31-2・アデスvsアポロ~浄化結界
アポロが、腰にぶら下げたサマナーホルダから、神が描かれた‘ヴァルカン’のカードを抜き取って翳す!周囲で真紅の炎が上がりアポロを包んだ!そして炎が弾け飛び、赤基調で、各所に金色のアクセントがあり、装飾が大きく派手になったアポロ・ヴァルカンが出現!以後のアポロ・ヴァルカン(アポロV)の攻撃は、全て炎によって強化される!
「ヤベーな。そういや、パワーアップできたんだっけ?
粉木の爺さんから昔話で聞いていたけど、忘れてた。」
フォームチェンジにはフォームチェンジで対抗するべきか!?ザムシードは、Yウォッチから水晶メダルを抜く!しかし、ベルトの和船型バックルに装填する直前で、蝙蝠型のモンスターが飛来してきて、ザムシードの面前を通過した!
「燕真、あとはワシにまかせい!」
「えっ?」
振り返ると、粉木が歩み寄ってきた。その手には、蝙蝠が描かれたサマナーホルダが握り締められている。
「・・・爺さん、なんのつもりだ?」
粉木は、ザムシードの隣に立ち、アポロVを睨み付ける。一方のアポロVは、粉木を見て怪訝そうに首を傾げた。
「何処かで会ったような気がするのだが、何者だ、爺さん?」
「ワシの顔を思い出せんか?
オマンと盟友やったのは50年も前。オマンの記憶は50年前で止まったまま。
まぁ、直ぐには気付けんくても、しゃーないか。」
「・・・50年?・・・盟友?」
「粉木勘平や!50年を経て、ワシの男前が上がりすぎたよって解らんか?」
「・・・粉木?オマエが?」
粉木は、背後に蝙蝠型モンスター=ヤイバットを従えて、サマナーホルダを翳す!
「本条!何が目的で、あの世から迷い出て来たんや?」
「美琴を守る為!
俺は、命を賭して世界を救った!
だが、一生をかけて美琴を守る約束を違えてしまった!」
「オマンの恋人は、既に守られとる!」
「いい加減なことを言うな!危険に晒され続けているではないか!
俺の妨害をするなら、老いた貴様でも、容赦はせんぞ!」
アポロVが手を翳すと、ホッパーサイクロンが跳び跳ねながら粉木に襲いかかる! 粉木は、ヤイバットを嗾けて牽制しつつサマナーホルダを構えた!
「頭を冷やしてやらなならんようやな。・・・変身!」
粉木の全身が乳白色に包まれ、蝙蝠の意匠を持つ青い西洋騎士=異獣サマナーアデスが出現!間髪入れずに神が描かれた‘マキュリー’のカードを翳し、アデス・マーキュリー(アデスM)にフォームチェンジをした!
「おいおい、戦うつもりか?年寄りの冷や水だぞ!」
「アイツをあの世に送り返すんは、退治屋やのうて、異獣サマナーの仕事や!」
「何言ってんだよ!?思念を晴らすのは退治屋の仕事だろうに!?」
「そう言う問題やない!ワシの意地の問題や!」
「大丈夫なのか!?
アイツ、紅葉の学校の生徒会長さんを乗っ取ってパワーアップしてんだぞ!」
「やはりな。
なおのこと、オマンじゃ中身(麻由)が気になって本気で戦えんやろ?
ソイツの相手は、ワシがするっちゅーことや。」
サーベルを構えて突進を開始するアデスM!迎撃態勢で構えるアポロVと激突!アデスMは突きの連打を放つが、全てアポロVの手刀で受け流される!アデスMの剣技でも、アポロVの徒手空拳を抜くことができない!
「美琴ちゃんを守ることと、オマンが依り代にした娘に、何の関係があるんや!」
「おぞましい欲に晒される美琴を、俺が守っているんだ!」
「アホンダラ!その娘の、どこが美琴ちゃんや!?」
アデスMは「風の力を纏ったサーベル程度では戦い抜けない」と判断!数歩後退をしながらスピアを召喚して構え、切っ先に纏った鋭利な風をアポロV目掛けて飛ばした!アポロは、一気合い発して両拳に出現させた炎を飛ばして相殺する!アデスMは、スピアを振り回して鋭利な風を連射するが、全て、アポロVの炎の拳で防がれてしまう!
拳を突き出せば火炎弾を飛ばせるアポロVと、武器を振り回さなければ風刃弾を飛ばせないアデスMでは、アポロVの方が次弾の発射が早い!連射勝負は、徐々にアデスMが押され、風刃弾を潜り抜けた一発の火炎弾がアデスMに着弾!
「・・・ぐぅっっ!」
アデスMが体勢を崩したところにアポロVが飛び込んだ!アデスMは後退を試みるが間に合わず、炎を纏った掌底を腹に叩き込まれ、弾き飛ばされて地面を転がる!
「手応えが無い。貴様、本当に粉木なのか?」
アデスMの姿は、アポロVが知る姿と変わらない。だが、アポロVは、目の前で這い蹲っているアデスMが、自分の知る粉木と同一人物には思えない。
-50年前-
アポロとアデスの初めての共闘は、敵組織の下級幹部・ワーウルフとの戦いだった。アデスの独断専行で仲間達を窮地に陥り、アポロが救出をする。当時のアデスは、戦いの世界に踏み込んだばかりの素人だったので、アポロがサポートをしてワーウルフを追い詰め、2人で同時に必殺技を発動させて倒した。
「共にワルキューレと戦ってもらえないか?
君に志があるならば、力を貸してくれ。」
変身を解除した本条尊がアデスを見詰め、アデスも変身を解いて粉木勘平の姿に戻る。
「しゃ~ないのう。力、貸したるわ。」
本条尊が差し出した手を力強く握る粉木。
仲間入りをしたばかりの粉木は、事件が発生すると軽率に行動をして、度々、本条と意見が衝突をさせた。
粉木は、本条を「生真面目すぎる」とは感じていたが、彼の才能や熱い決意を評価していた。一方の本条は、粉木を「お調子者」とは感じていたが、一つの考えに固執しないゆえの気転や、隠れた努力を認めていた。
徒手空拳による肉弾戦タイプのアポロと、剣や槍で戦うアデス。それぞれが、得意とする戦い方を伸ばし、時として意見を衝突させながら、互いに命を預けられるパートナーに育っていく。
-今に至る-
アポロVの視点では、今のアデスMからは、過去の俊敏性や安定感を全く感じられない。
「バカにすんな!ワシは正真正銘の粉木勘平や!」
立ち上がりながらスピアを振るうアデスM!しかし、先端から飛ばした風刃弾は、アポロの炎を発した掌で握り潰され、穂先を掴まれてしまう!
「ワシが老いただけやない。
オマンは、50年前以上に強くなっているようやな。」
「美琴への思いが、俺を強くしてくれる!」
「それだけやない!その娘の中にあるオマンの血が、オマンを強化しとるんや!」
アデスMは胸に炎の拳を喰らって、スピアを手放して弾き飛ばされる!
「見てらんねーよ!だから、年寄りの冷や水って言ったんだ!」
ザムシードがアデスMの前に立ち、アポロVに向かって構えた!
「あっち(アポロ)は、体力全盛期のままで、
こっち(アデス)は、しょぼくれたジジイ!
戦力差が有りすぎだ!それが解らない爺さんじゃねーだろうに!」
だが、アデスMは援護を受け入れず、立ち上がって、構えているザムシードをを制する。
「『しょぼくれた』は言い過ぎや。まだまだビンビンやで。」
「追い込まれてんのに口だけは達者だな。少し安心した。
だけど、あとは俺が戦う!ジジイは引っ込んでろ!」
「ワシに任せろと言ったはずや!
ヤツは、盟友でありライバル。ワシが戦わねばならんねん。」
「おいおい、悲壮な決意でもして、死亡フラグでも立てるつもりか?」
「ちゃうわボケ!
こう言っちゃ何だが、まだまだヒヨッコのオマン(燕真)に負けはせんで!」
「・・・頑固ジジイ」
「ええ機会や。力押しだけちゃう戦いを見したる。」
アポロVは、アデスMから奪い取ったスピアを投げ捨てて構える!一方のアデスMは、放棄されたスピアには目もくれず、再び腰に装備されたサーベルを抜刀して構えた!
「何のつもりだ、爺さん?」
サーベルではアポロVに対抗できなかったのでスピアを装備して、それでも苦戦を覆せなかったのに、また武器をサーベルに戻した?ザムシードには、アデスMが意固地になっているようにしか見えない。
「はぁぁっっ!!」
気勢を発して突進をするアデスM!だが、アポロVに剣技を見切られて掌で楽々と上に弾かれ、懐に踏み込まれて背負い投げられる!
「がはぁぁっっ!!」
「おい、大丈夫か!?粉木ジジイ!」
50年前は互角の戦闘力を持つ2人だったのかもしれない。だが、体力を消耗させた老人と、その老人から「全盛期以上に強くなっている」と表現されたアポロVでは勝負になるワケがない。
「誰が子泣き爺やねん!」
サーベルを杖代わりにして立ち上がるアデスM。既に体力が限界に近いらしく、マキュリーフォームが強制解除をされて、ノーマルフォームに戻ってしまう。
一方のアポロVは、ほぼノーダメージ(ダメージはザムシードが与えた2発のみ)のまま、「追い撃ちをかける価値も無い」と言いたげに、アデスを眺めている。
「50年の歳月が経過したのは事実のようだな。
時の流れは無情。俺が認めた粉木は、過去にしか存在せぬといういうことか。」
「当然やろう!ワシは、オマンよりも50も歳を食っておるんや。
せやけどな・・・爺になっただけやないで。
50年を費やして、ワシはオマンの知らん力と老獪さを手に入れた!」
「・・・なに?」
ベルトに縛り付けていた袋から銀塊を取り出して、地面に叩き付けるアデス!
「オーン!結界発動!!」
銀塊から光が発せられ、周囲に配置されていた護符と結びついて結界を作り、アポロVを包んだ!途端に、アポロVの全身から粒子の蒸発化現象が発生する!
「なにっ?これは?」
動揺で動きを硬直させるアポロV!その隙を待っていたアデスが、サーベルを刺突の姿勢で構えて突進!
「舐めるなっ!!」
アポロVは、アデスが突き出した剣の軌道を冷静に見極めて、両掌で刃を挟んで押さえ込んだ!
「舐めとるんは、オマンの方や!」
次の瞬間、アデスは、空いている方の手に持った祓い棒で、アポロVのベルトを突いた!
「オーン!浄化!!」
「ぐぅぅっ!!」
急激に脱力をして片膝を付くアポロV。ヴァルカンフォームを維持できなくなり、ノーマルフォームにパワーダウンをする。
「言うたやろ!
今のオマンの強さは、オマン自身の力やない!依り代にしとる娘の潜在力や!
そやさかい、結界と除霊で、念を弱体化さして結び付きを弱めたら、
オマンは著しゅうパワーダウンをする!」
「いつの間に、こんな仕掛け(結界)を!?」
「体力の衰えを理解せんと、無駄に、オマンに突っ掛かっとったワケやあれへん。
オマンに叩きのめされながら、ずっと、護符を配置しとったんや!」
「・・・くっ!」
これで戦力は互角・・・いや、体力が枯渇したはずのアデスが、あきらかに有利な状態に逆転をした。
「迂闊だった粉木が・・・とんだ策士に・・・」
「50年ちゅうんは、それほどの年月や。
ワシだけやない。時代も・・・滋子も・・・50の年を重ねた。
もちろん、オヤッサンと美琴ちゃんもな。」
「本当に・・・50年もの歳月が・・・。」
「オヤッサンと美琴ちゃんは、天に召されてしもうた。
半世紀前から一歩も動かんかったのは、オマンだけや。」
「バカを言うな!美琴は、こうして俺と共に・・・」
「その娘は美琴ちゃんやない。葛城麻由っちゅう名前の、オヤッサンの孫や。」
「そんなはずは無い!この娘は美琴だ!」
「オマンが見間違うんは、無理も無いかもしれんな。
その娘は、葛城のオヤッサンの孫・・・。
そして、オマンの恋人、須郷美琴の血を引いているんやからな。」
「・・・なに?」
アポロは、驚いた仕草でアデスを見詰める。




