30-1・EX解除~海跳降伏~麻由と里夢
-文架警察署付近の公園-
妖幻ファイターEXTRAザムシード(EXザムシード)登場!妖刀オニキリを装備して、サトリに向かって突進をする!
「なんだ?姿が変化した?・・・だが、その程度では!」
サトリが警戒をして構えるながら、読心に集中をする!しかし、EXザムシードの妖気の絶対値が上昇した為に、読心が防御されており、考えが読み取れない!
「なにっ!?」
EXザムシードの振るった妖刀を、サトリが横に回避!返す刀を振り上げたので、3歩退いて回避!間髪入れずに振られた3閃目は、爪で受け止める!最初の激突時と違って、受け流すことができない!
「此処までパワーが上がっているのか!」
「エクストラ化のおかげだけじゃねーよ!
最初の時は無策で突っ込んで返り討ちにされたけど、今は考えて戦っている!」
妖刀を受け止めながら蹴りを放つサトリ!EXザムシードは空いている手で受け止め、反動を利用して数歩後退!切り結ばれていた妖刀と爪が離れる!
「さすがだな!上級クラスってのはダテじゃないってか!」
EXザムシードは、Yウォッチから属性メダル『閃』を抜いて、妖刀の柄にセット!サトリに踏み込みながら妖刀を振るうと、刃型の閃光が飛んでサトリに着弾! この攻撃を想定していなかったサトリは、弾き飛ばされて地面を転がる!
「くっ!拙いっ!」
読心が通じず、戦闘能力でも上回られている。既に老教師は避難をしており、制裁を課すことも不可能。この場に留まることにリスクしか感じられないサトリは、周囲を見て退路を探す。背後では、ガルダが銃を構えており、一見すると挟み撃ちにされている状態だが、ガルダの思考を読んで隙を見付けて逃亡する事は可能。
サトリは、冷静に状況を分析して、「次にEXザムシードが動いた瞬間に、ガルダ側に逃走する」作戦を立てる。
「な~んか、チートを使った弱い者いじめみたいで納得できない。」
だが、EXザムシードは、ベルトのバックルから水晶メダルを引き抜き、意図的にパワーダウンをさせてしまう。
「なに?」
「狗塚ですら手も足も出ない強敵を、エクストラなら上廻れるってのは解った。
でも、これじゃ、エクストラのおかげ過ぎて、面白くない。」
ノーマルフォームに戻ったザムシードが、パワーダウンをした妖刀=ホエマルを構える。ガルダは呆気に取られ、紅葉&粉木は「お人よしっぷりが燕真らしい」と感じる。サトリは、ワンサイドゲームの放棄に対して驚きを隠せない。
「さぁ・・・仕切り直しだ!続けよう!」
「どういうつもりだ?」
「言った通りだよ!
何か俺にはさ、オマエが、力で一方的に叩き潰すべき悪者には思えないんだ。」
通常のザムシードならば、読心をできる自信がある。
「愚かな!読めるぞ、オマエの心が!!」
ホエマルを振り上げて突進をするザムシード!サトリが振るった爪と、ホエマルの切っ先がぶつかる!そして、サトリには、ザムシードの思考が流れ込んでくる!
「幼少期から、突出した活躍ができず、常に、その他大勢。」
「うん。」
「無理に目立とうとしても失敗をする。」
「そんなこともあったっけ。」
「周りには天才や秀才の類いだらけ。凡人の自分だけが置いて行かれる。」
「そうだな。」
「どう頑張っても、天才達の足元にも及ばない。」
「そう思っている。」
「師に呆れられ、同僚に未熟扱いされ、年下の女からマウントを取られる・・・」
「今も、自己満足の為にエクストラを解除しちゃって、呆れられてるんだろうな。」
サトリに指摘をされた通り、ザムシード(燕真)は、「何もかもが平凡な自分」に葛藤を抱えている。燕真が、何度も失敗を重ねて、やっとできるようになったことや、何度試しても成功せずに諦めたことを、天才は1回でクリアさせる。少し「皆よりは優れている」と調子に乗った直後に大きなミスをする。ずっと「平均」の中にいて、上手にできるヤツを眺めてきた。
「全部・・・オマエに言われなくたって解ってるよ。」
「読心口撃で・・・魂にダメージを与えられない?」
承認欲求を欲する凡人は、才能では勝てないと諦めると、努力を捨て、暴力や物の力に頼って、自分を満たそうとする。サトリ(冨久海跳)は、そんな連中を「勝負を放棄した逃亡者」と感じながら、沢山見てきた。だが、ザムシード(燕真)は、「凡人の葛藤」と正面から向き合っており、「凡人という諦め」の後にある「意味の無い承認欲求への逃げ」が無い。
「オマエ・・・何故、何もできないことを恥じない?」
「なんかさ、いつの間にか解っちゃったんだよ。
上手くできなくて劣等を感じているのは、俺だけじゃない!
大半の人が、天才の類いじゃなくて、平凡な中で藻掻いているってことがさ!」
「・・・なに?」
「そしたら、無駄なことを見せびらかして目立とうとする時間が勿体なく思えた。
大半が同じなら、頑張った分だけ、平均よりも上手になれる。
凡人のクセに放棄をしたら、頑張ってるヤツに差を付けられて敵わなくなる。
天才は頑張らなくてもできるから努力をしない。
だったら、凡人が頑張れば、少しくらいは天才に追い付ける。
本当の負けは、差を付けられることじゃなくて、諦めて放棄をすること。」
特殊スキルが全く通用しないザムシードに対して、サトリは焦る。EXにパワーアップした状態ならともかく、ノーマルのザムシードが強敵とは思えない。だが、ザムシードの意志の強さに気圧される。
「・・・この男。」
サトリは、苦し紛れに大きく息を吸い込んで、至近距離から魂脱の咆吼を浴びせた!
「ケーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!」
「うるさい!間近で鳴くな!!」
イラッとしたザムシードが、反射的に踏み込んだ!サトリが大きく開いた口に、ザムシードの頭突きが炸裂!
「ケーーーー・・・グゲェッ!!」
渾身の嘶きを「うるさい鳴き声」で処理されてしまったサトリは、口を押さえて倒れ、仰向けのままザムシードを睨み付ける。
「何故だ?」
「・・・ん?」
「何故、パワーアップした姿で一気に決着を付けず、わざわざ戦闘力を下げた?」
「言っただろ。
あのまま戦っても、弱い者いじめみたいになって俺がスッキリしないからだよ。」
「強い力を得た凡人は、その力で優位性を示したいものではないのか?」
「実力以外の力でイキっても格好悪いだけだろ。
放置できない悪なら、実力以外の力をフル稼動させて倒すけどさ、
俺には、オマエが、完全な悪には思えなかったんだよな。」
「恩師を殺害しようとしたのに・・・か?」
「ジジイ教員以外には見向きもしなかっただろ。
最初に突っ掛かった俺のことは、蹴り飛ばして退けただけ。
粉木の爺さんや紅葉のことは無視していた。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それに、狗塚と戦った時は、真後ろに粉木の爺さんとジジイ教員がいた。
オマエが地の利を活かして突進をしても、
狗は、光弾を直撃に軌道では撃てないはずだった。
オマエは、その有利さに気付いていたはずなのに、
攻撃をせずに、狗の牽制攻撃に対応しただけだった。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「ジジイ教員を見殺しにする気は無いけど、なんか、事情があるのかと思ってさ。」
「・・・フン!」
倒れたままのサトリが一気合いを発すると、全身の妖気が解れ、中から、メガネを掛けて優麗高のブレザーを着た少年が出現する。燕真が見たことのある少年だ。
「妖怪は撤退したのか?」
「貴方では分が悪すぎるので、自発的に戦闘を放棄したんですよ。」
「自分の意思で妖怪に変身して戦っていた・・・とでも言いたいのか?」
「僕の意思で覚醒をして戦っていました。」
「何を言ってるのか、よく解らん。」
討伐はできていないが、依り代に戻ったと判断したザムシードは変身を解除。変身を解いた雅仁が寄ってくる。
「もしかしたら、妖怪に憑かれているのではなく、君が妖怪なのか?」
「先程からそう言っているのですが、
貴方(雅仁)とは違って、彼(燕真)は、理解ができないらしい。」
「仕方あるまい。未熟者だからな。」
「ん?何で、今、バカにされた?」
「いい加減に気付け!天邪鬼は人間態として人間社会で生活をしていただろう。
同じケースってことだ。」
「ああ・・・なるほど。理解できた。」
少年は、上半身を起こして、やや呆れた表情で燕真を見つめた。
「理解力が高いとは言えず、バカにされても聞き流す。
・・・アナタは不思議な人だ。」
「俺は全てを受け流せるほど器が大きいわけじゃない。
聞き流しているんじゃなくて、それなりにイラッとすることもあるぞ。
だけど、事実なんだから、いちいち反発しても仕方無いだろ。
それにさ・・・身近にいるスゲー奴が、
中途半端に諦めることを許してくれないんだよな。」
サトリ人間態は、燕真が見ている方向に視線を向けた。「戦いが終わった」と判断した紅葉が、手を振りながら駆け寄ってくる。
「あっれぇ~~~!冨久センパイがサトリ?なんで??」
「2年の源川か?彼女も退治屋だったのか?」
サトリ人間態=冨久海跳の問いに対して、燕真と雅仁が苦笑をする。
「退治屋じゃないんだけどな。いつの間にか混ざっていたんだ。」
「彼女が言うには、俺達と彼女は妖怪バスターズらしい。」
海跳は、紅葉を眺めながら紅葉を語る燕真を見て、燕真の心の機微を感じ取り、微笑みを浮かべ、気障ったらしく前髪を整えて銀縁メガネを上げた。
「自分とは素直に向き合える貴方に、向き合えてない弱点を発見しました。
再戦を挑めば、恋愛トークで葛藤を突いて勝てそうですね。」
「その時は、エクストラでフルボッコにしてやるよ。
だけど、恋バナをしながら戦うって・・・どんな状況だ?」
冗談半分で受け流す燕真。口では挑発をしてみたものの、海跳には戦いを続ける意思は無い。問答無用で討伐対象にせず、「完全な悪には思えなかった」「事情があると思った」と言って剣を納めてくれた燕真への礼儀で、先ずは事情を説明しようと考える。
-街中の高層マンション-
文架駅から徒歩で10~15分ほどの距離にある・穂登華町。その市街地の一角に、葛城麻由の住むヘブンズパレス穂登華がある。
近所のコンビニで夕食を購入した麻由が戻ってきて、マンションの中へ。エレベーターに乗って、最上階のボタンを押し、扉が閉まるまでの数秒間を待つ。すると、閉まる寸前で扉が開き、ワンレングスでキャリアウーマンふうの女性=夜野里夢が入ってきた。
共用のエレベーターなんだから、見知らぬ人が同乗しても、麻由は特に気にしない。「夜野里夢が、マンションの住人ではない」という発想も無い。
「ようやく会えたわね。伝説の英雄の孫娘さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
女性が妙な発言をしたが、麻由は独り言と解釈して聞き流す。
「もしかして初耳かしら?貴女のお爺さんが伝説の英雄って話。」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴女に聞いているのよ。」
「・・・お爺ちゃん・・・が?」
「そう・・・人間社会を転覆させようとした組織を滅ぼした英雄様よ。」
独り言ではなく、話し掛けているようだが、麻由には何を言っているのか理解ができない。この状況で、麻由はようやく、女が‘行きたいフロアのボタン’を押していないことに気付いた。女は麻由に用があって、エレベーターに押し入ってきたのだ。
「貴女が人非ざる物に襲われたのは、
周りに人がいなかった時と、信頼できる教員と同乗をした時。
どちらも、貴女が堅苦しい緊張感を解いて隙だらけになった時よね?」
「・・・アナタは一体?」
見知らぬ女は麻由のことを知っている。里夢が言ったのは、ショッピングモールと車中の話だ。
「な、何故それを?」
「もちろん、貴女を観察していたから。」
「・・・あの怪物は一体なんなのですか?」
「貴女を襲った物の正体なんて、どうでも良いわ。
大切なのは、貴女が、貴女の中に眠る血統を自覚すること。
貴女が気を張っている時は、人非ざる物は貴女を恐れて手を出せない。
人非ざる物を恐れさせている力こそが、貴女の中に眠る英雄の血なのよ。」
「い、意味が解りませんっ!」
エレベーターが、麻由の降りる最上階で止まって扉が開いた。女の言動や存在に恐怖を感じた麻由は、逃げるようにしてエレベーターから出て振り返る。女は追ってくる様子は無く、エレベーターの扉が閉まって下階に向けて動き出したので、麻由は安堵で胸を撫で下ろし、途端に震えた。一連の状況が全く理解できない。




