28-4・EX~晴らす~凡人vs逸材~信虎成仏
-駐車場-
紅葉の手のひらで、水晶メダルは脈打ちながら光を放っている。結局、3度目の霊封でも、メダルが満たされることは無かった。だが、間違いなく起動をしている。
紅葉は、疲労で朦朧とする意識を確りと保ち、脱力気味の足腰に渇を入れ、ザムシードを見詰める!
「燕真っ!使ってっ!!」
紅葉は、渾身の力と有りっ丈の思いを込めて、ザムシードに水晶メダルを投げた!ザムシードが受け取ったメダルは、温かい虹色の光に包まれている!
「エクストラの・・・力・・・?」
メダルの鼓動に反応をして、ザムシードのベルトが一回り大きくなり、和船バックルの左脇にメダルを装填する窪みと置いたメダルを弾く為のフリッパーが出現をする!
「・・・ん?ここに置けってことかな?」
ザムシードは、メダルの裏表を確かめたあと、頭上に掲げた!
戦いを見守っていた粉木には、その姿が、在りし日の妖幻ファイターブロントと重なる。何度「銀色メダルを使ってはならない」と諫めても、信虎は聞く耳を持たなかった。安易、且つ、安全に手に入る力など無い。そんな便利な物が有れば、皆がその力に飛び付き、その力は特別な物では無くなる。特別な力には必ずリスクがある。25年前の最も有能な愛弟子が、人格を破綻させてしまったように・・・。
「アカン、燕真!そない力、使うもんやない!!」
「何言ってんだよ!?使わなきゃジジイを守れね~だろうに!!」
「こいじゃ、25年前と変わらんのや!そないもんに守られとうはない!」
「説教ならあとにしろ!!恐怖の夜でもなんでも付き合ってやるっ!!
出来は悪いが、俺はアンタの弟子だっ!!師匠の心配をして何が悪いっ!!」
「そないもん、ワシは望んでおらん!!」
25年前と同じだ。力を得た弟子は、師の言うことに聞く耳を持たない。
「ゴチャゴチャうるせ~っ!!俺を信じろっ!!!」
ザムシードは、掲げた虹色のメダルをベルト脇の投入口にセットして、フリッパーで軽く弾いた!
メダルが左側からスタートして、軌道の光を残しながらベルトの中を一周して、右側から和船バックルの中に装填される!
《LIMITER CUT!!》
〈答え合わせじゃ・・・。
エクストラに必要な物・・・1つは、ザムシードと同種の妖力。〉
〈もう1つは、力に溺れぬ自覚と、諦めない強い意志。〉
〈これほど待たされるとは、思わなかったぞ。〉
〈だが、それで良い。流石は凡人中の凡人だ。〉
「・・・え?」
ザムシードが両脇に気配を感じて振り向くと、いつの間にか司録&司命が立っている。
♪キュィ~ン ♪キュィ~ン ♪キュィ~ン ♪キュィ~ン ♪キュィ~ン
《EXTRA!!》
アラームが鳴り響き、ベルトの周りで輪を作っていた虹色メダルの軌跡の光が、幾つもの輪になってザムシードの全身を覆う!同時に、司録&司命は、光に吸い込まれてザムシードに重なる!
腕、肩、胸、腰、脛、そしてマスク、各プロテクターが変化!光の中から出現したその戦士は、雄々しく精悍な姿をしている!
妖幻ファイターEXTRAザムシード(エグザムシード)登場!
EXザムシードは、しばらく自分の手足を眺めたあと、ブロントに視線を向ける。
「そっちはハナっから銀色メダルで戦力が底上げされてんだ。
俺がパワーアップしても、卑怯にはならないよな・・・?
あとになってから、やっぱりズルイって言うの無しだぞ!」
ブロントは、変化をしたザムシードを警戒をして構え、一呼吸置いて、大太刀を振り上げて突進をしてきた!EXザムシードは妖刀オニキリ(EXに伴ってホエマルが進化した)を構えて、振り下ろされた大太刀と刀身をぶつける!大太刀に蓄えられた電撃がオニキリを伝って、EXザムシードに流れ込む!
「ぐわぁぁっっ!」
全身が麻痺をして動けなくなるEXザムシード!観戦中のガルダと粉木は、頭を抱えてしまう。
「さっきと同じミスをしていますね。」
「待望のパワーアップ直後にこれかいな?」
ノーマル時に比べて耐久力が上がったが、痺れるものは、やっぱり痺れる。このままでは、また、電撃を込めた蹴りを喰らってしまう。
「ぬぐぐっ!こんにゃろうっ!」
EXザムシードは、鍔迫り合いで痺れに絶えながら、渾身の力を込めて頭を前に突き出した!EXザムシードの頭突きが、ブロントの顔面に炸裂!ブロントは、想定外の攻撃を受けて数歩後退する!
「どうだっ!驚いたかっ、コンチクショー!!」
観戦中のガルダと粉木は頭を抱えてしまう。
「新しい必殺奥義は、エクソシズム頭突き・・・ですか?・・・斬新ですね。」
「そんなワケ、あらへんやろ。」
頭突きをされたブロントは意識を朦朧とさせるが、頭突きをした本人も意識が朦朧とする!だが、頭突きを喰らった方よりはマシなので、妖刀オニキリを振り回して、何度もブロントに叩き込んだ!そして、オニキリで大太刀を押さえ付け、再び頭突きを叩き込む!
「な、なんだオマエは!?
それほどの力を得ておきながら、何故、無様な戦いをする!?」
「俺には俺の戦い方ってのがあるんだ!
そんなもん、力を得たからって、急に変わるモンじゃない!!
天才のアンタと一緒にするな!」
「強大な力を、満足に扱う事もできない俗物がぁぁっっ!!」
「この力が、与えられた物であって、
自分の実力じゃないことくらい、ハナっから知っている!
俺は天才には成れない!勘違いをして自分を見誤るつもりは無い!
だけど、俗物だからって、何もかもが天才に適わないわけではないだろうに!!
どんなに無様でも・・・どんなに藻掻いても・・・オマエに追い着いてやるっ!」
凡人が天才と同じ行動をしても、天才には適わない。なら、凡人はどうするのか?ふて腐れて諦めるのか?自分よりも無能な者を見付けて嘲笑い、自己を満たすのか? それとも、泥臭く、がむしゃらに、自分ができることを探して突っ走るのか?
凡人・佐波木燕真は、その答えを知っている。凡人が天才に勝てない道理は無い。
「ザコのクセにっ!?」
防戦一方になったブロントは、大きく飛び退いて間合いを空け、体勢を立て直す!同時に腕のYウォッチに闇が広がり、ブロントの全身に流れ込む!ブロントは枯渇したエネルギーを、銀色メダルに憑いた怨念の闇から変換して供給をしているのだ!
「・・・ん?気付きましたか、粉木さん?」
「あぁ・・・見えたで!」
「銀色メダルが・・・エネルギー供給によって、一時的に無防備になる!」
「今までは、急激にパワーダウンをする事が無かったよって気が付かんかった!
燕真との議論で、(ブロントの)怨念が曖昧になってきちょるんや!」
ガルダと粉木は見逃さなかった。ブロンドが怨念の維持をできなくなり、エネルギー供給をする一瞬だけ、銀色メダルを覆っている闇がブロントに流れ込み、銀色メダル本体は僅かな念だけになる。そして、供給が終わると、銀色メダルの中で憎しみの怨念が増殖をする。
「ゴリ押しで倒すだけじゃ、コイツ(ブロント)と変わらない!
コイツがやろうとした『力こそ正義』を認めることになってしまう!」
白メダルを使用すれば、念の思惑に関係無く浄化をするので、説得をしてやれない。ならばどうすれば良いか、答えは簡単だ。白メダルを使わなければ良い。
EXザムシードは、『斬』メダルを利き足ブーツにセットして、ブロントを正面に捕らえるように、腰を低く落として構える。
「小者が理想を並べるな!」
苛立ちを募らせたブロントも利き足のブーツに白メダルをセットして、大太刀を真上に向け、天に電撃の閃光を打ち上げる!今度は、先ほどのように、EXザムシードに落雷を直撃させるわけではない!雷はブロントの正面に落ちて、直径30センチくらいの、高濃度の雷撃球体を作る!
ライトニングシュート!それは、妖幻ファイターブロントの必殺技だ!雷撃球体を渾身の力で蹴り、相手に叩き付け、衝撃と感電で死に至らしめる!雷撃球体に込められたエネルギーは、これまでの雷撃の比ではない!
「行くぜぇっ!!!」 「はぁぁぁっっっっっ!!」
ダッシュをして宙高く跳び上がり、跳び蹴りの姿勢になるEXザムシード!足を切っ先とした1つの巨大刃に変化をする!
「愚かなっ!空中では回避ができまいっ!
ブロントは勝ち誇り、渾身の力で雷撃球体を蹴り上げた!
空中でぶつかるEXザムシードと雷撃球体!大爆発が起こる!・・・が、舞い散る爆煙の中から巨大刃(EXザムシード)が出現!
「なにっ!?」
EXザムシードは、ハナっから避ける気など無かった。ブロントの必殺技を喰らったのは今が初めてだが、雷球は何度も喰らっている。「どうせ何をやっても痺れる」ので雷は完全無視、ただし、少しでも雷撃に晒されている時間を短くしたいので、衝撃に対する貫通力の高い『斬』を選択したのだ。
「おぉぉぉぉっっっっ!!」
ブロントに巨大刃(EXザムシードの跳び蹴り)が炸裂!全身感電中のEXザムシードは受け身を取れずに地面に激突して、ブロントは大きく飛ばされて地面を転がる!
想像以上のダメージを受けた為、ブロントを形成していた闇が剥がれてセイテンの姿が見え隠れする!途端に、腕のYウォッチに闇が広がり、ブロントの全身に流れ込んで再生が始まる!粉木とガルダは、このタイミングを待っていた!
「銀色メダルが無防備になる一瞬を狙えば・・・怨念を祓える!!」
「狙いは一瞬だけや!」
攻略の糸口を見付けて動き出そうとするガルダと粉木!だが、察したEXザムシードが、痺れる体を奮い立たせて制止する!
「ジジイ・・・狗・・・余計なことはすんな!倒すんじゃない・・・晴らすんだ!」
「佐波木!君にできるのか?」
「燕真!これは綺麗事では済まん戦いや!」
「俺が負けたら・・・アンタ等のやり方を実行してくれ!」
悶着の間に、ブロントは闇を回復させ、手甲部分に白メダルをセットする!
ライトニングクロー!それは、突進力を高めたブロントが、貫通力を高めたカギ爪を標的に突き立て、高圧電流を体内に直接流入させる必殺技だ!
「若造・・・佐波木燕真と言ったな。」
起き上がるEXザムシード!今度は、ブーツに属性メダル『炎』をセットして身を屈め、ブロントに正面を向けて睨み付ける!
「やっと、ザコ扱いをやめて、俺の名前を覚えてくれたか!」
「オマエは凡人だ!・・・だが、ザコではない。」
「褒められてるのはバカにされてるのか解らん!」
ブロント目掛けて突進をするEXザムシード!跳び上がり、前方宙返りをして、ブロントに向けて右足を真っ直ぐに突き出した!右ブーツから炎が発せられ、破壊力が爆発的に上昇をする!
***25年前********************
《マキュリー!!》
パワーアップのカードを翳すアデス!使役モンスターを変形させたバイクに跨がり、ブロント目掛けて突っ込む!ブロントはライトニングクローを発動させて、迎撃の体勢に成る!
「フン!この程度か?」
バイクによる特攻など、恐れるに足らないと考えていた。
「スマン・・・真っ当に導いてやれんくてスマン、信虎。」
「なにっ?」
涙混じりの声が聞こえた。有能な師から謝罪の言葉を聞くのは初めてだった。それは、ブロントが一秒ほど動きを止めるには、充分すぎる言葉だった。
次の瞬間、アデスが駆るバイクの先端が、ブロントの腹を貫く。
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「そうか・・・思い出した。」
ブロントがアデスに破れた理由。謝罪に心を動かされながら、受け入れずに抵抗をしたから。謝罪を聞き流せていれば、竜巻の拘束は振り解けていた。謝罪を受け入れて抵抗を止めれば、アデスは奥義を中止しただろう。だが、どちらも選べなかった為に隙だらけになり、アデスに貫かれた。
逸材の弟子は、有能な師を否定しながら、心の片隅では彼を求めていた。だから、死後も粉木勘平に拘り続けた。
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「うおぉぉぉぉっっっっっっ!!!」
ブロントが突き出したカギ爪が砕け、ブロントの体に、業火を纏ったザムシードの蹴りが叩き込まれる!
〈一ヶ所にしがみついた無様な恨みでは、
無限の希望を発する想いには勝てぬ・・・か。
有能な師に従事するからには、大成して期待の応える義務があると考えていた。
どこで拗らせてしまったんだろうな?〉
接触をしたEXザムシードに、穏やかな声が聞こえた気がした。
〈皮肉なものだ・・・オマエが、弟弟子でなければ・・・
あの時、オマエのような者が、俺の指標となる兄弟子の中にいたら・・・
俺は結果を焦らず、安心をして聞く耳を持てたのかもしれない。〉
「・・・え?」
〈才有る者は、自分を信じ無能を侮る。
自身が無能と気付かぬ者は、力も無いのに過信をする。
自分を平凡と識る者は、他者を認める。〉
ブロントは、炎に巻かれながら宙高く吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられ、苦しそうに唸り声を上げながら立ち上がる。しかし、抵抗はそこまでだった。脱力して崩れ落ち、全身に纏わり付いていた闇が蒸発するようにして、空中に溶けていく。
「どうだかね?
立場が違っていたら、俺は問答無用で切り捨てられてたかもしれない。
でもさ・・・アンタを正気に戻そうとする声は、ずっと有ったのに、
アンタが耳を塞いでいただけなんじゃねーのか?
全部、アンタ自身が選択をした結果だ。」
〈俺自身の所為・・・か?死せる者には冷たい言葉だ。〉
「なんだよ?弟弟子に慰めて欲しいのか?」
〈・・・フン!〉
信虎の恨みが晴れたからなのだろうか?依り代と成った肉体も、闇と一緒に消滅をして、破壊をされたセイテンのYウォッチと、浄化をされた銀色メダルだけが残される。
ガルダと粉木と砂影は、その光景を、驚きながら見詰めていた。
「佐波木のヤツ・・・浄化の力を使わずに・・・」
「対話で、信虎の恨みを浄化しよった。」
25年前に起因する戦いは終わった・・・
疲れ果てたEXザムシードは、変身を解除して腰を降ろす。変身を解除した雅仁が寄って来て、燕真に手を差し出して立ち上がるのに力を貸す。同時に紅葉が寄って来て、健闘を称えて燕真の背中をバシバシと叩く。つられて雅仁も燕真の背中を叩く。
「良くやったな、佐波木!」
「ょくゃったね、燕真っ!」
「イテ~よ、オメー等!死にかけてんだから労れ!!」
粉木と砂影は、25年前の因縁を断ち切った若者を、穏やかな視線で眺めている。
過去、最も有能な弟子は言った。「俺を侮るな」・・・と。
現代、最も無能な弟子は言った。「俺を信じろ」・・・と。
彼等の意図は同じ。力を否定する粉木に応じない為の言葉だ。
だが、天才は自分の立場で発言し、凡人は相手の立場で発言をした。同じ意図でも、言葉が違えば、これほどの別の印象を受けるとは思っていなかった。
粉木は、燕真の発言を聞いて、それ以上は止めようと思わなかった。だがそれは、止めても無駄だと思ったからではない。「この男は止める必要が無い」と思ったからだ。
他人の意見を受け入れ、相手の立場で物を言える男は、間違えたりはしない。
燕真は気付いていないだろうが、凡人は凡人のまま師を超えようとしている。粉木は、その温かい息吹をハッキリと感じていた。




