない祖父・葛城昭兵衛から大切に育てられた為、及び、祖母・美琴の血を引いた影響だ。


 やや余談になるが、機嫌を直した紅葉が、燕真だけを特別扱いして、梅パスタ試作を燕真1人に提供した。普段なら不満を言いそうな雅仁と粉木は、口を噤んだまま何も言わないので、燕真は2人に申し訳ないと思いながら、口いっぱいに頬張り、



 その後、30分ほど意識を失う。

 燕真曰く、初めて、三途の川を渡りかける体験をしたらしい。せっかく、数日前に、「紅葉を悲しませない為に死なない決意」をしたばかりなのに、張本人に殺されかけるとは予想していなかった。




-数日後-


 粉木邸の客間で1人になった雅仁が、Yウォッチから1枚のメダルを引き抜いて眺める。それは銀色メダル。退治屋が回収して処分されるべきメダルなのだが、雅仁の持つ1枚は「父の遺品」「御守り代わり」として所持を許されている。

 大魔会離反者~ブロンドの一連の騒動で、これが「ただの遺品」「ただの御守り」ではなく銀色メダルと知った。何故、危険なメダルの所有が許されているのは解らない。

 文架市に来る前は、何のメダルか解らずに何度かYウォッチの空きスロットに装填したが、全く機能はしなかった。今は「装填する場所が違ったので機能しなかった」と把握している。


「命を削るメダル・・・か。」


 握り締めると、粉木が持っていた「ブロントの恨みが隠った銀色メダル」とは種類の違う念によって、雅仁が使用することを拒否しているのが解る。


「俺は・・・このままでいいのか?」


 ブロント戦、サトリ戦、アポロ戦。燕真は、エクストラを得て、確実に実績を重ねている。雅仁は、未熟扱いしていた燕真が自分を上廻り始めていることに、焦りを感じていた。

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