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30-4・襲われる紅葉~ザムシード圧勝

-校舎・校長室前の廊下-


 扉を叩いていた紅葉は、魔力の発生と、妖怪が校長室から離れた気配を感知する。


「外に行った?なんで魔力?ど~なってんの?」


 状況は解らないが、事態が悪化していることだけは把握できる。紅葉は、施錠された校長室の扉を開けることを諦め、廊下を走り、階段を駆け下りる。職員玄関から飛び出して、校長室側に向かったが、割れたガラスが散らばっているだけで、既に妖怪の類いはいなかった。


「んんっ!あっち?」


 山頭野川の方向に視線を向ける紅葉。妖怪、及び、魔力は、東に移動をしているようだ。紅葉は、夢中になって気配を追う。




-河川敷-


 戦場に広い地形(高水敷)を選んだ真紅の騎士の強さは圧倒的だった!麻由を庇いながら片耳豚の突進を楽々と回避して、すれ違い際に回し蹴りを叩き込んで弾き飛ばす!死角から襲ってきたアカナメを、ノールックの裏拳で叩き伏せる!天井が無いゆえに特殊スキルを発揮できない天井サガリの顔面を掴んで地面に叩き付け、体が足裏だけのベトベトさんの動きを見きって、足裏を掴んで踏み付ける!


〈グァァ〉 〈グゥゥ〉 〈グェェ〉 〈グォォ〉


 妖怪達の目的は、真紅の騎士に連れ出された麻由を手に入れること。魂胆を真紅の騎士に見透かされ、地の利が無い広い戦場に誘き出されたのだ。


「美琴は俺の物だ!誰にも渡さん!」


 ダメージを受けた4妖怪は実態を維持できなくなって消滅(浄化はされない)。依り代にされていた校長&教頭&学年主任&数学老講師が地面に伏している。


「強欲に負けた醜い者共め!

 俺は、貴様等のようなクズがのさばる為に、平和を守ったわけではない!」

「ひぃぃっ!化け物だぁっ!!」

「化け物は貴様等の性根だ!!」

「お、お助けをっ!!」


 真紅の騎士に妖怪を祓う能力は無い。だが、生前に妖怪と戦った経験があり、依り代を殺害すれば、妖怪が憑けなくなる理屈は知っている。何よりも、愛する者を卑猥な目で見る者達を見逃すつもりは無い。


「待って!それゎダメっ!」


 堤防上で成り行きを見守っていた紅葉が大声を上げた。妖怪から麻由を守るつもりだったので、妖怪(の依り代)の命乞いをすることになるとは思っていなかった。

 麻由の無事を確認できて安堵をしたが、麻由を助けたバッタ顔の西洋騎士は一体何者?魔力を感じるから、大魔会の戦士、もしくは、悪魔だろうか?ワケが解らない。


「・・・源川さん?」

「むぅぅ・・・あの少女は?」


 真紅の騎士は、紅葉から、ただならぬ気配を感じ取って構えた。


「姿形は少女そのものだが、オマエも・・・か?」

「んぇ?ァタシ・・・も??」


 向かってくる紅葉に向かって突進をする真紅の騎士!麻由を心配する者同士で、友好を求めて駆け寄ってくるって雰囲気ではない!あきらかに、「今から貴様をブチのめす!」って闘争心剥き出しだ!


「んぇぇっっ!?なんでっ!?なんでっ!?なんでっ!?」


 慌てて駆け降りる足にブレーキを掛けて、振り返って逃走をする紅葉!


「来い!ホッパーサイクロン!!」


 紅葉は、堤防を上りきったところで、上空に魔力の発生を感知!直感で「何がヤバい物が来る!」と判断して、住宅地側の堤防斜面にダイブをする!直後に、メカニカルなバッタ型モンスター=ポッパーサイクロンが出現をして、紅葉がダイブをする直前にいた場所に突っ込んだ!


「ひぇぇぇっっっ!!!

 ァタシ、なんにもワルいコトしてなぁい!!

 ヨーカイとお友達ぢゃないってばぁ!!

 セートカイチョーさん、ソイツを止めてぇっっ!!」

「と、止めろったって、こんな怪物をどうやって?」


 堤防斜面を下まで転がり落ち、立ち上がって住宅街に逃げ込む紅葉。麻由は、状況が全く飲み込めず、自分が何をやれば良いのかも解らず、ただ怯えながら、倒れている老教師達、紅葉、真紅の騎士を、交互に何度も見廻す。


「その本能が発する感知力が何よりの証拠だ!」


 紅葉を追って堤防上に立った真紅の騎士が手を翳すと、ポッパーサイクロンは空中に発生した歪みに姿を消す。そして、紅葉の進行方向に魔力が発生!


「げげっ!また、バッタが来るっ!!」


 進行方向を変えて逃げる紅葉!空中が歪んで、ポッパーサイクロンが出現!今度は、紅葉の回避を予測していたので、紅葉が向きを変えた方向に飛んでいく!


「ヤバいっっ!!」


 ホッパーサイクロンが出現した魔力歪みの中から、バイクの駆動音が聞こえる!直後にザムシードが駆ったマシンOBORO(ホンダ・NC750Xバージョン)が出現!ポッパーサイクロンに追い付いて弾き飛ばし、タイヤを横滑りさせながら、紅葉の眼前でバイクを止める!ポッパーサイクロンは、空中の歪みに飛び込んで消えた!


「燕真っ!」

「オマエに言われた通りに待機してたら、オマエは死んでたぞ!」

「来てくれてありがとっ!」

「ちゃんと報告をしてから動け!・・・と言うか勝手に動き回るな!」

「うん、ワカッタ!そんなことより、大変だよ、燕真!」

「絶対に解ってないだろ!死にかけたことを『そんなこと』で済ますな!」


 マシンOBOROから降りて構えるザムシード!悠然と接近してくる真紅の騎士を睨み付ける!


「あれが敵か?」

「妖怪には見えないが何者だ?」

「よくワカンナイ。セートカイチョーさんを襲った妖怪4匹をやっつけちゃった。

 ヨーカイの依り代ゎ、河川敷に転がってるよ。

 アイツ、なんだろう?魔力感じるから、マスクドウォーリアかな?」

「いや、粉木の爺さんが変身する異獣サマナーってのに似てるか?」


 ザムシードの発した単語に、真紅の騎士が僅かに興味を示す。


「粉木?・・・懐かしい名だな。」

「なに?ジジイを知っているのか?」 

「ああ、知っている。俺の名は、異獣サマナーアポロ!」

「んぇ?アポロって?」


 ザムシードと紅葉は、粉木の昔話で、異獣サマナーアポロを知っている。だが、50年前に世界を救った伝説の英雄が、紅葉を討伐対象と認識して目の前に立っていることが信じられない。


「なぁ・・・どういうつもりか知らないけど、紅葉を襲うのは見当違いだ!」

「そ~だ、そ~だ!ァタシゎワルモンぢゃない!」

「それは、その娘を擁護する貴様の視点だ。

 成敗した人外共と同じ力を扱っている貴様等が言ったところで説得力は無い。」


 確かに、ザムシードは閻魔大王の力を媒体としており、事情を知らないアポロが、妖怪と同レベルと感じて信用してくれないのは理解できる。


「この姿じゃ説得力は無いか。」

「ど~すんの?」

「とりあえず、武装解除をするしかないだろ。」


 ザムシードは、ベルトのバックルから『閻』メダルを抜いて燕真の姿に戻った。


「信用しろよ、俺は人間だ!」

「ならば、何故、人外の姿をしていた?」

「事件が発生したからだよ。俺達が到着する前に、アンタが倒しちゃったけどな。」

「なるほど、よく解った。」

「解ってくれたか!だったら、アンタのことを聞かせてくれ!

 アンタは一体?アポロって50年も前に・・・・・・・・・」

「美琴には必要の無い存在と解釈して間違いなさそうだな。」

「・・・みこと?何の話だ?」

「所詮は同族同士の醜い権力争い!迷惑な話だ!」


 アポロはファイティングポーズを決めて、燕真に向かって突進をする!


「チィ!聞く耳持たずってか!」


 燕真は数歩後退しながら『閻』メダルを和船バックルに装填して、ザムシードに変身完了!


「一方的に仕掛けてくるつもりなら容赦はしない!」


 アポロの打ち出した拳を左掌で受け止め、左手首のYウォッチから『蜘』メダルを抜き取ってスロットに装填!召喚した妖刀ホエマルを右手で握って、アポロに叩き込んだ!


「ぐぅぅっ!」


 一歩後退をするアポロ!腹を立てていたザムシードは、すかさず間合いを詰めて、2打3打と切っ先をアポロに叩き付ける!


「コイツを退けろ、ホッパーサイクロン!」


 アポロの呼び掛けに応じたバッタ型モンスター=ホッパーサイクロンが飛来!背中を強襲されたザムシードが弾き飛ばされて地面を転がる!

 ホッパーサイクロンは、アポロの脇に着地をして、アポロの合図に呼応してバイクモードに変形!跨がったアポロが、ホッパーサイクロンのアクセルを空吹かしさせてエンジン音を轟かせ、ザムシードを威嚇する!


「接近戦じゃ敵わないからバイク戦ってか?

 苦手分野じゃないから応じてやるよ!」


 マシンOBOROを呼び寄せて搭乗するザムシード!アポロを真似て、エンジンの空吹かしで威嚇を返す!ホッパーサイクロンを急発進させるアポロ!アクセルを全開で捻って突っ込んでくる!一方のザムシードは、エンジン音の威嚇を止めて、Yウォッチから属性メダル『閃』を抜き取って、ハンドル脇のスロットに装填!カウルの朧フェイスの目が輝き、朧ビームが照射された!


「なにぃっ!?」


 真っ直ぐに突っ込んできたアポロ&ホッパーサイクロンにビームが直撃して、爆炎が上がった!


「うわっ!ズルいっ!燕真、ズルいっ!」


 てっきり「バイクチェイスで勝負をする」と思っていた紅葉が、ザムシードに文句を垂れる。


「誰も、バイクチェイスの勝負になんて応じてねーよ!

 そんなモンに付き合って、新品のバイクが傷物になったらどうすんだよ!?」

「セコっ!燕真、超セコいっ!」

「うるせーぞ、紅葉!」


 爆煙の中、モンスターモードに戻ったホッパーサイクロンが飛び上がって、上空に発生した歪みの中に消えた。数秒の間を空けて徐々に煙が晴れていくが、アポロの姿は何処にも無い。


「あれ?木っ端微塵に吹っ飛んだ?朧ビームって、そんなに破壊力があるのか?」

「違うよ!良く見て燕真!姿は無くなっちゃったけど、気配は消えてないっ!

 爺ちゃんが持ってるのと同じカード入れが、嫌な気配を出して浮かんでる!」

「・・・ん?」


 紅葉に指摘をされたザムシードが再確認をすると、爆煙の中央で青白い光を発したサマナーホルダが浮かんでいる。


〈むぅぅ・・・肉体無き念のままでは敵わぬか。奥の手を使うしかあるまい。〉


 意志を持つサマナーホルダは、堤防側に向かって飛んで行く。


「ん?逃げた??」

「逃げたんぢゃない!念の強さが、さっきよりヤバくなってる!

 追っ掛けて、燕真!」

「了解!捕獲して、ヤバい念ってのを浄化すれば良いんだな!」


 紅葉は「当然」のようにタンデムに乗る為に寄って行くが、ザムシードは紅葉の合流を待たずに単独でマシンOBOROをスタートさせた。


「こらぁぁ~~~!!ァタシを置いてくなぁっっっっ!!!」


 両腕を振り回してプンスカと怒りながらマシンOBOROを追う紅葉。ザムシードは「知ったこっちゃない」とマシンOBOROのスピードを上げて、黒焦げのサマナーホルダを追う。


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